ミスター・トイレと呼ばれる人がいる。
ふざけたあだ名?
いやいや、大まじめに世界が注目している人物なのだ。ジャック・シム、シンガポールの実業家だ。40歳を機に社会起業家に転身し、トイレ問題解決に全力を傾ける。日本ではまだまだ知られていないトイレ問題とは何か? 誰もが使うトイレから問題が見えてくる。
ハフポスト日本版はミスター・トイレに書面インタビューを試みた。トイレ問題ってなんですか?
――ミスター・トイレというあだ名はとてもユニークです。トイレ問題とはどんな問題なのか。なじみのない日本の読者に教えてください。
まず大事なことは、誰もが1日6〜8回はトイレに行かなければならない、ということです。ところが今、世界では24億人もの人々が、満足いく環境のトイレのない生活を送っています。
議論していないものを、改善することはできません。トイレには多くの問題が集約されており、それが深刻な健康、尊厳と安全性の問題を引き起こしているのです。
例えば、トイレがない人々は道端や川の中や、外に排便します。これは、清潔な水を飲めず、多くの病気を引き起こす原因になります。不衛生な環境、汚れた食品や排泄によって汚染された水が引き起こす下痢などの病気で、毎年の多くの人が死亡しているのです。
トイレ設備が不十分であることにより、野外で用を足そうとするときに女性が性的暴行を受ける。あるいは月経中に生理用品を交換するとき、トイレがなくてプライバシーが保たれず、学校を辞めてしまうといった問題が起きています。
私たちはときに面白く、ユーモアに使ってトイレにまつわるタブーを破りました。多くのメディアが私たちの活動を取り上げました。
政治家も解決に向けて予算をつけるようになりました。研究も進に、多くの有名人もサポートしてくれるようになりました。
インドのナレンドラ・モディ首相、中国の習近平国家主席もトイレ問題解決に向けて動いています。
トイレは私たちの生活、私たちの幸福にとって、とても重要です。私はミスター・トイレと呼ばれることを誇りに思っていますよ。
――あなたの活動もあり、11月19日は「世界トイレの日」となりました。どのような社会を目指しているのですか?
私はどこでも、誰もが必要があるときに、清潔で、ずっと使える安全なトイレにいつでもアクセスできる世界を見てみたいです。
――40歳になるまで何をしていましたか? そして、なぜ40歳から社会起業家に転身したのでしょうか?
貧しい家庭の出身で、勉強はあまりできませんでした。そこで、24歳から自分でビジネスを展開したのです。シンガポールを拠点に不動産ビジネスなどで十分なお金を得ました。
40歳までに人生に必要なお金は手に入れました。だから、これ以上お金を稼ぐ必要はないと思ったのです。
どうしてか? 人生は非常に短いのです。たった80年しかありません。
お金をつかって、より多くの時間を購入することはできません。なのに、お金を稼ぐためには、自分の時間を使う必要があります。
時はお金よりも貴重なのです。そこで私は自由人になりました。
トイレ問題という、生涯を捧げる価値がある問題を見つけられて、とても幸せです。私はこの課題を解決するために、これまで培ったあらゆるビジネスのアイデアを使用しています。
こうして私は社会起業家になったのです。
――今後、やりたいことはありますか?
いまは慈善事業から活気のある市場を生み出すためにBoP Hubというプロジェクトを立ち上げています。ネットワークの力でBoP(Base Of Pyramidの略。世界の所得者層で7割を占める低所得者層のこと)が抱える貧困問題を解決したいと思うのです。
ですが、私はもう61歳になりました。もう私には時間がないでしょうから、多くの人にネットワークに参加してほしいと願っています。
【お知らせ】
女性活躍・ダイバーシティ推進を目的としたビジネスカンファレンスMASHING UPにJack Simさんが登壇します。
異なる業種・国籍・性別・分野のひとびとが出会い、新しい化学反応を生み出すビジネスカンファレンスMASHING UP。のべ820人を動員し、大好評のうちに幕を閉じた第1弾につづき、11月29日・30日に第2弾を開催します。魅力的なスピーカー陣による熱いセッションが目白押しです。
ハフポスト日本版特別割引【2日間チケット通常価格18000円(税抜)を15000円(税抜)でご案内】あり。
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