広島原爆投下から75年。AIでカラー化された赤いキノコ雲の写真に胸が締め付けられる

「広島原爆の日」の8月6日、東大大学院の渡邉英徳教授が投稿。『この世界の片隅に』の片渕須直監督の指摘を参考にしたそうです。
尾木正己さんが撮影した広島原爆のキノコ雲の写真。東大大学院の渡邉英徳教授がカラー化した(渡邉教授の8月6日のTwitterより)
尾木正己さんが撮影した広島原爆のキノコ雲の写真。東大大学院の渡邉英徳教授がカラー化した(渡邉教授の8月6日のTwitterより)
Twitter/hwtnv

広島市への原爆投下から75年を迎えた8月6日、東京大学大学院の渡邉英徳(わたなべ・ひでのり)教授が原爆投下時のキノコ雲のモノクロ写真を、人工知能(AI)でカラー化してTwitterに投稿した。投稿から4時間で、2000回以上のリツイートを集めている。

「この写真を見るだけでも胸が締め付けられる」「かつてないリアリティーで、息苦しいほど」「ベイルートの爆発映像を見たので、キノコ雲と重ねてしまう」などと反響が広がっている。

■呉で撮影、「きらびやかなキノコ雲」

この写真はもともと、爆心地から約20km離れた呉市海軍工廠に勤務していた尾木正己さんが撮影したものだ。尾木さんは「広島原爆戦災誌 第二巻 第二編」の中で、当時の様子を「きらびやかなキノコ雲」だったと振り返っている。

「鉛筆を持った手が浮き上がるような衝動を受けた。状況から判断して、普通の爆弾ではなく、広島市近郊で、火薬の誘爆だろうというのが、ほとんどの者の見方であった。 私は、数分後にモクモクと上昇するきらびやかなキノコ雲に、数枚のシャッターをきった」

■長崎原爆や核実験のカラー映像を元に色彩を再現

今回、キノコ雲のカラー写真を投稿した渡邉教授は戦争・災害などの白黒写真をAI技術でカラー化し、SNSなどで発表する活動で知られている。渡邉教授は論文の中で「過去のできごとと現在の日常との心理的な距離を近づけ、鑑賞者どうしの対話を誘発する」のが狙いだと明かしている。

この写真は以前にもカラー化されていたが、今回はキノコ雲の上部が赤っぽい色になっているのが特徴だ。これはアニメ映画『この世界の片隅に』の片渕須直監督の指摘を元に、赤みがかった雲を、地上から立ち上った白い雲が覆い隠しているところを再現したことによる。

今回のカラー化で苦労した点を、渡邉教授は「上部のオレンジ~ピンクの色合いを、長崎原爆・戦後の核実験のカラー映像などをもとに再現を試みようとしたことです」とハフポスト日本版の取材に語った。

「元のモノクロ写真の階調が飛んでしまっているため、全体に色が白っぽくなってしまうところが課題として残ります。この件については,片渕須直監督から追加のご指摘をいただき、やり取りしています。また今後も,色の探求を続けていきたいと思っています」と話している。 

■素材となったモノクロ写真と、渡邉教授が加工したカラー写真の比較

こちらが元の白黒写真。 pic.twitter.com/rOhw0198ps

— 渡邉英徳 (@hwtnv) August 5, 2020

75年前の今日。1945年8月6日8時15分,広島市への原子爆弾投下。当時の推定人口35万人のうち,9万〜16万6千人が,被爆から2〜4か月以内に死亡したとされる。写真は呉市の吉浦町(現:若葉町)の海軍工廠砲煩実験部から尾木正己が撮影したきのこ雲。ニューラルネットワークによる自動色付け+手動補正。 pic.twitter.com/LHoH2GPlqT

— 渡邉英徳 (@hwtnv) August 5, 2020

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