2月4日、任期満了に伴う名護市長選挙がありました。無所属新人の渡具知武豊(とぐち・たけとよ)氏が2万389票を得て当選しました。
対する稲嶺進(いなみね・すすむ)氏は、1万6931票を獲得しましたが、3458票差で落選しました。
投票率は76・9%でした。
自民、公明、維新が渡具知氏を推薦していました。自民党は、選挙期間中、小泉進次郎筆頭副幹事長を名護市に2度送り込むなど「全力」で応援していました。
また、公明党も総動員で渡具知氏支援に回りました。南城市長選(1月22日)で自公推薦の現職候補が敗れた一因は、既に名護市長選に総力を挙げていた公明党の応援が南城市で手薄になっていたからとも言われています。
政府は現在、市民らが反対する中、名護市辺野古で米軍新基地建設を進めています。
渡具知氏は「裁判の結果に従う」として基地建設を「容認」する構えです。ところが、選挙期間中は辺野古問題に触れませんでした。代わりに、無料Wi-Fi拡充やスターバックス誘致などを含む地域振興を前面に訴えました。
小泉氏は応援演説で「新市長に求められているのは(辺野古問題を巡る名護市民の)対立に終止符を打つこと」と強調し、争点を「基地問題」から「町の発展」にそらせました。
選挙結果は、より多くの名護市民が地域振興に期待を寄せる現実を示したといえます。
2月3日の渡具知陣営の街頭演説で、渡具知派の市民らは小泉氏に夢中でした。期待の実態を表しているようで印象的でした。
「進次郎さんが今、すき家の前を通過しました」
到着までの動向が拡声器で紹介されると、歓声が上がり、高揚感が漂い始めました。会場は、選挙車両の壇上だけがスポットライトで輝き、コンサートのようでした。
一方、稲嶺陣営の街頭演説は、淡々と語る稲嶺氏に耳をすませる支持者らの姿が印象的でした。総決起大会(1月23日)から続く静かな熱気が、支持者同士のつながりをさらに深めているように見えました。
地元の若者らが普段着で登壇し「戦争につながる基地建設を止めて、未来に進みたい」と真正面から訴える姿が新鮮でした。
選挙結果を受け、稲嶺氏は「争点をずらされた」と話しています。稲嶺陣営では、渡具知氏が基地問題を論じず当選したことについて「基地建設についての民意が出たとは言えない」とする声が聞こえてきます。
また、新基地反対の支持者らが「諦めず頑張ろう」と翁長知事に拍手を続け、新たな決意を感じさせる場面もありました。
基地問題を巡り、沖縄の対立は一歩深まったように見えます。政府はどう終止符を打つのか。まだ何も見えていません。