
森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、改ざんを強いられたことを苦に自死した財務省近畿財務局の職員、赤木俊夫さん(当時54)が、改ざんの経緯を記したとされる「赤木ファイル」。その存在について「存否を回答する必要がない」としてきた国が一転して、存在を認める方向だと朝日新聞が5月5日、報道した。
公文書の改ざんという民主主義を揺るがす事件。後世に残すべき公文書を事実を歪めて書き換えることについて、赤木さんは公務員としての自負から、悩んでいたという。赤木さんは「涙を流しながら抵抗していた」と元上司が妻の雅子さんに対して話したとされる音声データが残っている。
TBS報道特集や野党ヒヤリングの記録によると、改ざんを命じられたとされる赤木さんは、改ざんした箇所などを整然とまとめていた文書を職場に残していたという。
元上司が雅子さんに対して話したとされる音声データによると「赤木さんはきっちりしているので、文書の修正、改ざんの前の文書とか修正後とか何回かやりとりしたやつがファイリングされていて、きちっと見ただけで分かるように整理されてある」としている。この改ざんされる前とされた後を整理している文書が「赤木ファイル」だ。
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赤木さんの自死から2年後の2020年3月に、雅子さんが、赤木さんが自死したのは同省で改ざんを強いられたからだとして、国や佐川宣寿・元財務省理財局長に、計約1億1200万円の損害賠償を求め、大阪地裁に提訴した。雅子さんは、夫の精神的苦痛を証明するために「赤木ファイル」の提出を命じる「文書提出命令」を出すよう地裁に申し立てていた。これを受け、国は、5月6日までにファイルの存否について文書で回答することになっていた。
これまで、国は訴訟で「(ファイルは)裁判の争いに関係せず、存否を回答する必要がない」と主張してきた。3月に行われた非公開の裁判手続きで、国はファイルについて「探索中」と回答していたという。
近畿財務局の元上司と雅子さんの会話とされる音声データは、2021年3月10日、野党ヒアリングで公開されている。
音声データでは、元上司は、赤木ファイルについて「パラッとだけ見たんです。『うわ~、めっちゃきれいに整理してあるわ』と。全部書いてあるやんと。どこがどうで、何がどういう本省の指示かっていうこと」などと語っていた。
公文書の改ざんを強いられた赤木さんは、遺書を記していた。2020年3月26日号の「週刊文春」が報じ、後世に残すべき公文書を事実を歪めて書き換えることについて、公務員としての自負を苛み、悩んでいた様子が浮かび上がった。

森友学園問題をめぐる土地取引に関する国の公文書が書き換えられた疑いについては、2018年3月、朝日新聞が初めて報道した。 財務省は昭恵氏らの名前を削除するなど14件の公文書の改ざんを認め、佐川宣寿・元理財局長ら計20人を処分した。
森友学園問題とは、財務省近畿財務局が2016年6月、鑑定価格よりはるかに安い1億3400万円で国有地を売却した事案だ。地中ごみの撤去費用として8億1900万円などが値引きされていたことがわかった。森友学園は、安倍晋三前首相の妻昭恵氏を小学校の名誉校長としており、国が何らかの「忖度」をしたのではないかとの疑いがもたれている。
【ハフポスト日本版・井上未雪 Miyuki Inoue】