アメリカ・フロリダ州タンパで2月にゲイの男性が射殺された事件で、検察は3月8日、65歳のジェラルド・デクラン・ラドフォード容疑者を殺人罪で訴追した。
検察は犯行動機について「性的指向を理由にした犯罪」と発表した。
52歳のジョン・ウォルター・レイさんは2月2日、ヒルズボロ郡にあるウエスト・ドッグ・パークで銃撃されて亡くなった。
郡保安官事務所によると、2月2日午前8時前に通報があり、保安官代理がウエスト・ドッグ・パークに向かった。現場にいたレイさんの体に銃弾による外傷があり、救命措置を試みたものの病院で死亡が確認されたという。
銃撃したラドフォード容疑者は保安官代理に対し、「レイさんともみ合いになり、正当防衛で撃った」と主張したとされる。
ラドフォード容疑者は地元紙タンパ・ベイ・タイムズの取材に対しても「私は襲われて、自分を守った。それ以上のことは何もない」と述べている。
一方、レイさんは銃撃前日に「『デック』という人物から『お前は死ぬ』と何度も脅された」と友人に送った動画で伝えていたという。
当局によると、この「デック」はラドフォード容疑者を指していると考えられている。
さらに、事件後複数の住民から「ラドフォード容疑者がレイさんに偏見に満ちた中傷を浴びせ、危害を加えたいと話していた」という情報が当局に寄せられた。
検察はこういった情報をもとに、ラドフォード容疑者の逮捕・訴追に踏み切った。
「被告は正当防衛を主張したが、捜査で得られた証拠から、攻撃したのはラドフォード容疑者であり、動機は被害者が同性愛者であったことだと示している」とプレスリリースで述べている。
<友人に送った動画で「デック」から何度も脅されたと伝えるレイさん>
事件後、地域住民や友人たちは、レイさんを殺害した人物が自由の身でいることに不安を募らせていた。
郡保安官事務所は、事件発生から逮捕まで5週間かかった理由について、正当防衛のための武器使用を認める「スタンド・ユア・グラウンド法」を覆す難しさを指摘した。
正当防衛を認めるこの法律は、2012年にフロリダ州で17歳のトレイボン・マーティンさんを射殺した自称自警団員が無罪評決を受ける根拠になった。この評決の後、全米で抗議が起きている。
40近くの州が、独自にこの法律を導入して、脅威を感じた場合に殺傷能力のある武器の使用を認めている。
2022年のJAMAネットワークの調査によると、スタンド・ユア・グラウンド法は、全米の月間の殺人および銃器による殺人の発生率の8〜11%の増加に関連していた。
今回のレイさん殺害事件では、本人が録画していた動画や地域住民の情報提供が訴追を可能にした。
検察当局は、州のヘイトクライム法に基づいてより重い刑を求めるという。
ヒルズボロ郡のチャド・クロニスター保安官は、「証拠からラドフォード容疑者が心に抱いた憎しみから行動したことは明らかだ。それは私たちの強く多様な地域社会では許されない憎しみだ」と声明で述べている。
スージー・ロペス州検察官は「(レイさんは)性的指向に基づく恐怖や差別を感じずに生きて当然だった」と述べている
「証拠によれば、被告の行動は憎しみに突き動かされたものであり、責任を問われるでしょう。私の心は、正義のために戦う被害者の家族と大勢の友人たちとともにあります」
ハフポストUS版の記事を翻訳しました