お金よりも、人間と地球が共に利益を得られるものを

温暖化と戦争を導く化石燃料のサイクルを最終的に断ち切るため、革新的なエネルギー技術 (高度な再生可能燃料、石油を燃料とする競合相手に差をつける電気自動車、より効率的で低コストな太陽電池、より工夫を凝らした冷暖房を備えた建築など) には十分な財政的支援が必要だ

ロンドン――起業家として最初の一歩を踏み出してから40年以上、私はある問いに突き動かされてきた。どんなビジネスが人々の暮らしをより良くできるのか。その答えを得るのは必ずしも容易ではない。

起業家は、そして成功は多くの実験と失敗によって生まれるものである。インスピレーションを得るために重要なのは、この世界の10年、20年先を見据えることだ。私たちはどんな未来を心に思い描き、どんな製品やサービスを享受したいのか?  そこへ向かう道のりで障害となるものは何か?

結論からいえば、この地球はさまざまな大きい課題に直面している。

どうすれば増え続ける世界の人口の食糧を確保できるのか?  

今もなお10億人を超える、貧困にあえぐ世界の人々の暮らしを向上させ、より高い生活水準とより良い生活を実現するために何ができるのか?  

どのようにして気候変動の流れを変えられるか?  

そして我々を隔てる壁を乗り越え、シリアやコンゴといった地域で起きている暴力的な紛争を終わらせることができるのだろうか?

よくよく見てみると、現代の世界が抱える大きな問題は、その多くが何かしらのつながりを持っていると私は感じている。たいてい、そうした問題によって大きな構造的問題が明らかになる。そのうちのひとつが、この美しい地球を私たちがどう取り扱うか、だ。傷つきやすい生態系を破壊し、生物多様性を消し去り、究極的には限りある自然資産の多くを枯渇させている。

例えば、温暖化した地球で砂漠化や土壌侵食、水資源が逼迫して水不足が進み、結果として大量の移民と悲惨な貧困をもたらすことを理解するために、多くの知識は必要ないだろう。そのうえ、私たちが絶えず化石燃料を求めてきた結果、世界中の社会不安や武力紛争を煽ってきたのだ。

これは悪循環でしかない。私自身、重大な論点として10年以上主張してきたことだ。しかし、私はこの深刻な状況を十分に認識しているが、悲観的な未来を長々と語るつもりはない。課題とは、真正面から取り組むために存在する。私はこうした相互依存のネットワークを進歩と前向きな変化を促す大きな機会と捉えたい。実用的な指針を示すのは当然のことだが、とりわけイノベーションと賢明な投資を通じてそれを実現したい。

そこで、起業家が大きな役割を担うことになる。多くの企業家がすでに行動を起こしており、その規模はかつてないほど大きなものとなっているのはいい兆候だ。そのことは昨年6月に私たちがB-Teamを発足させた理由の1つとなっている。B-Teamは、利益を生む一方、人々と地球を優先する新たなビジネスを提供することを目的とする、ビジネスリーダーたちによるグローバルな集団であり、世界中のビジネスに「プランB」を提供している。

細かく見てみると、今後私たちが直面する大きな問題の1つが、どのようにして安全で、クリーンで、持続可能なエネルギーを未来の世代のために確保するかである。エネルギーの利用は、70億人が持続可能な生活を保証する基盤であり、現在のエネルギー分野の規模の大きさと残されている自然の現状を考えると、改善の余地は多くある。

何よりも、今よりももっと効率良くエネルギーを利用するための、大きなチャンスがあると私は思う。これはより燃費の良い車や飛行機、電子機器といったものに適用することができる。そしてとりわけ重要なのが建築物だ。ヴァージングループの基金ヴァージン・ユナイトが立ち上げた、市場ベースの炭素削減策を構築するためのアプローチを行う「カーボン・ウォー・ルーム」からの最新報告では、世界のエネルギー消費の40%、二酸化炭素排出量の3分の1は建築物からきている。エネルギー効率を改善することで排出量を削減させる (11億トン以上の二酸化炭素に相当) 可能性が高まるだけでなく、エネルギー使用量を削減して経済的にも節約できるのも重要だ (世界的に見ておよそ数兆ドルと見積もられる)。

第二に、革新的なエネルギー技術 (高度な再生可能燃料、石油を燃料とする競合相手に差をつける電気自動車、より効率的で低コストな太陽電池、より工夫を凝らした冷暖房を備えた建築など) には十分な財政的支援が必要だ。

投資家の多くは、未だにこうした取り組みをリスクの高い初期段階のコンセプトだと考えているから、手を出すことをためらっている。しかし、私はこうしたイノベーションやコンセプトから成功するものも出てくると確信している。カーボン・ウォー・ルームのような組織は、数十億トンの二酸化炭素排出量を削減できる、数十億ドルの市場を軌道に乗せるため、すでに支援を行っている。

投資家側の課題は、そうした試みに対し、資金を過剰に浪費することなく支援を行う道筋を作ることだ。「MITテクノロジー・レビュー」に掲載された最近の記事によると、アメリカでは、私的財団が行うスタートアップへの投資を(大きな収益を生むとしても)慈善的な寄付と見なしている点を指摘している。

ここに落とし穴がある。一般の投資家にとって、スタートアップは明らかにリスクが高すぎるし、はっきりと慈善活動としての役割に従事しなければならない。だが、正当な場所から正当な理念へと、リソースが確実に行き渡るような方法を見つける必要がある。

これは、世界がエネルギーの補助金について対話を始める必要がある、ということだ。懐疑派は、二酸化炭素排出の少ない再生可能エネルギーが従来の化石燃料より高コストであることをたびたび論じる。しかし、2013年3月の国際通貨基金(IMF)が行った調査では、世界でエネルギーにかける補助金は1兆9000億ドル、世界のGDPの約2.5%との推計だ。もし世界中のエネルギー租税補助金が廃止されれば、世界の二酸化炭素排出量は40億トン (もしくは13%) 以上削減できる。ちなみに、2012年の世界全体の再生可能エネルギーに対する投資は2440億ドルだった。もしも不安定で不確実な補助金と再生可能エネルギーに対する政策がなかったら、この額はさらに大きなものとなっていただろう。

確かに、このようなエネルギー分野の課題を解決するには、今もなお長い時間と努力が必要である。しかし私はしつこく楽観論者であり続ける。「クリーン革命」は地球を救うか、経済成長をとるかの二者択一ではないと考える。この2つは表裏一体だ。イノベーション、投資、適切な規制を正しく組み合わせれば、成功は手の届く所にあると私は見ている。

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