「サステナブル」という言葉が、暮らしの中でも随分と身近になった。
環境、経済、教育、福祉など、持続可能な仕組みづくりを目指して、企業や自治体、政策においても多様な取り組みが進んでいる。
しかし、SDGsの達成期限である2030年が迫りつつある今、社会課題をもう一歩「自分ごと」として捉えて向き合っていくためには、どうしたら良いだろうか。
そんな疑問が社会を渦巻くなか、三菱電機グループでは「ワクワク」をキーワードにした「サステナアクションプロジェクト」が発足。新たな持続可能性の形に挑戦するという。
9月、同社が「共創の場」として展開するMEToA Ginzaで開催された発足発表会に足を運び、目指す未来を聞いた。
10代、20代、そして...。サステナブルに興味がある年代は?
METoA Ginzaは、三菱電機グループが生活者と共に社会課題とその解決策を学び、考え、未来を創る「共創の場」だ。
三菱電機グループの、社会課題の解決につながる最新技術を体験できるイベントや、生活者と対話するMeet-upに加え、銀座のクリーンアップ活動などのイベントも積極的に実施している。
そういった活動の中で生まれた「さまざまな対話から生まれるワクワクを拡げることが、サステナブルな未来の実現へ繋がるのでは」という思いが、「サステナアクションプロジェクト」の発足につながったという。
そこで「ワクワク」が持つ可能性をひもとくために、同社では全国の生活者意識の調査を実施した。
15歳以上の男女1363人を対象に行った同調査で、まず見えてきたのは、サステナブルに関連する特定の言葉への「認知度」と「理解度」のギャップだ。
サステナブルに関連する言葉として、最も多く回答されたのがSDGs。その認知度は81.3%だが、理解度は53.3%と大きく差が開いた。また、カーボンニュートラル(45.3%・20.5%)や再生可能エネルギー(61.9%・38.4%)においても認知度と理解度の差が大きく開いた。
フードロスやジェンダーにおいてはその差が比較的小さいことを加味すると、分野ごとに理解度の偏りがあることが窺える。
また「将来の地球環境に不安を感じますか?」という質問には約8割が「感じる」「非常に感じる」と回答。不安を感じる理由として「異常気象」「地球温暖化」が7割近い回答を占める結果となった。
では、実際にサステナブルな社会の実現に興味がある人は、どれくらいいるのだろうか。
調査では「サステナブル(持続可能)な社会の実現に興味がありますか?」という質問に対して「興味がある」と回答した人の割合は4割弱に留まった。 一方で「どちらでもない」は39.6%、「あまりない・まったくない」は23.9%という結果になり、約6割の人が「興味がある」とは言い切れない現状があるようだ。
また、回答を年代別に見てみると、10代と20代に次いで、70歳以上の多く(38.1%)がサステナブルな社会の実現に興味があることが分かった。また関心が最も低いのは50代という結果になった。
サステナブルな社会の実現に興味がある人の割合について大きな課題を残す一方で、サステナブルな社会の実現に向けて行動している人の割合は、全体の9割に上った。
その内訳のトップ3は、エコバッグ(74.5%)、ゴミの分別・削減(65.4%)、節電・節水(53.9%) と日常で取り組みやすい行動が占めている。サステナブルに特別な興味はなくても、節約や居住する地域のルールの観点から、何気なくアクションをしている人が多いようだ。今後、もう一歩深い行動にアクションを拡大するステージに来ているのかもしれない。
サステナブルを体験し、仲間とつながり、何よりも楽しむ
調査の結果を受けて、個人がより軽やかなフットワークでアクションに取り組める社会づくりのために、METoA Ginzaは具体的にどんな挑戦をしていくのだろうか。
現在「サステナアクションプロジェクト」では、ひとつの企業だけでは生み出せない新しい体験・交流からワクワクの連鎖を起こすために、銀座ミツバチプロジェクト・松屋銀座とパートナーとして連携している。
トークセッションでは、三菱電機 宣伝部 METoA コミュニケーショングループの森岡玲永子さん、松屋 顧客戦略部の片岸茉紀さん、銀座ミツバチプロジェクト副理事長の田中淳夫さんが登壇。エシカルコーディネーターのエバンズ亜莉沙さんもリモートで参加し、共にサステナブルの未来を考えた。
松屋銀座では、持続可能な社会へ向けた暮らしを提案する「BEAUTIFUL MIND 毎日ひとつ私と誰かにいいことを」を実施している。
同社の片岸さんも、まずアクションを体験してみることが大切だと語り、イベントを通して多くの生活者に、楽しく学びや気づきに繋げてもらいたいとコメントした。
「松屋銀座では60年以上、日本で伝統あるモノ作りをしている地域や作り手を発掘し、その伝統技術を活かした展示をしています。さらにSDGs を体現していくために、一度使用したインスタレーションを、賛同する企業にお貸しする取り組みをしています。展示物の廃棄ロスの低減というメリットに加え、他の企業へとバトンを繋ぐことによって、銀座の松屋だけではなく全国の伝統のあるモノ作りへの貢献に繋がっていくと考えています」
松屋銀座と共に地域のゴミ拾い活動なども行っているエバンズさんは、「サステナブルという言葉が独り歩きしてトレンドで終わってしまうのでは」という懸念があると胸中を語ったうえで、サステナブルなアクションを継続していくためには大きく3つのポイントがあると説明した。
1つ目は「今あるモノを大事にする」ということ。そして2つ目は「人と繋がる」こと。そして最後に「自分の興味を入口に」することだ。
「サステナブルをあまり難しく考えずに、 気軽に楽しく取り組んでほしいと思います。仲間がいればイベントにも気軽に参加しやすくなりますし、同じ興味を持つ仲間とお互いのアクションについて話し合うことで、自然と知識も増えるし、理解がどんどん進んでいくと思います。また、食事やファッションなど、自分の『好き』や『心地良さ』を探って、気軽にイベントに参加できる環境をつくることもおすすめです」
また、これまでのゴミ拾い活動を振り返り「ゴミの種類も町によって傾向があるんです。例えば銀座ならお酒の缶が多かったりして『これ美味しいんだよね』という雑談をしながらの活動が楽しかったりします(笑)」と会場を和ませた。
銀座ミツバチプロジェクトは、養蜂を通して、銀座エリアの企業や団体と様々な取り組みをしている。
銀座松屋はじめ、多くの企業と蜂蜜商品を開発したり、子供たちへの環境教育にも注力したりする他、なんと銀座の屋上を緑化して蜂蜜作りに成功しているというから驚きだ。
「最近では、株式会社セブン‐イレブン・ジャパンの中央区内の店舗で私たちの商品を置いてもらったり、共にクリーンアップをしたりもしています。ブリューインバー(銀座ブルワリーモンド)さんとは、銀座で採蜜した蜂蜜を作ったビール造りにも挑戦しているところです。環境については、知識から入ると難しいので『美味しい』『楽しい』を入口に広げていきたいと考えています。地方との取り組みも積極的に続けていく予定です」
METoA Ginzaだけじゃない「サステナアクションプロジェクト」
三菱電機の森岡さんは、実装が進むサステナプロジェクトの活動を紹介しつつ、METoA Ginzaは同プロジェクトの出発点にすぎず、そのコンテンツや今まで繋がりをもった全国のパートナーと連携し、活動エリアを全国に広げていきたいと語った。
直近の新たな試みとしては、9月15日(金)に関西大学で「月での暮らしをきっかけに地球上でのサステナブルを考える」というテーマでワークショップを開催した。
「初の試みでしたが、52名の方が参加してくださり、ワークショップ後にはサステナブルを身近に感じた、ワクワクしながら未来について考えるきっかけになったと感想をいただきました」
2030年に迫ったSDGsの目標期限を前に、今まで以上にサステナブルな取り組みや仕組みが求められる現代。「サステナアクションプロジェクト」では、今後も食やファッションなど、多様なワクワクを入り口に持続可能な未来を楽しく模索していく。