働き方やキャリアの形が多様化し、転職が一般的な選択肢となった現代だが、就職活動が「売り手市場」と言われるなど、多くの企業では働き手不足に悩まされている。
働き手の定着や離職防止のために、企業が着手すべき施策とはどのようなものだろうか。また、転職を検討中のビジネスパーソンや、転職経験者は企業に何を求めているのだろうか。
人材サービス会社マイナビは、正社員の20~50代男女のうち、直近1年間(2023年6月以降)に転職活動をした1600人を対象とした「転職活動における行動特性調査2024年版」を発表。調査結果を一部抜粋して紹介する。
【調査概要】
調査期間:2024年7月6日(土)~2024年7月18日(木)
調査機関:WEB アンケート調査
調査方法:インターネット調査
調査対象:正社員として働いている20~50代のうち、直近1年間(2023年6月以降)に転職活
動をした人
有効回答数:1600人(転職者800人、転職活動者800人)
5人に1人が「1年未満」に転職。短期化する勤続期間
直近1年間に転職した人に前職の勤続年数を聞いたところ、5人に1人(20.1%)は、前職を「勤続1年未満」で退職していることがわかり、2021年の調査開始以降初めて2割を超えた。
「1年未満」と答えた割合を年代別にみると、30~50代は20%未満であるのに対し、20代が 26.8%で最も高かった。また、一般的に早期離職の基準とされる「3年未満」と答えた人も前年比3.6pt増で42.9%だった。
また、早期離職のイメージも時代と共に変化してきているようだ。
調査では「転職を自分のキャリアにとってプラス・マイナスのどちらに感じるか」と聞いたところ、「プラス(思う+どちらかといえば思う)」が41.3%となり、「マイナス(思う+どちらかといえば思う)」の29.5%を大きく上回った。
早期離職がプラスだと考える理由は、「自分に合う職場を見つけることにつながる」が57.1%で最も多く、次に「自分に合う仕事を見つけることに繋がる」(55.5%)が多かった。
ジョブ型雇用や中途採用などの選択肢も多い現代、個性やスキル、ライフスタイルに合った環境を求める働き手が多いようだ。
年功序列や終身雇用など「伝統的な日本型企業」の人気は?
調査では、終身雇用や年功序列の見直しが進み、学生の就職活動においては敬遠されることも少なくない「伝統的な日本型企業」についても聞いた。
直近1年間の転職活動をした人に「伝統的な日本型企業を就職先に選びたいか」を聞いたところ、全体の62.2%が「就業先として選びたい」と回答し、世間のイメージとは少々異なり、日本型雇用を肯定的に捉えている人が半数を超える結果となった。
年代別では、30代~50代ではいずれも「就業先として選びたい」が6割を超え、最も少ない20代でも56.8%と半数を超えている。就業経験がある転職者・転職活動者の多くが、同じ環境で安定的に働き続けることのメリットも認識しているようだ。
調査を振り返り、キャリアリサーチラボ研究員の宮本祥太さんは「企業が今後、社員の定着や新規人材の採用を図る上で、週休3日制やリモートワーク制度などの多様な働き方を選択できる施策が有効といえそうです」「社員の離職防止にも目を向けた組織作りは、活発化する転職市場において企業の人材戦略に求められる要素だと考えられます」とコメントした。
企業側の迅速かつ柔軟な施策が、働き手と中長期的な関係を築くための鍵になりそうだ。