「一人で歩くのは避けている」
「話しかけたくても、何をされるかわからず怖くて黙っている毎日...」
アメリカに住む日本人から聞いた言葉だ。
新型コロナウイルスの感染拡大した2020年から今年にかけて、アメリカで、アジア系へのヘイトクライムが続いている。
2月25日には、ニューヨーク市のマンハッタンの中華街近くで36歳のアジア系男性が午後6時20分ごろ、道を歩いていたところ、後ろから突然倒され背中を刺された。
男性は、腎臓の一つを摘出するなどし重体だという。「自分が刺した」と近くの警備員に伝えた容疑者の23歳の男は、「自分を見る目が気に入らなかった」と話しているという。警察によると、凶器は20センチのナイフだという。
2月16日には、同じくロサンゼルスのコリアンタウンで、27歳の韓国系アメリカ人の男性が「チャイナウイルス、中国へ帰れ」と叫ぶ2人の男から突然、襲われた。殴られた顔に青黒くあざが残る姿を各局テレビなどメディアが伝えた。
2月3日には、フィリピン系アメリカ人の61歳男性が、地下鉄で突然カッターで顔を耳から耳にかけてきられ100針を縫う大怪我を負った。昨年7月には、ブルックリンで、89歳の中国系女性が無言で近づいてきた男に突然殴られ、洋服に火をつけられる事件もあった。
大学のアジア関係学部などで作る団体「Stop AAPI Hate」によると、新型コロナウイルスが感染拡大した2020年、世界で2800以上のヘイトクライムが報告されているという。
ニューヨークに住むキア•シェリーンさんもこの一年あまりの間に不快な思いをしてきたという。見知らぬ人から突然の敵意を剥き出しにされたことは一度だけではないという。
「2020年2月、知らない人が、にわかに私のそばに寄ってきて『コロナなんだろう』と言い捨てた時もありました。公共の場で明らかに距離をあけられて避けられたということもありました。ヘイトが蔓延する雰囲気なので、とにかく今は、言いがかりをつけられてしまわないか心配です」とハフポスト日本版の取材に対して話した。
アメリカのニューヨークでは2週間連続で週末デモがあり、2月27日はデブラシオ市長がヘイトクライムに反対する運動に参加した。
ニューヨーク市は、市内でのアジア系に対するヘイトクライムが増加していることを踏まえ、偏見、差別及びヘイトクライムに対処するためのサイト「Stop Asian Hate」を開設した。市により日本語のチラシも作成された。
市によると、2020年にニューヨーク市であったアジア系アメリカ人に対するヘイトクライムは28件あり、うち18件が逮捕されている。
在ニューヨーク日本国総領事館は26日、ヘイトクライムに注意するよう在留邦人に呼び掛けている。【ハフポスト日本版・井上未雪】