新型コロナウイルスに感染して入院している患者にとって、病院は不安な場所になりうる。
慣れない環境で、数カ月前まで存在すら知らなかったウイルスと闘わなければならない。その上、感染を避けるために家族や友人と会うことは許されない。
唯一会えるのが医療従事者だが、彼らの多くは頭からつま先まで防護服で覆われていて、表情はほとんど見えない。
カリフォルニア州サンディエゴの「スクリップス・マーシー病院」で働く呼吸療法士のロベルティーノ・ロドリゲスさんは、そのことが気にかかっていた。
そこでロドリゲスさんは、防護服に少し工夫を加えてみることにした。4月4日に投稿したInstagramでこう綴る。
「昨日PPE(個人用の防護服)を身につけて緊急治療室に入るとき、顔が隠れているのを患者さんに申し訳なく感じました」
「患者さんが不安を感じている時には、大きな笑顔が患者さんを安心させるものです」
「だから今日、私は(自分の顔写真を入れた)どデカいラミネートのバッジをPPEにつけて見ました。こうすれば患者さんに私の笑顔が届くでしょうから」
写真には、スーツとネクタイをつけた笑顔のロドリゲスさんがうつっている。ほんの少しの工夫だが、写真を見て患者は「防護服の下には優しい人間がいるんだ」と感じることができるだろう。
笑顔を見せたかった理由を、ロドリゲスさんはハフポストUS版のメールインタビューで次のように説明した。
「患者さんが不安を感じようにするないために、私たち医療従事者は笑顔を見せるようにします。しかし今、医療者たちはマスクをつけなければいけないので、笑顔を見せられないのです」
「笑顔は怯えている患者さんを安心させるのに、とても効果的です。暗く沈んだ気持ちに、いくらかの明るさをもたらしてくれます」
ロドリゲスさんの投稿はこれまでに3万1000以上いいね!されており、多くの人の共感を呼んでいる。
「本当に素敵。ずっと眺めてしまった」「すごくシンプルだけど、こうやって患者に安心してもらおうと考える人はほとんどいないと思う」「これこそ、私たちが今が必要としているヒーローだ」といった多くの励ましや感謝のコメントも寄せられている。
他の医療者たちも、マイ笑顔バッジをつけ始めた
笑顔のバッジは、ロドリゲスさんだけで終わらなかった。
投稿後すぐに、他の看護師や医師たちも自分たちの笑顔の写真を防護服につけ始めたのだ。
ロサンゼルスで働く緊急治療医のペギー・ジーさんは、「ちょうどいい写真もカラープリンターもなかったので、ポラロイドカメラを使いました」とInstagramで説明する。
ジーさんは「写真を見た患者さんから、少しでも違和感を取り除けたら嬉しい」とハフポストUS版に話す。
「患者さんたちは、咳や息切れ、熱などの症状を抱えてやってきます。そして彼らや周りの人たちが思うことは『新型コロナウイルスに感染した?』ということです」
「それがどれぐらい恐ろしいかは、PPEを着用して部屋に入ってくる、看護師たちや呼吸療法士、医師を見れば容易に想像できます」
ジーさんによると、写真は「患者と医療者が人間として繋がりを持つ」のに役立っているという。
ちょっと変わった写真をつけている医療従事者もいる。
ブラジル・サンパウロの小児病棟で働く医師は、子どもたちのために「リトルマーメイド」のアリエルのバッジをつけている。
ロサンゼルスで働く看護師のデレク・デヴォールトさんも、ロドリゲスさんに続いた医療者の一人だ。デヴォールトさんは自分だけでなく同僚も巻き込んで、笑顔の写真をつけた。
「今のところ、患者さんは好意的に受け止めています。たとえ、バッジが混乱や不安をほんの一瞬忘れさせるだけのものであっても、価値があると私は思います」とハフポストUS版に話す。
ロドリゲスさんはこのちょっとしたムーブメントを「笑顔のシェア」と呼ぶ。そして医療者の間でこの動きが広がっていることをとても喜んでいる。
何より嬉しいのは、患者とコミュニケーションを取る方法を見つけられたことだ。ロドリゲスさんはこう話す。
「ちょっとした工夫で誰かから『あなたのことを大切に思っている』と伝えてもらうことは、私たちを幸せにします。医療のプロとして、私たちが医療者になることを選んだのは、他のだれかをケアしたいと思ったからです。このバッジはそれを伝えることができます」
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。