最近、こうした言葉をよく聞くようになった。
経団連が、企業行動憲章で「持続可能な社会の実現」を掲げたのが2017年。SDGsバッジをつけた人や「SDGsへの取り組み」をアピールする企業も増えた。
売り上げなどの財務状況だけでなく環境や社会に配慮した取り組みで企業を評価する「ESG投資」の流れも加速している。
菅義偉首相は、2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにすると宣言。脱炭素の動きも加速している。
一方で、
「キレイゴトで儲かるなら苦労しない」
「余裕のある企業だけが取り組めるんじゃないか」
そんな本音も聞こえてくる。
社会はどんどん動いていくが、いまいち全体像が掴めない。
一体、世界はどこへ向かっているのか…?
ESG投資の専門家として、企業コンサルティングや政府のブレーンとして活躍する「ニューラル」代表の夫馬賢治さんに聞いてみた。
夫馬さん、「環境・社会への配慮」と「利益追求」は両立できるんですか…?
経済認識を大きく分類すると?
夫馬さんは、自身が作成した「経済認識に関する夫馬の4分類モデル」を用いて、経済のマクロトレンドを以下のように解説する。
この図は、2つの軸を用いて、経済認識を4分類したものだ。横軸は、環境・社会への影響を考慮すると利益が「減る」と考えるか、「増える」と考えるかの違い。縦軸は、企業が環境・社会への影響を考慮することに「賛成」か「反対」かの違いだ。
経済認識を4つに大きく分類すると、「ニュー資本主義」「陰謀論」「オールド資本主義」「脱資本主義」に分けられる。
ここ10年で、グローバル企業の認識は、環境・社会へ配慮することで利益が「減る」と考える「オールド資本主義」から、利益が「増える」と考える「ニュー資本主義」へと大きく変化しているという。
「これまで多くの人たちは、環境・社会への配慮をやり過ぎると利益が減ってしまうので、あまり踏み込みたくない、積極的には正直やりたくない。と言うのが、世の中の常識でした。
でも、10年くらいでグローバルの状況は大きく変わっています。
アメリカやヨーロッパに行って(環境に配慮した企業活動は利益を減らすという)話をすると、本当に唖然とされます。いつまでそんな話をしているのかと、残念がられてしまう空気もあります」
経済合理性の保てる市場を増やしていこう
そうは言っても、SDGsで掲げられている17のゴール全てにおいて、現時点で「経済合理性」が保てるか、と言われれば「そうではない、だからこそ役割分担が大事」だと夫馬さんは続ける。
SDGsの17のゴールの中で、気候変動対策およびエネルギー開発の領域は、「(比較的)収益性が確保できる状態になってきている」と夫馬さん。
陸上生態系の保護などにつながる農業の領域は「イノベーションが進んできているため、(多くの企業が)取り組めば取り組むほど、将来利益が生まれていくであろうことが明確になりつつある」。
一方で、貧困や飢餓の解決については、まだまだ事業として成立しにくいのが現実と解説する。
収益性が担保できる領域については、企業や投資家などが積極的に取り組み、収益性がまだ担保できない領域については、国連やNGO、政府などが積極的に取り組むことで、役割分担をしている状態だという。
「SDGsのゴールの中で、自分たちがどこの領域であれば積極的に事業の成長と環境・社会課題の解決を繋げていけるか、探していくことが重要です」
<動画の解説者>
夫馬賢治(ふま・けんじ)
ニューラルCEO。ESG・サステナビリティ専門家。ハーバード修士。環境省や農林水産省等の有識者委員。
Sustainable Japan編集長。国際NGO理事。著書に『ESG思考』『データでわかる2030年地球のすがた』。
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