アメリカの名門大学の一つとして知られるニューヨーク大学が、医学部の学生全員を対象に、学費を全額支援する奨学金を支給すると発表した。
現在在学中の学生と、今後入学する学生に支給され、成績や収入などに関係なく全ての学生が利用できる。ニューヨーク大学医学部の年間学費(2018年)約600万円が、実質全額無料になる。
このニュースは8月16日、臨床実習を始める医学部の学生たちに白衣を授与する「白衣授与式」で発表された。
■ 高い学費が、医師不足を招いている
アメリカ医科大学協会によると、2017年にアメリカの医師の75%が学費のために借金を抱えており、私立大学卒業の医師の借金は平均2240万円だった。
多大な借金を背負う可能性があることで、能力のある学生が医学部を避けるようになり、医師不足を招いているという。
「借金が原因で、医学部を避ける可能性があります。その中に、がんの治療法を見つける人材がいるかもしれません。私たちの大学にとっても社会にとっても、良い志願者を集めることはとても大切なことなのです」と、ニューヨーク大学の入学・学費支援部のラファエル・リヴェラ副部長は述べる。
高額な学費は医者の多様性不足も招いている。卒業後に高い収入を得られる分野へと進む人が増え、家庭医、地域診療、小児科医、研究など、高収入が望めない分野の人材不足を招く。
リヴェラ副部長は、奨学金でそういった問題に対処できると話す。
また、医学部長のロバート・グロスマン博士は「卒業後に実習期間もある医学部生は、医学部の学費を背負うことでとても厳しい状況におかれています。私たちは、(奨学金を)道義的な義務だと考えました」と述べる。
この奨学金の実現に、同大学は11年間取り組んできた。そして必要とされる660億円のうち、これまでに約498億円を集めた。そのうち約110億円は、大手ホームセンター「ホーム・デポ」の創立者による寄付だった。
同大学によると、学費を全額補助する奨学金は「アメリカのトップ10にランクインしている医学部で、ニューヨーク大学だけ」という。