「デジタル化が進んだのに、思ったより便利になっていない…?」と感じることがあるかもしれません。キャッシュレス化が進み財布を持たない人も増えていますが、レジに並びながら決済アプリを準備する手間や、IDカードを持ち歩く煩雑さはまだあります。
では、スマホもIDカードも持たず、手ぶらで認証できたらどうでしょう。NECでは、相模女子大学大学院特任教授の白河桃子さんをモデレーターに迎え、スペシャルセッションを開催。顔認証決済から広がる世界と可能性についてディスカッションしました。
■生体認証が進化、カードやデバイスなしで決済体験を実現
生体認証を共通IDとして一貫した体験を提供するNEC I:Delight(アイディライト)。数十年に及ぶ決済技術について振り返ると、ICチップやスマホなど技術の進化が、より安全で快適な顧客体験を創出してきたことがわかります。そして今期待されているのは、すでに多くの家電製品にも組み込まれている生体認証技術。
岩田太地さん(以下岩田):生体認証技術により、カードやデバイスを持たない全く新しい決済体験や、ビジネスモデルを生み出せると考えています。そして新しい技術が安全に利用されるためには、提供する側が共通のビジョンを持つことが重要です。
NECの目標の一つは、全ての人が潜在能力をフルに発揮できる社会を推進するための価値を創造することです。
■顔認証により、その人ごとのサービスがデザインできる
顔認証による決済が普及すると、ユーザーは手ぶらでカフェを訪れ、店頭で顔を認証。現金もスマホも使わずに決済を済ませ、お気に入りのコーヒーを手にすることができます。ユーザーにとって利便性があり、サービス提供側にも決済時間の短縮、ユーザーの好みを把握して商品の提案を可能にするといったメリットも。
手ぶら決済が実現するのは、思ったより近い未来かもしれません。NECでは、すでに実証実験を開始しています。
橋本裕さん(以下橋本):NECでは南紀白浜を舞台に、新しい観光「自分だけの旅」をパートナーの皆様と共創しています。空港、テーマパーク、ホテルなどを顔一つ、手ぶらで観光できるものです。利用者の行動を解析し、タイムリーにおすすめスポットをスマホにお届けするなど、新たな取り組みにもチャレンジしています。
顔認証を用いたホテルのドア開錠や電子クーポンの配布のほか、お客さまが「どこで笑顔になったのか」をデータ化し、ファンづくりに活用しています。
生体認証を活用したIDを連携することで、一つの施設内だけでなく様々な場所やサービスがシームレスに繋がり、観光客はチケットや現金を持ち歩く必要がありません。もちろん混雑状況や自分の好みに応じた情報を受け取ることもできます。
■社会受容性のために、カギとなるのはユーザーセントリック
便利な反面、個人情報が管理されることについては慎重でありたいという声もあります。
白河桃子さん(以下白河):セキュリティについての不安を取り除くために、どんな取り組みがありますか?
岩田:NECのようなデジタルテクノロジーの会社は、独りよがりにならず、社会受容性の問題に率先して取り組むことが必要だと思います。また最近では、倫理的・法的・社会的課題であるELCI(エルシー、Ethical, Legal and Social Issues)が重要視されております。顔認証のELCIについて、大阪大学社会技術共創研究センターとの協業を開始しました。
橋本:NECはこれまで、AIや生体情報などのデータ活用に際してプライバシーへの配慮、人権尊重に最優先で取り組んでまいりました。ユーザーが主体となるユーザーセントリック(ユーザーの様々なニーズに応える柔軟性)を大切にしています。ユーザーは自由にオプトイン(参加する)、オプトアウト(参加しない)することで、「自分の情報を使わないでください」という選択ができます。
■便利なだけではない。テクノロジーが創造性を刺激
顔認証決済ではそのサービスを利用するかどうかの選択権はユーザーにあります。また、クレジットカードやパスコードの紛失リスクが減ることを魅力に感じる人も多いでしょう。
白河:顔認証の導入に際して、体験したユーザーからはどんな声が上がっていますか?
岩田:顔認証により手ぶらでいろんなことが体験できますので、便利だという声はもちろんあるのですが、お客様が先端技術に触れることで、社員の創造性やDXの意識を高めたいというニーズが出てきているところも面白いですね。
例えば愛知県の海陽学園では、ICカードを使ってプリペイド決済を行なっていました。ICカードの紛失といった課題解決のほか、生徒が先端技術に触れることでより創造性を伸ばせるであろうという理念から、顔認証ソリューションを導入していただいています。このように、ワクワクした未来を一緒に増やしていこうというお客様が増えていくことは、大変素晴らしいことだと思っています。
白河:それはとてもワクワクしますね。
橋本:生体認証による決済と止まらないデジタルITという共通の鍵がもたらす未来を皆さんと描くことができ、私自身とてもワクワクしています。
誰もが1人1人、自分らしく生きることができる世界の実現に貢献できるようがんばっていきたいと思います。ぜひ一緒に楽しい未来を作っていきましょう。
▼NEC I:Delightについて、詳しくはこちら
(取材・文/樋口かおる)