福島原発事故に焦点を当てトップニュース級
2011年3月11日、世界中の一面は、東日本大震災だった。2021年、世界のメディアは3.11の10年を伝えた。その中でも、東京電力福島第1原発の事故に焦点を当てトップニュース級に扱っているメディアもあった。
フランスやドイツでは、福島原発事故に焦点を当てトップニュース級に扱っているメディアもあった。
ドイツのテレビ局ZDFは、東日本大震災での原発事故を契機に、変わったドイツの原発政策の現状を震災報道に絡めて報道した。ドイツでは、東日本大震災を受け、脱原発に切り替えた。17あった原発は現在6機のみ稼働し、2022年までに全原発を停止する。
ZDFの報道の中で、連邦環境相のスベーニャ・シュルツェ(Svenja Schulze)氏は「原子力の利用を止めるのは絶対に正しい決定だった。多くの国が続いてソーラーや風力など、全ての自然エネに転換することを望んでいる」と述べた。
さらに、ドイツの危機管理が刷新され、緊急事態計画に原発事故対策が盛り込まれたことを紹介。避難場所を増やし、数百万人分のヨード剤を準備している。
最後に、「脱原発にはコストもかかる。ドイツでは、放射線廃棄物の最終処分場などの費用のため1700億ユーロが予定されている」と締め括った。
東京電力福島第1原発の事故はドイツ国内にも大きな衝撃を与えていた。事故直後、メルケル首相は、稼働停止時期にきていた古い原発7基の即時3カ月間停止と全原発の徹底的安全検査を指示。その後、世論の後押しもあり、メルケル首相は、2022年までに全原発の稼働を停止すると決定している。
また、同じようにトップ級のニュースとして報道したのは、フランスのテレビ局フランス2だ。
津波に襲われた宮城県石巻市に続き、福島で住宅がなお立ち入り禁止区域のため、今も避難を余儀なくされている住民を取り上げた。
重点的に取り上げたのは、原発のその後だ。
フランス 福島第一を受けた安全対策整備は2035年
フランス2では、「発電所では、今も4000人も作業員がデブリ800トンの取り出し処理に当たっており、それはあと何十年も続きます」と福島第一原発の現在の様子と、処理完了までの具体的な年数を明らかにせずに伝えた。
フランスの発電量の7割は原発だ。ニュースの中で「福島第一原発の事故の衝撃は、世界中に原発の議論を巻き起こした」と、原発のあり方について、隣国のドイツの脱原発政策に触れた。
「津波から数日後、メルケル首相は、脱原発を宣言しました。その宣言は守られる予定です。来年には最後の原発が解体される予定です。ドイツでは冷却塔を壊す様子が見られます」
この10年、原子力による発電量が22%から11%に半減したドイツだが、温暖化ガスの放出については「再生エネ、特に、風力を増やしていますが、まだ不十分で二酸化炭素を排出する石炭発電が35%を占めている」と触れた。
フランスでは、福島第一原発事故を受けた安全対策整備が全て終わるのは
2035年とされている。
BBC「想定を超えた津波」とする東電を指摘
フランス紙のルモンドは「フランスでは、安全措置が2035年までに実施されるわけではない」と題して報じた。
福島を襲ったのは、高さ15メートルの巨大津波で、想像を絶するものだった。福島は私たちに想像を絶するものを想像し、それに備えなければならないことを示唆した、として現状の安全措置として、最後の頼みの綱となる非常用発電機を設置することになったことを紹介した。
また気候危機の中で、原発がおかれる状況についても触れた。
イギリスBBCも、地震と津波、原発事故を「3重の災害」として、津波に襲われた町の現状に加え、原発について報じた。
津波の規模は「想定を超えるもの」と東京電力は説明したが、実際には責任があったことを振り返った。
その中で、地下に設置された発電機は津波対策がないまま浸水して、動かなくなった状況を詳報。アメリカから初めて輸入した福島第一原発について、東電が設計やその他の扱い方について基本的知識を欠いていたという鈴木達治郎教授(長崎大)の指摘を伝えた。
総額約32兆円、国民1人あたり25万円の復興予算
アメリカCNNは、津波に襲われた宮城県石巻市で木にしがみつき生き延びた人の振り返る記事や、福島で立ち入り禁止区域で、野生化した動物やそれを気遣う人の生活について取り上げた。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、「津波と福島原発で、これまでに約3,000億ドル(約32兆円)の費用がかかった。国は10年間で4回の復興予算を拡大し、津波に見舞われた東北地方を復活させ、原子力発電所の放射線を軽減するために、日本の一人当たり2,400ドル(約25万円)の負担をしいている」と伝えている。
【ハフポスト日本版・井上未雪】