三菱マテリアルが第2次大戦中の強制労働問題でアメリカに謝罪し、中国にも謝罪と補償をしながら、韓国だけを除外して韓国民の怒りを買っている。なぜ日本は韓国だけを排除するのだろうか?
日本の立場から見ると、韓国は植民地だったが、中国は交戦国であり、しかも中国は1972年の国交正常化当時、日本への賠償請求権を自ら放棄したため、中国には謝罪と補償の余地があると考える。
しかし、韓国には1965年の日韓請求権協定で、無償資金3億ドルを提供して、強制徴用を含むすべての補償問題を解決したという立場だ。
これに対し韓国政府は、日韓国交正常化会談の文書を2005年8月26日に公開した際、官民共同委員会が発表した報道資料で、日本軍の慰安婦問題は「反人道的な不法行為であり、請求権協定で解決されたとみることができない日本政府の法的責任が残る」とした。一方、徴用工問題については、無償資金3億ドルの「強制動員の被害補償問題を解決する性格の資金が包括的に勘案されているとみるべきだ」とした。
慰安婦問題は未解決だと主張する一方、徴用工問題については、請求権協定で解決されたとの立場を明確にした。であれば、徴用被害者への補償は、日本から請求権の資金を受け取った韓国政府がするべきだ。
韓国政府は、「対日民間請求権補償に関する法律」を制定し、1975年7月から2年間に、徴用され死亡した9546件について、28億6000万ウォン、預金などの財産66億4000万ウォンなど、総額95億ウォンを支払った。
しかし、これは無償資金3億ドルの5.4%に過ぎない不十分な規模であり、2008年から死亡者と行方不明者の遺族に2000万ウォン、負傷者に300万ウォンから最高2000万ウォンの慰労金などを支給する補償措置を追加実施した。
残念なのは、韓国政府の2回にわたる国内補償にもかかわらず、徴用被害者が十分に納得していなかったことだ。結局、被害者らは三菱重工業など日本企業の韓国事務所を相手に損害賠償請求訴訟を起こし、2012年5月、大法院(最高裁判所)は、原告勝訴の判決を下した。
日本の植民地支配が最初から不法であり無効だったという韓国憲法の精神に照らし、最高裁の判決は尊重されるべきだ。しかし、日本が判決を不服として損害賠償を拒否すると、日本企業が韓国内に所有する財産の強制執行が不可避となり、深刻な外交問題に発展する。日本が国際司法裁判所に提訴したり、仲裁委員会に回付したりするなどの手段を取ることも考えられる。
このような事態を防ぐために、韓国政府がすべきことは、まず請求権協定について従来の立場を再確認することだ。2005年の官民共同委員会の発表との整合性を維持するため、慰安婦問題は、日本に対し徹底的に責任の所在を追及するが、徴用被害者の補償は日本に要求するのではなく、あくまでも韓国が国内的に解決するという立場を明確にしなければならない。
韓国政府が世論の反発を意識し、徴用工問題について曖昧な態度を示せば示すほど、日本は「請求権協定で解決ずみ」との国際法的な側面にさらにこだわるだろう。最近、ユネスコの世界文化遺産登録で「強制労働」の用語をめぐって、日韓間で摩擦をもたらしたことも、三菱マテリアルが謝罪と補償で徹底的に韓国を除外するのも、すべて同じ文脈でなされていることだ。
いくら不満な部分があろうと、請求権協定は韓国政府が正式に締結した条約だ。したがって、韓国で政権が替わっても、これを継承する義務がある。日本の「安倍談話」に対し、村山談話など過去の政権が表明した公式見解をそのまま継承すべきだと堂々と要求するためにも、韓国政府は、請求権協定について従来の立場を守っていかなければならない。
日本に対し、過去の歴史を問題視するのは、植民地支配で踏みにじられた民族的自尊心を取り戻すためだ。しかし、韓国が過去に約束したことと、すでに明らかにした立場を守らなければ、国家の自尊心を自ら貶めることになる。
この記事はハフポスト韓国版に掲載されたものを翻訳しました。