「すっぴんで会社に来る人なんて、会ったことないかも」旧友の言葉で、考えた。

すっぴん日記 第2話
Arisa Ido

9月2日 土曜日  天気:晴れ 肌:少し乾燥

すっぴんになって、2日目。初の休日だ。

今日は大学時代のアーチェリー部の友達とランチの約束をしていた。

食品メーカーで営業をしている彼は、遠方からたまに東京に来た時にご飯を一緒に食べる。

年に数回会う関係だから、化粧を全くしていない姿を見せるのは初めてだった。

会う時間が近づけば近づくほど、ドキドキする。それは、恋するドキドキではなかった。

お互いの近況をアップデートし、一通り盛り上がった。

時々すっぴんであることを忘れそうになるが、彼と目があうと急に思い出して目をそらしたくなる。

どうかすっぴんだということに気づいていないでくれとその時は願うばかりだった。

ランチをした後、少し散歩をした。

彼と他愛もない会話を続けていると、久しぶりの緊張はとけ、いつものようにしゃべられるようになった。

すると何だか「すっぴん」についてどう思うか無性に聞いてみたくなった。

「ねぇ、今日わたし、すっぴんなんだ」

「え?」

「すっぴんなの!今日!」

「知ってた」

「知ってたの?」

「うん」

自分で聞いておいて余計に恥ずかしくなった。

彼は、「休日だからいいんじゃない?まぁ、仕事のときは、びっくりするかもしれないけど」

彼にとって、化粧はプライベートでは別にどうでもいいらしい。

本当か?と疑ってしまった。

では、なぜ彼は仕事上の化粧にこだわるのだろうか。

「ストッキングみたいなもんだよね。化粧って」

彼の言っている意味がよくわからなかった。

T.Matsuda via Getty Images

「ストッキングって、会社では履くのがマナーだって思われているよね。

でも、生足かストッキングかは、注意深く見ないと違いがわからない時もある。そうすると、なんでストッキングを履かなきゃいけないのか、よく分からなくなる。

でも、マナーだから仕方ないと思ってみんな履いてくる。

化粧も同じだと思うんだよね。

すっぴんとの違いがわかりやすい時もあるけど、マナーだって誰もが思っている。

だから、もし取引先の女性が化粧をしていないと、忙しいのかな?って心配になると思う。そんな経験一度もないけど。

そういえば、すっぴんで会社に来ている人なんて、考えてみれば会ったことないかも」

これから1カ月間すっぴんを会社でも貫き通そうとしている私を嘲笑うかのような言葉だった。

外部との面会で、私はやはり同じように思われるのだろうか。もしくはすでに思われているのだろうか。

「意味」を考える余地もなく、「マナー」だから、の一言で世間に片付けられてしまっている化粧。

そのせいで、「化粧は絶対にしなくてはならないもの」という実態のないプレッシャーが働く女性に重くのしかかっているのかもしれない。

そうであれば、この日記は1カ月間、自分と化粧との関係をとことん考える上で、

何かとてつもない変化をもたらしてくれるかもしれない。

◇◇◇

ハフポスト日本版でエディターとして働く私(27歳)は、2017年9月いっぱいを「ノーメイク」で過ごしました。仕事も、プライベートも、あえてメイクを塗らないことで見えてきた世界を、1カ月間少しずつ書き留めていきました。これから原則朝7時ごろ、順次公開していきます。

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