新型コロナでハグできなくなった親子。ICU看護師の娘に母がシーツをかぶせて抱きしめる

「娘が大丈夫かどうか、確認したかったんです」。仲の良い親子が一瞬だけ、抱きしめあえました
娘にシーツをかぶせて抱きしめた、シェリル・ノートンさん
娘にシーツをかぶせて抱きしめた、シェリル・ノートンさん
LIZ DUFOUR/USA TODAY NETWORK

オハイオ州ブルーアッシュに住むシェリル・ノートンさんと娘のケルシー・カーさんは、わずか15分の距離に住んでいる。

しかし約1カ月間、二人はお互いに触れることができなかった。それは、仲の良い母娘にとってつらい状況だったという。 

「私たち親子はいつもハグをしています。だからハグできないのは私たちにとって普通じゃありませんでした」と、カーさんはABCのニュース番組「グッド・モーニング・アメリカ」で語る。

二人が物理的な距離を取らなければいけなくなったのは、新型コロナウイルス感染拡大のためだ。

ノートンさんは64歳。彼女と彼女の夫は疾患も患っており、年齢のことも考えると特に新型コロナウイルス感染には気をつけなければいけない。

一方、娘のカーさんはICU(集中治療室)の看護師で、患者への接触が多い。そのため、両親に感染させないよう、ソーシャルディスタンスを強く心がけていた。

カーさんが両親の家から何かを取る必要がある時は、家の前に車をバックで駐車して、必要な物をノートンさんがトランクに入れるようにしていた。

車から降りてハグすることはできず、カーさんはそのまま車を運転して走り去っていた。 

しかし4月3日、患者のためのプレイヤースクエア(お祈りのメッセージをつけた小さなニットや布)を取るために、カーさんが自宅を訪れた時、ノートンさんは娘を抱きしめたいという気持ちを抑えることができなかった。

ノートンさんはとっさに洗濯カゴのシーツをつかんでカーさんの体に覆いかぶせ、シーツの上から娘を抱きしめた(カーさんはマスクをつけていた)。

「娘が大丈夫かどうか、確認したかったのです。だから会う機会ができた時に思わずシーツをかぶせました」とノートンさんは「グッド・モーニング・アメリカ」に語る。 

「シーツがあれば、もしかしたらハグしても大丈夫かもしれないと思ったんです」

たまたま近くを歩いていた、家族の友人で地元紙「シンシナティ・インクワイアラー」写真家のリズ・デュフールさんが、距離をおいた場所からハグする二人の姿を撮影した。

ノートンさんはインクワイアラーに「ほんの数秒娘を抱きしめて、とても気持ちが明るくなりました」と語っている。  

「写真を見ると、娘も私を強く抱きしめているかわかります。まるで彼女が家に帰ってきたようでした。ほんの一瞬、娘は私の腕の中で安心したんじゃないかと思います」

母に同意するように、カーさんも「素晴らしい一瞬でした」と「グッド・モーニング・アメリカ」に語る。

新型コロナウイルス感染拡大に備えるため、カーさんはシンシナティ・キリスト病院で多忙な勤務をこなしている、1週間に4回の12時間勤務をし、家では夫と犬と一緒に自主隔離している。

ノートンさんは、「医療従事者たちが孤独を感じているとソーシャルメディアで目にしていたので、娘が孤独を感じないよう思わずハグした」とインクワイアラーに語る。

「これは私のためにやったのです。だから自己中心的でもありました」

「でも、娘のためでもありました。なぜなら娘に、自分自身がウイルスに汚染されてかのように感じてほしくなかったのです」

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。

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