年間流通総額、約1140億円を誇るフリマアプリ「メルカリ」が12月12日・15日に新聞折り込みチラシを使った宣伝を実施した。
地域は、北海道と愛知県限定。しかし当日の夜には「メルカリの新聞折り込みチラシ」という単語がTwitterで話題にされているキーワードTOP5に入ったことが東京エリアで確認されるなど、大きなインパクトを与えた。
メルカリはなぜ、ネットやスマホと無縁に見える「折り込みチラシ」という手法を使ったのか。
このキャンペーンを手がけた、The Breakthrough Company GOの三浦崇宏さんが12月13日、ハフポストのネット番組「ハフトーク」に出演し、その裏側を語った。
■フリマアプリがフリマを超えた
いらなくなった日用品や洋服、時には「トイレットペーパーの芯」まで、スマホ一つあれば何でも手軽に売り買いできるのが「メルカリ」だ。
2013年7月にサービスを開始して5年強、今では7500万ダウンロード誇る超巨大アプリになった。
「メルカリは自分たちを『フリマアプリ』と呼んでいるが、それでいいんだっけ?というのが出発点でした」と三浦さんは語る。
環境省によると、2015年のリユース市場において、「フリーマーケット・バザー」という項目における「購入金額」の総計は 約161 億円。
一方、メルカリの連結売上高は2017年7月から2018年6月までの1年間で、約357億円にのぼる。
どの程度のお金が動いているか、という視点で見ると、もはや「フリマアプリ」を名乗るメルカリが現実の「フリマ市場」を超えたという見方もできる状況だ。
こうした状況を踏まえて「今、メルカリが『フリマアプリ』を名乗ると、自ら市場を狭めてしまうことになる」と三浦さん。
「メルカリはフリマアプリからステージを上げて、『日本で一番品揃えが良くてお得な、お買い物のプラットフォーム』を目指さなければならない」という訳だ。
「これからのメルカリの競合は、リアルな百貨店や量販店になるんです」。
そうすれば当然、打つべき手立ては変わる。百貨店や量販店に足を運ぶお客さんにメルカリの存在を知ってもらうには何をすべきか、どう向き合うべきか。
新聞の折り込みチラシという施策は「必然だった」。
■クリエイティブはこうして発揮される
一通り背景を説明し終えた三浦さんは「でも、ここから先が本当の『クリエイティブ』なんです」という。
チラシの中には細かくて、くだらない仕掛けが多くある。
「『徒歩0分』や『24時間営業』など、メルカリの特徴を、いかにも既存のチラシのような言葉遣いで語るんです」。
ツッコミどころのある言葉やアイテムは、思わず写真にとってSNSに投稿したくなるような仕掛けにもなっている。
■実際の効果は?
大きな話題となったメルカリチラシだが、宣伝効果はあったのか。
「もしかして、東京にいるマーケティング界隈の人たちがTwitterで盛り上がっただけだったのでは、という不安もあった」と三浦さんは本音をこぼしたが、結果はどうだったのか。
ハフポスト日本版がメルカリ担当者に取材したところ、「チラシを配布した地域のインストール数は、他の地域と比べて伸びがみられた」といい、新しい顧客の獲得につながったようだ。
■「僕の知ってるメルカリじゃない...」
こうした施策の背景を聞いていた動画メディア「ONE MEDIA」の代表・明石ガクトさんは、「一抹の寂しさを感じていた理由が腑に落ちた」と語った。
「もともと、フリマが大好きな人種」だという明石さんは、メルカリがサービスをはじめた頃からの利用者。「お金に困ると服を売っていた」のだという。今回のチラシキャンペーンについて「盛り上がっていて凄いなという気持ちと、どこか『寂しい』気持ちで眺めていた」。
「でも今、三浦さんの話を聞いて、自分の知っている『フリマのメルカリ』ではなくなったから寂しかったんだと気づいた」。
「身近だった『メルカリ』との別れの気持ちはあるが、このチラシをきっかけにメルカリがさらに大きな市場に飛び込んで、社会を動かして欲しい」とエールを送った。
三浦さんは「2019年もメルカリはどんどん仕掛けるので、明石さんをさらに寂しくさせてしまうかもしれない」と笑顔で応えた。