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時代はいま、大きく変わっている。
新型コロナウイルス対策や、気候変動対策、そして多様性社会の実現に向けて、あらゆる業界が変化している。私たちの働き方、生き方はこれからどうなっていくのか?
常に新しい時代の「街づくり」にチャレンジしてきた三井不動産のいまを見ることで、これからの時代を探る本連載。
第1回目は、竣工間近の「東京ミッドタウン八重洲」から、「新しい時代の街」を考える。
ここから始まる。「東京ミッドタウン八重洲」が新たな日本の玄関口に

東京駅前の再開発事業の皮切りとなる「東京ミッドタウン八重洲」が2022年夏に竣工する。「船の帆」を意識した曲線のデザインは、東京駅のグランルーフと呼応し、八重洲口の外堀通りを彩る。
「当社は、プロジェクト毎にその街にあった建物デザインやコンセプトを定めます」と、三井不動産で「東京ミッドタウン八重洲」の開発を担当する依田佐知子さんは話す。
3施設目となる東京ミッドタウン「八重洲」は、六本木、日比谷ともまた様相が変わりそうだ。

◇◇◇
日本の玄関、夢を抱く人の町、八重洲
━━ 「東京ミッドタウン八重洲」のコンセプトと、そこに込められた想いを教えてください。
依田佐知子さん(以下、依田さん):本プロジェクトは「ジャパン・プレゼンテーション・フィールド〜日本の夢が集う街。世界の夢に育つ街〜」をコンセプトにしています。
八重洲は、江戸時代から現在まで、「夢を抱く人」が集い、日本の交流と成長の中心として栄えてきました。江戸時代は、「桶町」、「元大工町」、「北紺屋町」、「南鍛冶町」などの地名で呼ばれ、様々な職人が集う街でした。明治時代以降は、金融業、運送業などの近代産業が発展しました。
そして、1914年に東京駅が開業し、1929年に八重洲口が開設されると、地方から企業・ビジネスパーソンが集まり、日本の企業がここで大きく育っていきます。現在でも、日本全国、世界各国の人が集い、出発していく場所です。
そんな八重洲にある東京ミッドタウンだからこそ、多様な人が集まり、その交流の中で、新しい価値が誕生する場所、そして日本を世界に発信していく場所にしたいと思っています。
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━━ 多様な施設が入るそうですね。
依田さん:オフィス、ホテル、商業施設のほか、小学校や認定こども園も設けられます。東京ミッドタウンのブランドらしく、様々な施設が集まり、まさに「ミクストユース」*型の施設になります。
多様な人が訪れる場所になりますが、誰にとっても使いやすく、気づきや発見があるような場所になればと思っています。
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━━ 東京ミッドタウン八重洲の特徴は?
依田さん:東京ミッドタウン八重洲の再開発計画は約20年前から始まった長いプロジェクトです。計画中に時代が大きく変わり、環境問題対策や、新型コロナへの対応など、求められるものも変わってきました。時代にあったものにするために、全てできるわけではないけれど、提供する価値のあるものを見極めて、やれるものはやりたいと思いながら進めてきました。
実際に、「ポストコロナを意識したオフィスづくり」と「脱炭素社会に向けた設備の導入」は、東京ミッドタウン八重洲の大きな特徴となっています。
着工後にコロナ禍へ…完全タッチレスオフィスをいち早く実現
━━ ポストコロナを意識したオフィスとは?
依田さん:首都圏大型物件初となる「タッチレスオフィス」であることが本施設の特徴の一つです。顔認証や専有部の自動ドアによって、施設エントランスから執務室まで、完全タッチレスで入退室ができます。執務室外に行くときも、エレベーターホールのホログラムボタンで行き先を入力することでタッチレスを実現しています。
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依田さん:また、清掃ロボットや案内ロボット等の省人化のためのロボット活用が増えてきましたが、今回はテナント様にご利用いただける「デリバリーロボット」の導入を予定しています。施設外のフードデリバリーのほか、施設内の飲食店のテイクアウト品を、ロボットが執務室まで運びます。
直接デリバリー品を受け取らないで済む、というコロナ感染症対策になっているだけでなく、高層階のテナント様がわざわざ受付まで降りてこなくても昼食を購入できる、というコロナ後の社会でも便利に使っていただけることを期待しています。

━━ 新型コロナが日本で広がったのは2020年。かなり急ピッチの対応だったのでは?
依田さん:2018年の着工だったので、新型コロナ感染対策はその後から始まりました。いち早く世の中のニーズを汲み取り、最先端技術を取り入れることで実現できた取り組みです。
グリーン電力を活用。テナントの気候変動対策ニーズに応える
━━ 脱炭素社会にむけた取り組みも近年急務です。
依田さん:本プロジェクトでは、グリーン電力の提供サービスの導入を予定しています。本サービスを利用されるテナント様の使用電力は、国際基準である「RE100」に適合したグリーン電力となります。また本サービスは、当社が保有・開発した全国5ヶ所の太陽光発電所の環境価値を、使用電力に付加することで実現する初の事例となります。
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━━ テナント企業からのニーズはあるのでしょうか?
依田さん:当社は昨年11月に「グループ行動計画」を策定し脱炭素社会の実現を目指していますが、テナント企業様からもCO2削減ができるオフィスのニーズは高まっていると感じます。実際に、昨年4月より本サービス提供を開始しましたが現在およそ100社の企業に活用・検討いただいている状況です。このグリーン電力の取り組みは、東京ミッドタウン八重洲だけでなく、当社が保有する全施設での導入を予定しています。東京ミッドタウン日比谷など首都圏で先行して実施し、2030年度までには国内全施設へ対象施設を拡大していく予定です。
「チャレンジ精神と推進力」三井不動産の総力の結集

━━ 壮大なプロジェクトを実現できた理由は?
依田さん:当社は、日本初の超高層ビルである「霞ヶ関ビル」や、日本初の郊外型ショッピングモールである「三井ショッピングパークららぽーとTOKYO-BAY」の開発に見られるように、常に新しいことにチャレンジをしてきました。
また、今回の新型コロナ対策や脱炭素社会に向けた取り組みのように、世の中のニーズをいち早く汲み取り、実行する推進力も当社の強みです。
そんな三井不動産の総力を結集したのが東京ミッドタウン八重洲です。竣工間近ですが、今からでももっと良いものにしたいと思っています。開業後、ぜひみなさまに魅力を体感していただきたいです。
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◇◇◇
東京ミッドタウン八重洲から見えた、新しい時代の街
多様な施設や人が集まり、街の新しい価値と魅力を生んできた「東京ミッドタウン」。
八重洲はさらに、タッチレスオフィス、グリーン電力活用など、新しい時代の街づくりが垣間見える事例だった。
さらに、東京ミッドタウンは「経年優化」を掲げ、開業後も街の価値や魅力を高めていくことを目指している。八重洲から、新たな価値が持続的に生まれ、「新しい時代の街」がつくられていくのだろう。
次回は、「新しい時代の働き方」について、東京ミッドタウン八重洲にも活用されている三井不動産の「COLORFUL WORK PROJECT」から考える。