8期連続で過去最高の売上高を更新。連結経常利益は318億円に(*1)。ミスミグループの躍進が続く。なぜ、ここまでの成長を続けているのか。何が革新的なのか。そして、そこで得られるキャリアとは。30歳という若さでマーチャンダイザー部門(*2) のリーダーを担う高橋光生さんにお話を伺った。
日本発ビジネスモデル、世界で「ミスミ」が注目されるワケ
ものづくり、その部品調達プロセスにイノベーションを起こした――
こう称される日本の成長企業がある。それがミスミグループ(以下、ミスミ)だ。事業内容としては「機械部品におけるEC・カタログ販売」と一見しただけではわかりづらいが、革新的なビジネスモデルが注目される。その3つのポイントをご紹介したい。
・部品の標準化(EC/カタログ発注)
過去、機械部品の業界は特注対応・受注生産が基本だった。そのような中、「標準化」を実現したのがミスミだ。顧客が型番・寸法の指定をすれば、ほしい部品をすぐ注文できる仕組みを構築。製造業界において長らく課題となっていた機械部品の調達における「非効率」「高コスト」「長納期」を解決した。
・ラインナップ
取り扱う機械部品のラインナップ数も圧倒的。サイズ違いを含めると800垓(1兆の800億倍)ものバリエーションを誇り、「精密部品の受発注プラットフォーム」としての地位を確かなものにしている。競合がつけ入る隙はほとんどないといっていいだろう。
・発送スピード
もう一つ、注文された部品が顧客の手元に届くまでのスピードも驚異的だ。これまで数週間~数ヶ月間かかっていた部品調達を、発注当日~3日以内に出荷する。10年以上の歳月をかけて部品製造メーカーを開拓しながら、加工・出荷体制を構築。営業拠点、配送センター、生産拠点、この3者で連携を強化してきた。
このようにものづくり・製造業界に計り知れないインパクトをもたらす同社。日本発のビジネスモデルは、グローバルでも注目される。
組織に根付くベンチャースピリット
「部品を製造する企業」、そして「部品がすぐにほしい企業」。その両方にとってメリットの大きい独自のビジネスモデルは、なぜ生み出されたのか。
そこには同社ならではの組織体制・カルチャーも無関係ではない。
「大手企業のイメージを持たれるかもしれませんが、ベンチャースピリットに溢れた会社だと思います」
こう語ってくれたのが、高橋光生さん(30)。現在、空圧関連部品をメインとする流通・マーチャンダイザー部門のリーダーとして働く人物だ。
「ミスミが面白いのは、業界や顧客規模ごとではなく、商品ごとに担当者がつくということ。一人の担当者が商品の企画・開発から販売計画の立案、カタログ・ECサイト上でのマーケティングまで一貫して担当します。小規模なメーカー経営を任される感覚に近いですね」
高橋さんが同社に惹かれたのも、この「一気通貫」の体制だ。彼の転職ストーリーから、ミスミで働くことで得られるキャリアについて見ていこう。
ミスミで「事業運営のいろは」を学ぶ
「機械部品や工場間接資材は、EC化がまだまだ進んでいない分野といえます。だからこそ、拡大の余地も大きい。それも会社が飛躍的に成長を続けている所以だと思います」
このように語ってくれた高橋さん。じつは前職時代、組織・ITコンサルティング会社で、コンサルタントとして働いてきたキャリアの持ち主だ。
なぜ、彼は「ミスミ」を選択したのだろう。
「まず事業会社であったこと。そして会社を伸ばすために、どう利益を上げるか、自ら考え、意思決定できること。ここがポイントでした」
コンサルタント時代に、制度設計やシステム導入を提案する立場だった高橋さん。そこにあったのは「現場で実行する側として働きたい」という思いだ。
「自分が現場の当事者として、事業に入り込んでいきたい。そう考えるようになっていきました。ミスミでは担当商品の売上・利益をどう作るか考えるのも、マーチャンダイザーの役目。そのために国内外メーカーの開拓や取引交渉もしますし、新商品や新サービスの企画・開発を行い、プロモーション企画も担います。だからこそ、現場で働きながら、事業家としての視点が磨けると考えました」
バリューチェーンの一部でなく、全体を見て、経験できる。これは他では得難い経験。商品ごとに現場で意思決定ができる、ミスミならではの環境がそこにはある。
「グローバルなビジネスで、いつか社会に貢献したい」
小学生から中学生までの一時期、インドネシアで過ごした経験を持つ高橋さん。ミスミを選んだ、もうひとつの理由に「グローバルな環境で働きたい」という思いもあったそうだ。
「ミスミが強化しているのも、アジア、米州、欧州を中心としたグローバル展開です。じつは今年、海外現地法人から声がかかったのですが、国内で新たなミッションに携わらせていただくことになって。確かに、まだまだ国内でやりたいこともあるんですよね」
その中でも、現在、大きなやりがいだと感じているのがマネジメント。
「現在、チームマネジメントを任されているので、後輩を育て、組織としてパフォーマンスをあげることに大きなやりがいを感じていますね。自分がそうであったように、20代の若いメンバーに成長の機会を作っていきたい」
当然、将来的には彼自身、海外赴任の可能性もある。扱う商品群が変わることもあるかもしれない。多様なキャリアの選択肢がある、これもグローバル展開を強化する成長企業ならでは。
そして取材の終盤には、彼がこれからどこへ向かっていきたいか。何のために働きたいか。仕事観について伺うことができた。
「グローバルで経験を積み、いつか社会の役に立つようなビジネスを自分でもやってみたいと考えています。もともとインドネシアで暮らしていた経験があり、先進国と発展途上国、都市部と地方における貧富の差を目の当たりにしました。自分にも何かできることがあるのではないか、と」
コンサルタント時代、第三者として意見・提案するだけのポジションにもどかしさを感じていた高橋さん。「事業をつくる側」としての彼の挑戦はこれからも続く。
「夢や志を実現していきたい。そのための術を手に入れていく。これが私にとっての仕事なのかもしれません」