アメリカでは新型コロナウイルスの感染者が250万人を超えている。米ジョンズ・ホプキンス大学の集計(日本時間6月29日午後現在)によると、アメリカで確認された感染者は約251万人で、12万5500人以上が死亡し、収束には程遠い。
米ワシントンポストは28日、南部のフロリダ州やジョージア州、サウスカロライナ州、西部のネバダ州が1日当たりの新規感染者数の最多記録を塗り替えたと報じ、第二波が懸念されている。フロリダ州は6月27日、1日の新規感染者数が9500人を超え、再び経済活動制限へと踏み切った。テキサス州も同様だ。
そんな中、アメリカでは、亡くなった方々を実名で人となりを明らかにして悼む動きが活発だ。
起業家であり冒険家。コビー・アドルフ44歳。シカゴ
6人の息子の母親。ノルマ・ホザ101歳。イリノイ州ウィルメット
メキシコのビリアビーフシチューが家族に評判だった。ローマン・メレンデス 49歳。ニューヨーク
アメリカの新型コロナウイルスによる死者が実名で人となりが示されている。
これは、5月24日に掲載されたアメリカ・ニューヨークタイムズのウェブ版だ。死者数「10万」という数字ではなく、一人一人の「命」を感じられる。
さらに、グラフィックでは、一人の死のミクロの視点から、社会全体へのインパクトのマクロの視点にシフトさせる作りになっている。3月10日の31人から始まり、どんどん増えていくのが視覚的にわかる。死亡者数の数字の大きさを実感できる。
5月24日のニューヨーク・タイムズの紙面の1面も、亡くなった千人分の名前と人となりの説明で全面を埋め尽くした。「10万人と書くだけではその重みを実感できなくなってくる。『数字慣れ』が起きているのではないか」。この編集局の問題意識がこういった形になったという。情報は、270の地方紙や地元テレビ局などから集めた。
アメリカの全国紙USATodayも実名で報道。あまりにも多くの死者を前に一人一人の命に向き合おうとする。
「アメリカは1月21日に最初の感染者を確認した。その1ヶ月後には、初めて感染による死亡者を確認。その翌週から10時間ごとに死者が出て、先週からは毎秒ごとに誰かの命をこの世から失っている」と言う冒頭で始まる。100人の顔写真と人となりをあげ、10万人の中の100人の横顔から10万人の命に思いをはせて欲しいと結ぶ。
新型コロナウイルスの死者の思い出を、市民に呼びかけて集めて報道する試みもある。メディアとジャーナリズムスクールが協力している。このプロジェクトは、ニューヨークに特化した非営利の地域メディアTHE CITYとコロンビア大学院ジャーナリズムスクールとニューヨーク市立大学院ジャーナリズムスクールが協同で立ち上げた。市民が新型コロナウイルスで亡くなった人の思い出をサイトを通じて投稿。THE CITY側が行政機関などから情報を収集して裏どりをしたあと掲載される仕組みだ。
日本は現在、死者971人(28日午後現在)。そのほとんどは、著名人以外伏せられている。 (ハフポスト日本版・井上未雪)