ミネソタでの抗議運動への抑圧について

全米では、警察が市民を殺したにもかかわらず、大陪審で不起訴の決定が下されてから、定期的に各都市で抗議デモが続いている。
Dan Nelson

ミネソタにあるアメリカ国内最大のショッピングモールのモール・オブ・アメリカで12月20日に行われた今回の一連の人種差別に対する抗議デモ(#blacklivesmatter)の主催者に、市警察および、モールオブアメリカから脅しのような手紙が届き、主催者やその家族に対し、家宅捜索が行なわれた。モール側はどんな形であれ、抗議運動はモール内で許可しないとしていたが、今までこのモールでは糖尿病、乳がんへの啓発の運動などが数々行われてきたのに、差別廃絶を警鐘する運動は許可しないということだろうか。

抗議グループ側はモールでの抗議は広場で歌を歌ったりするような行為のみで、他の買い物客に対して抗議行動に参加するように力ずくで行動をするわけではないのに、なぜこのように脅しのような行為をするのかを問い合わせているが、モール側はモール内での抗議運動は許可したことがなく、モール外の離れた駐車場での抗議行動を促している。

全米では、警察が市民を殺したにもかかわらず、大陪審で不起訴の決定が下されてから、定期的に各都市で抗議デモが続いている。この動きはとどまるどころか、もっと規模を拡大して行われている。ミネソタのグループは2週間ほど前にも他のアメリカの大都市がやったように、抗議デモを高速道路で行い、道路を一部閉鎖にするなどして、抗議運動を他の大都市の規模ではないが行っている。道路封鎖などは、他の市民の生活を侵害するので反対だという意見もあるが、道路の一部封鎖が市民の生活を侵害するというのであれば、構造的な差別を受ける人々(今回の焦点はアフリカンアメリカン)は警察や法律で毎日不当に扱われていることで、生活を毎日侵害されているといえるだろう。このような抗議行動から起こる「不便利さ」を一般の人が感じることで、生活を侵害されるという経験をなかなか感じない人々が、その経験をするいい機会であるという信条でこのような行動はなされている。

また先日俳優のサミュエル・ジャクソンさんが、ALSアイスバケットチャレンジが広く世界中で浸透したにもかかわらず、今回の人種差別に関するチャレンジがアメリカ国内でも広まっていないことに疑問を投げかけ、ソーシャルメディアでアイスバケットチャレンジをした人たちに対して、"we ain't gonna stop til people are free"(すべての人が自由になるまで、私たちはやめない)という歌を抗議運動のひとつの方法として歌い、それをソーシャルメディアで共有することを提案したが、アイスバケットチャレンジのように広まってはいない。

抗議運動はアメリカ内だけでなく、シリア、パレスチナなどの紛争地帯にも広まり(ちなみに東京でもこの抗議運動はあった)、警察が催涙弾を投げた際に、どうしたらいいかなどの情報をパレスチナ人の抗議運動サポーターたちがアメリカ人の参加者に伝えるなどの情報交換も行われている。肌の色で差別される経験をもつのはアメリカ人だけじゃない、と情報を共有し、世界から共感することで、アメリカ人も自分たちがサポートを受けて安心するだけでなく、また、アメリカ国内の人種差別のみならず、国境を越えた人種差別、または構造的な差別に気がつく機会になればいいと感じる。サミュエルジャクソンさんの歌の歌詞はそのとおり。なぜならすべての人が自由になるまで、私たちはやめてはならないから。

日本からもこのミネソタでの動きに注目してほしいと願うのみである。

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