「動画メディア」に急傾斜するニュースパブリッシャー、だが若者は動画よりもテキストニュースを欲している・・

ミレニアル世代などの若年層は、新聞離れとテレビ離れが顕著で、ほとんどオンラインでしかニュース記事に接しない人が増えている。

動画メディア・ブームが真っ盛りだ。フェイスブックのニュースフィードに現れるコンテンツを見ていても、動画さらにはライブ動画の割合がどんどん増えているのが実感できる。

米国の伝統新聞や新興のニュースメディアも、動画ニュース記事の割合を競って増やしている。

最近ではライブ動画をフェイスブックなどに投稿するのが日常化してきた。さらに、360度動画、VR、ドローン撮影など最新テクノロジーを駆使した動画ニュースも頻繁に配信されるようになっている。

確かにテキスト記事に比べ、動画ニュースのビュー数が一般に大きく上回っている。オンラインでも、ニュースを読む時代から視る時代にシフトすると見込んだのか、米国のニュースパブリッシャーはこぞって、動画ニュースを充実させるために多くの人と金を投入しているのだ。

ところが、この動画ニュース・フィーバーに少し水を差すような調査結果を、Pew Research Centerがこのほど発表した。若者(18~29歳)にニュースをテキスト系で読みたいか、動画で視たいか、それとも音声で聴きたいかを選ばせると、図1のように42%がニュースを読みたいと答え、動画ニュースを視たい38%を上回っていた。

もともと若者よりも高齢者ほどテレビなどの動画ニュースを好んでいるのは理解できるが、新聞離れが猛烈に進んだ若年層はビジュアル志向が高そうなので、テキストニュースよりも動画ニュースを好むと思われていたのだが・・。

(ソース:PewResearchCenter)

図1 「読むニュース」と「視るニュース」と「聴くニュース」。

同じPew Research Centerの調査によると、米国の若者(18~29歳)でニュースに熱意をもって接する人の割合が、中高齢者に比べ圧倒的に低くなっている。ニュースコンテンツと接する時間をあまり持ちたくない若者が多いのだ。

短時間で浅く広くニュースに接するにはテキストのほうが向いている。若者にとって、エンターテイメントコンテンツなら動画に飛びついても、動画ニュースは時間がかかり面倒くさいということか。

ところが、米国のニュースパブリッシャーは「視るニュース」に重心を移そうとしているのだ。

ミレニアル世代などの若年層は、新聞離れとテレビ離れが顕著で、ほとんどオンラインでしかニュース記事に接しない人が増えている。特に、フェイスブックのようなソーシャルプラットフォームがニュースに接する場となってきている。

そこで、パブリッシャーはニュース記事に無関心な若者も振り向かせるためにも、動画ニュースを増産し、ソーシャルメディアに投稿してきているのである。

だが、今回の調査からは、動画ニュースが必ずしも若年ユーザーを惹きつける切り札になるとは言いきれない。もっと魅力あるテキストニュースを配信するほうが重要かもしれない。

ロイター(Reuters Institute)が毎年発行する「Digital News Report」の2016年版の著者の一人であるAntonis Kalogeropoulos氏は、「オンラインのニュース動画が急増しているのは、コンシューマーからの強い要求があったからというよりも、テクノロジーやプラットフォームそれにパブリッシャー側からの要望が大きかったからである」と説く。確かに、オンライン動画広告で主導権を握りたいフェイスブックが、ニュースパブリッシャーにより多くの動画ニュースの投稿を強く働きかけ、多くのパブリッシャーがそれに応えているのが現状である。

(2016年10月7日「メディア・パブ」より転載)

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