牧島かれん議員「青年局はもうボーイズクラブじゃない」。女性初の青年局長に就任して

「ノーリミットですよっていうのを次の世代に言わなくちゃいけない」。国政報告会で「前列を占めるのは常に男性」の時代は変わってきているという。
インタビューに答える牧島かれん議員
インタビューに答える牧島かれん議員
Yuka Takeshita/HuffPost Japan

国会議員の女性の割合は衆院で1割と世界最低水準だ。12月25日に決まった第5次男女共同参画基本計画には、一定比率を女性に割り当てる「クオータ制」が盛り込まれたが、政党に「自主的な取り組みの実施を要請」との表記にとどめられている。

自民党青年局長のポジションに女性として初めて就いた牧島かれん衆院議員はクオータ制は「反対だ」としつつ、自身の経験から、女性の活躍の場が徐々に広がっていることを実感していると話した。就任直後の9月に女性の政治参画についてインタビューをした。

 ーークオータ制についてはどう思いますか?候補者や議席のうち、一定の割合を男女ごとに割り当てるクオータ制は約120の国や地域で既に取り組まれています。取り入れていない日本が珍しいくらいです。女性にも機会を作り、実質的な平等を実現できるもので、構造的差別を解消する制度でもありますが。

クオータ制は、 私は反対です。女性であるから選ばれるということになるのは、女性にとっても本意ではないと思います。シンプルにその能力、実力、可能性で選びたいです。

ーー女性に男性と同じチャンスが与えられていないのが今の現状です。

日本の場合、能力では女性の方が採用される確率が高いのに、バランスを取ろうとして、いわば、男性に「下駄」を履かせている。それをやめれば、女性が活躍できる機会は増えるのではないかなという気がします。

ーー政策として、意思決定機関にある程度の割合の女性を置くことの意義はあるのではないかということについてはどうですか。

意思決定機関に、特に政治の場合はジェンダーギャップ指数を下げている要因であることは間違いない。

私としては今、女性の(政治参加は)積み上げている最中なので、あともう一歩だと思っています。ちゃんと積み上げてきた人が上に上がりましたというのをお示しする「日本モデル」ができればいいなと思います。

おそらく他の国も急に上から決めたところばかりではなくて、積み上げた結果になっていると思うので、そのアプローチを今は取っていきたい。


政治家の働き方改革、女性活躍に必要 

 ーー日本の女性議員は少ない。衆院ではまだ10%弱で、地方も進んでいません。なぜ女性議員は少ないのだと思いますか。現状認識をお聞かせください。

すごく有能な女性 はとてもたくさんおられ、能力に男女差はないです。むしろ女性の方が活発で、政策への発信や提言という点で言えば区別はない。ただ、立候補にハードルがあります。

政治家の働き方とはなんぞやというところとも関連してくると思います。政策提言したいのだけれども、選挙や政治活動を子供がいる中でできるだろうかと悩んでいる方はいる。

昨今では妊娠 、出産、育児を経験されている女性議員、そして育児を経験されている男性議員が増えてきているので、そうした先輩たちがロールモデルとして、伝えていただきたい。実際に議員になって、サポ ートが必要ということであればサポート支援をやっていきたい。

過去に、遠隔での国会投票の議論もありました。スペインでは既に行なっている。コロナ禍でもイギリスなどではだいぶオンラインの国会運営が進みました。

議論のスタートは妊娠、出産ということかもしれないけれども、女性議員への配慮ということだけではなくて、育児に携わる世代の男女、病気療養中、介護に携わる人など幅広い多様なバックグラウンドを持っている方に開かれた制度になるべきだろうと思います。

ーーよく女性が少ないのは、有権者が選んだ結果に過ぎないという批判があります。結果なのか、構造的問題なのか、どう思われますか。

選択肢を増やすためにも、候補者に女性が増えないといけない。私が衆院議員になった時は、自民党で神奈川県から選出された衆院議員初めての女性でした。神奈川は、都会的で、女性が経済、社会の面で活躍してるイメージがあるのに、神奈川でもそうだったの、と驚かれました。この12年間他の政党も含めてですけれども、女性の国会議員が増えました。そういう意味では、目に見える姿があるというのは一定の効果をもたらしたのかなという気はします。(身近に女性の政治家が)1人、2人、3人いることで、じゃあ私もやってみようと思う女性が増えていって、割合は上がってきつつあるところだと思います。

牧島かれん議員
牧島かれん議員
Yuka Takeshita / HuffPost Japan

おばあちゃん大国へ。地域から変わる

ーーただ、その進み具合が遅い。日本は世界に遅れています。

人材プールをもうちょっと増やさないといけないですが、地方議会も4年に1回しかないから、そういう意味ではタイミングが来た時に増やしていくことを意識して、 普段から積み上げていかなくてはいけない。候補者は確実に増えてきています。

ーー政治家を支えるのが男性社会なので、男性候補者が多かった。

例えば、公民館で国政報告会をやります。畳の公民館で座布団をひいて皆さんに座っていただきます。座布団が6列並ぶと、男性が前3列、女性が後ろ3列みたいな感じでなんとなく座る。何で男性が前で女性が後ろなのかと言うと、それは男性だから女性だからではなくて、自治会長経験者さんや老人会の会長さんが男性だからなのです。地域の中の長が男性が占めていることが多いので、必然的にそういう座り方になっている。

今はまだ時間がかかっているんですけれども、これは変わってくると思います。というのも、女性が民生委員や児童委員、自治会長を務める例も出てきています。後ろ3列だった女性たちが、前に座るようになると思うんです。

もっと言えば、これから日本っておばあちゃん大国になると思う。

「おばあちゃん大国・日本」になっていくプロセスの中で、女性が占める割合が地域の中で確実に大きくなってきている。そうせざるを得ないという事情もあるし、そうなったらなったで女性たちは活発に活動し、それぞれの分野で活躍をしてくださるので、そうした社会になっていけば、変わると思います。地域から日本の状態が変わってくるというのは、私自身はじわじわと12年間の政治活動の中で感じています。

2020年9月に発足した菅政権には女性閣僚は2人
2020年9月に発足した菅政権には女性閣僚は2人
POOL New / Reuters

ーー牧島さんは、衆議院議長だった河野洋平氏の選挙区だった神奈川17区から出馬。17区は、小田原市や南足柄市など山間部もある神奈川西部。女性として立候補の難しさを感じたことありますか。

女性ということで、私自身ではなくて、おそらく支えてくださる方たちが苦労されたんだと思います。

後援会役員さんは男性がやはり多いということもあって、どのように接したらいいのかなっていうふうに悩んだ方も中にはおられたかもしれません。そういう意味では、後援会役員の妻の皆さんや若い世代に助けられた部分もあります。12年経って今は、幅広い世代、男女も含めた後援会組織になっています。

ーー今政治の場にいるのは、男性、健常者がメインです。そもそも「多様性」の大事さについてどう思われますか。

多様性はやっぱり力だと思います。緊急時に対応する時に、いろいろなアプローチがとれる人材が社会の構成員として存在していることが危機を乗り越える力になってくる。

自民党は、いろんな方がおられると思ってます。政策の議論の中でも全く真反対のことを同じ部屋の中で戦わせているという気もする時あるんですよね。世代間や、都心部と地方部という違いからくるのかもしれない。

活発な議論をして、最後決めたらこの方向にいきましょうねというのが自民党の良さだと言われます。ある一定の多様性は担保されてるなと思います。保守の良いところは、常に変革をしながら大事なものは守りつつ前進をさせていく、成長させていくっていうところにあると私は思っている。

ーーその認識は自民党の幹部、ベテランの方も一致してますか。「女性はお飾り」と思っている議員はいない、と言えますか。

さすがに思ってないでしょうと思いますけど。思わせていないはずです。 

牧島議員が就任した青年局長のポストはこれまで竹下登氏、安倍晋三氏、麻生太郎氏など歴代首相も務めてきた。党本部の青年局は、45歳以下で、政務三役を除き、衆院当選4回・参院当選2回以下の国会議員が所属する。

女性の総理大臣いつ?

ーー自民党青年局長としては女性初です。どう受け止めていますか。

今は就任したばかりなので、女性初であるというところに皆さん注目されているのかなと受け止めてはいます。ただ、自民党青年局とは「男性局」ではなくて「青年局」です。45歳以下の地方議会の青年局員の中には女性の議員がおり、活発に活動してきたことの積み重ねの上に私は存在をしています。
ただ、「初」とか「女性」というのを皆さんが気にしないでいいような1年にしたいと思っています。青年局の活動を1つ1つ見て評価いただけるとありがたいです。

諸先輩方には歴代青年局長の絆みたいなものがあり、17代の麻生太郎大臣は「1年間のびのびと頑張るように」と、総理退任後の安倍総理も「おめでとう」と声をかけてくださったり、歴代の青年局長たちが後輩を見守る温かい眼差しがあり、青年局の1つの魅力だなと思っています。

ーー上下の絆があり、その絆から得られるインパクトやインスピレ ーションは大きいと思いますが、そこに女性がいるというのは大きいですか?

もう青年局はボーイズクラブじゃないですということです。すごく責任を感じています。リミットはありません。ノーリミットですよっていうのを次の世代に言わなくちゃいけないと感じています。

ーー歴代青年局長の多くが総理になられています。目指されていますか。

衆議院議員は皆目指していると思いますし、それは私も同じです。選挙区を預かる衆議院の議員としては、地元の皆さんの声が確実に反映されるということは大事ですから。

ーー日本で女性の総理が誕生するのは、何年後ぐらいだと思いますか。

何年後なんでしょう。あともう少しで誕生するんじゃないでしょうか。

【ハフポスト日本版・竹下隆一郎、中村かさね @Vie0530、井上未雪 @MyuInoue

2020年に幕を閉じた安倍政権の看板の一つは「女性活躍」だった。しかし現在の菅義偉新内閣20人のうち女性はわずか2人。これは国会の男女比そのままだ。2021年には、菅政権下で初めての衆院選挙が行われる見通しだ。候補者の人数を男女均等にする努力を政党に義務付ける「候補者男女均等法」制定から初めての総選挙。政治の現場のジェンダーギャップは、どうすれば埋めることができるのだろうか。

牧島かれん衆院議員
牧島かれん衆院議員
Miyuki Yamamoto

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