世界から駆けつけた100人以上の報道陣の前で会見を開いたカルロス・ゴーン被告。ゴーン被告自ら選んだ報道機関12カ国約60社が入室を許されたという。ゴーン被告は、英語、フランス語、アラビア語、ポルトガル語の4カ国語で応じた。各国のメディアはゴーン被告をどう報じたのか。
「ゴーン氏は、もはや自動車業界のスターではないが、真実や容疑はさておき、彼はうまくやりおおせる術を知っているのは明らかだった。
彼は、日本の司法制度について、基本的人権に反すると批判した。また、『復讐心に燃えた恥ずべき人たち』が自分を陥れようとしたと非難した。(略)
日産と日本政府は反論するだろうが、ゴーン氏は、劇的な逃亡もあいまって、この問題において見事に主導権を握った」
■「ライオンの肉でも食べてきたのかと思うほどの意気込み」フランス系メディア
フランスのテレビのフランス2は、現地のレポーターが、会見でのゴーン氏の様子を語った。
「まるでハリウッド映画のような逃亡劇でしたが、会見ではその経緯については何も話しませんでした。
その理由は(自分に)協力した人を守るためであり、10年後に話せるかもしれないと話すにとどまりました。
それ以外のことについては、終始大変じょう舌で、演技力たっぷりで人を告発するように指を振りかざし、私も会場でゴーン被告のすぐ近くにいたんですが、この会見を準備するために、ライオンの肉でも食べてきたんではないかと思うほど意気込んでいました。まさしくショーといった様子で、想像もつかないような辛い経験をした、としきりに訴えていました。このショーは結局、自らを称えるためのショーでもあったわけです。ゴーン被告はこの国にとどまるしかありません。国外に出たら逮捕されるリスクが生じるからです」と、記者が現地から報告した。
また、フランスの通信社のAFP通信は「ゴーン被告、脚光浴び『復活』 独壇場で猛反撃」と題して速報した。
「3時間近くにわたった会見では、まずゴーン被告が記者らの前で独壇場を繰り広げた後、英語、フランス語、アラビア語、そしてポルトガル語で質疑応答を行い、記者らの問いに休む間もなく応じた。一息入れたのは、水を飲んだり、暖房の効き過ぎた室内で顔の汗をぬぐったり、最前列に座っていたキャロル夫人を抱きしめたりしたときだけだった」
■ゴーン氏による日本の「人質司法」 批判にも注目
英ガーディアン紙デジタル版のオピニオン面では、「ゴーン事件が日本の司法の闇を暴く」と題して、日本が自白するまで勾留する「hitojichi-shiho(人質司法)」をとっていると指摘し、国連人権委員会が「中世時代の司法」と表現する日本の司法をゴーンが問題提起することになったと、テンプル大の東京キャンパスのディレクターの論評を載せている。
米ニューヨークタイムズは、「カルロス・ゴーンは被害者か大悪党か」という論説記事の中で、99%の有罪判決率や、弁護士抜きでの数時間にわたる聴取、妻と連絡が取れないという措置、数週間にわたる拘束などが、国際水準に合っているのかという点をあげ、日本の司法の「特殊性」もゴーン氏の罪状とともに、注目されると指摘した。