今年もJリーグが最終戦を迎えた。
毎試合、様々なドラマがあり、見ている私たちを熱くさせてくれた。
上位争いは、浦和レッズが年間勝ち点を74に伸ばし、年間1位を果たした。
一方、最後の1枠残っていたJ2への降格チームは、名古屋グランパスになった。
グランパスは、1993年のJリーグ創設時からトップリーグを戦ってきた『オリジナル10』の一つ。
そのグランパスにとって屈辱的な1日となった。
私もスタジアムで観戦をしていたのだが、終了のホイッスルと同時に残留を信じていたファンで満員のスタジアムが奇妙なほど静寂に包まれた。
ファーストステージ第11節からセカンドステージ第9節まで、クラブ史上ワーストとなる
リーグ戦17試合勝ちなしを記録した今季。
グランパスが降格をしてしまった要因はどこにあるのだろうか。
一つは小倉前監督の休養が遅かったことだろう。
初陣のジュビロ磐田戦を勝ったのは良かったものの、そこからズルズルと下降。
闘莉王が電撃復帰をし、ジュロブスキー監督に代わったことでチームは上向きだったが
8月23日の休養発表は、時すでに遅し。
もう1、2試合早かったら、状況は変わっていたのかもしれない。
他にも戦略の浸透や補強など様々な要因が重なったことだろう。
しかし、私はもっと重要な視点があると考えている。
それは、グランパスが未だに『企業スポーツを脱却できていない』ことである。
そもそも『プロスポーツ』は、ファンはもちろん、地元の自治体、住民にとって何らかの価値を創造し、そこから収益を得るという自立した存在でなければならない。
しかし、グランパスはトヨタ自動車という大きな後ろ盾がある。
『世界のトヨタ』でもあるため、資金源が大変豊富ではあるが、クラブの提供価値は勝利のみだと考えてしまっているのも事実である。
そのため地域社会における存在意識は大変低く、試合の平均観戦者数もチームが強いときには多く、弱いときには少ないという『気まぐれ的な』構図が出来上がってしまっている。
また、Jリーグスタジアム観戦者調査2015サマリーレポートによると、グランパスの試合観戦理由は1位から5位までが、『対戦相手が魅力的だから(1位)』『スケジュールの都合(3位)』などと、スタジアムに足を運ぶ多くの人が『グランパスというクラブ自体以外に価値を感じている』ことがわかる。
さらには、「クラブのファンであることは、とても重要である。」などの3つの質問を得点化したチームアイデンティフィケーションは、J1ではグランパスが最下位。J2を含めてもワースト6位となっている。
これらの調査結果から、今年のグランパスのテーマが『愛されたい宣言』となっているのも、納得がいく。
『愛されるクラブ』ではなく『愛されたいクラブ』なのである。
J2に降格する来季。
グランパスは勝つことはもちろん、地域に根差し、ファンと一体になっていく必要性がある。
ホームタウンに欠かすことのできない存在になるのか。
それとも今まで通りの企業スポーツのままであるのか。
今、その大きな岐路に立っているのではないだろうか。