日本でも介護の現場や、学習障害の子供達に効果があると注目を浴びている『音楽療法』。
ハワイの音楽療法について、『Sounding Joy Music Therapy』の山浦 和美さん (米国音楽療法教会認定音楽療法士)に話を聞きました。
クライアントにセッションをする山村さん
『音楽療法とは』とは、どのような物ですか?
人間のあらゆる機能や能力を維持、向上させるために音楽を使って働きかける療法です。
音楽療法には、医学的、精神心理学的、行動学的、発達額的、教育的モデルや、ヒューマニズム、音楽指導を応用したものも含まれています。
音楽療法のセッションでは、音楽的要素を用いて、セラピストとクライアントの関係を基礎に、望ましい成長や変化を促す環境を提供し、生活品質(Quality of Life)の向上を目指します。
音楽は誰にでも親しみやすく、自閉症と診断された子供からアルツハイマー病を持った高齢者まで、さまざまな状況や病理、年齢に対応できます。
クライアントとの信頼関係が大切
実際には、音楽療法士はセッションの中で何をしているのですか?
一人ひとりのクライアントにとっての強み、そして必要を評価して、必要に応じた治療計画を建て、セッションを行っていきます。ですからそのクライアントさんによって、セッションの内容が変わってきます。
音楽療法士はクライアントの音楽表現をサポートするために、クライアント自身が、即興演奏、作曲、グループでの楽器演奏に積極的に参加できるように、サポートします。
音楽療法を受けるために、クライアントは、何の音楽経験も必要はありません。
音楽療法士がサポートする中、クライアント自身が楽器を弾いたり、歌ったりすることによって個人の機能 (身体的、心理的、社会的、社交的、行動的など) が向上されていきます。
どんな楽器を使いますか?
使用する楽器は、ピアノ、ギター、ウクレレ、大小さまざまな打楽器、ドラム、などクライアントの好みに合わせて選びます。ウクレレの他に、フラで使う打楽器など、ハワイの楽器も多く使います。音楽のジャンルもクライアントの好みに合わせて選ぶので様々です。
ハワイらしく、ハワイの楽器も使われる
セッションをしている中で、忘れられない事はありますか?
認知症のお年寄りの中には、子供のころに覚えた歌をすらすらと歌いだし、家族のこと、人生の思い出の場面を音楽とともに思い出す方が多いですね。また、音に集中することによって、周囲への意識が高まったり、音楽を通じて療法士と交流することによって、寝たきりのお年寄りでも、社交の機会が与えられたりします。日々のセッションで、こうしたことを目のあたりにし、感激する事も多いです。私たちは生きる力を輝かせる可能性を音楽療法に見出し、音楽療法の力が人々の生活を必ず豊かにすると信じています。
ハワイならではの楽器も使いながら、ローカルの人たちにセッションを施しているSounding Joy Music Therapy。クライアントの人たちが生き生きと音楽に接していたのが印象的でした。ありがとうございました。
Sounding Joy Music Therapy, Inc. について
URL : www.soundingjoymt.org
2002年にハワイの音楽療法促進のために設立された、ハワイ州で唯一の非営利福祉団体。ハワイでの音楽療法の幅広い提供と啓発、音楽療法教育と研究を目的として活動を続けている。現在、サウンディングジョイ所属の音楽療法士は、7名(オアフ島4名、マウイ島2名、ハワイ島1名)。
今年14年目を迎えるサウンディングジョイは、2000人を超えるハワイの方々に音楽療法を施し、5万人以上の方々に音楽療法とは何かを伝える活動を続けてきた。他のプログラムにはない、音楽療法のクリエィティブなアプローチは地元の学校や、高齢者施設、病院などから多くの要望を受け、多くの地元のOrganizationとプログラム提携している。
写真撮影 : 塩沢淳子
2016年3月9日 「Hawaii Web TV」から転載