イーロン・マスク氏がハリス副大統領のディープフェイク動画を投稿。Xのポリシー違反という指摘も

ハリス氏そっくりの声が「私は国の動かし方を何一つわかっていない」と主張する動画は、すでに1億回以上再生されている
Getty Images

起業家のイーロン・マスク氏が7月27日、カマラ・ハリス副大統領のディープフェイク動画をXに投稿して、物議を醸している。

ハリス氏は2024年11月に行われる米大統領選挙の民主党の最有力候補になっている。一方、マスク氏は対立する共和党候補者のドナルド・トランプ氏への支持を表明している。

マスク氏が投稿した動画は、虚偽であることが明示されないまま拡散されており、Xのポリシーに違反するという指摘もある。

ハリス氏そっくりの声を使った偽動画

問題の動画はハリス陣営が25日に発表した選挙広告をベースにしている。

元々の選挙広告では、ハリス氏がトランプ氏を批判し、「誰もが銃暴力や貧困に苦しまず自由に生きられる国にする」と語りかけている。

一方、マスク氏がシェアした動画は、カマラ・ハリスを名乗るハリス氏の声そっくりのナレーションが、バイデン大統領を「もうろくしている」と批判。

自分は、女性で非白人であるがために選ばれた“究極のダイバーシティ採用”であり、「私を批判すれば、性差別主義者で人種差別主義者だと言われる」と主張している。

さらに、「私は国の動かし方を何一つわかっていないかもしれないが、それは闇の国家の操り人形にとっては良いことだ」と述べて、ハリス氏を無能だと印象付ける内容になっている。

この偽動画を最初に投稿したのはYouTuberのミスター・ローガン氏で、同氏は「キャンペーン広告のパロディ」だとYouTubeとXに記載している。

しかし、マスク氏は自身の投稿に「これはすごい 😂」としか書いておらず、偽動画であることを明示していない。

Xは「合成または操作されたメディアに関するポリシー」で、「利用者を欺いたり、混乱させたりして、損害をもたらす可能性のある合成または操作されたメディアや、文脈から切り離されたメディアを共有すること」を禁止している。

禁止されているメディアには、「公共の問題について広範囲にわたって混乱をもたらすもの」が含まれる。ミームや風刺は「メディアの信ぴょう性に関して著しい混乱をもたらさない場合」に限り、違反しないと判断されるとしている。

Xは深刻な違反に対して、コンテンツの削除要請や背景情報の追加をする場合があるとしているが、これまでのところマスク氏の投稿は閲覧できる状態で、警告メッセージなどは付けられていない。

マスク氏の投稿は1億回以上再生されており、11月のアメリカ大統領選挙を前に、生成AIやディープフェイクによる誤情報が選挙に影響を及ぼしかねないという不安を投げかけている。

アメリカの消費者の権利保護団体「パブリック・シティズン」のロブ・ワイズマン共同代表は、マスク氏が投稿した動画について「本物だと受け止める人がたくさんいるだろう」とAP通信に述べ、警鐘を鳴らしている。

一方、ハリス陣営の広報ミア・エーレンバーグ氏は「アメリカ国民は、イーロン・マスク氏やドナルド・トランプ氏の偽りで操作された嘘ではなく、ハリス副大統領が提供する真の自由や機会、安全を求めていると信じています」とコメントしている。

注目記事