先日、和歌山市のNPO法人「エルシティオ」理事長である
金城清弘さんのお話を伺いました。
金城さんは小学校の校長を定年退職れた後、
ひきこもりの若者と20年近く向き合ってこられました。
内閣府の統計によると、現在全国で70万人以上がひきこもっているそうです。
しかもその2割が40歳以上で、「中年ひきこもり」も問題になっています。
なぜ彼らはひきこもるのでしょうか。
それは自分を守るためだそうです。
心が傷つきそうになった自分を守るために、
全ての人間関係をシャットアウトしてしまうというのです。
子供がひきこもると、親は「何とかしたい」と思い
無理やり家から連れ出そうとしたり、支援者と一緒になって
いろいろと企んだり仕組んだりします。
しかし、そういう行動はひきこもっている人の心の傷に気づいていない事で、
彼らからすれば
「とにかく動かそうという意図が見え見え」
だというのです。
そうではなく、
「自分の何がしんどいのか、どうしんどいのか、
人との関係や家族との問題などを一緒に考えてくれたらかなり楽になれる」
と言います。
ひきこもりの人を家族が支援する時に大事なことは2つ、
- 本人の状態を否定せず、全てを受け入れることを前提にして話を聴くこと
- 自分のしんどさも悪者にせずに受け入れることです。
家族がすべてを受け入れる覚悟でしっかりと話を聴くと、
本人は安心感の中で生きられるようになり、徐々に自信を回復していきます。
そうして少しずつ、自分で考え、自分で選ぶようになり、
徐々に「やりたいこと」が分かるようになっていくというのです。
実際、金城さんが支援している方の中には、16歳から20年近くひきこもり、
36歳から定時制に通い始め、今43歳で大学に通われている方もいるようです。
家族はマラソンの伴走者のようなつもりで、
息の長い支援をしていく覚悟が必要です。
しっかりと本人の気持ちを受け止めることで、
彼らは主体性が確立されていき、道が切り開かれていきます。
そうは言っても、劇的に回復することはありません。
長年ひきこもっていた子供がアルバイトを始めるようになったら、
意地でも続けてほしいと思ってしまうのが親心ですが、
「アルバイトは辞めるためにある」と金城さんは言います。
常に子供の心の声を聴き、息の長い支援が必要です。
いつか、「あんなときもあったよね」と笑い合える日が来ることを祈っています。
(2017年02月02日「ボトルボイス」より転載)