東京電力福島第一原発の処理水を一部メディアが「Fukushima water」と英訳していた問題を巡り、福島県の内堀雅雄知事が12月25日、「風評や差別を助長する恐れのある表現がなされたことは誠に遺憾」と見解を示した。内堀知事がこの問題について言及するのは初めて。
【「Fukushima water」に関する記事は下部の「関連記事」欄から】
「風評や差別を助長する表現がなされた」
内堀知事は25日、記者会見で今年を振り返り、「処理水は多くの人々が様々な思いや葛藤を抱える中、海洋放出が開始され、一部の国・地域では本県産を含む日本産水産物の輸入停止措置が取られるなど、影響は日本全体に及んでいる」と話した。
また、今年を象徴する漢字として「日」をあげ、「処理水は日本全体の問題。政府と東電が全責任をもって最後まで完遂することを訴えていく」と述べた。その上で、処理水を巡る風評被害はほぼ起きていないとし、「全国から応援してもらい、漁業者が安心して笑顔で漁に出られる。ありがとうの思いを全国、世界にお伝えしたい」と感謝を伝えた。
その後の質疑応答で、地元の福島民友新聞の記者が「一部報道機関が処理水を『Fukushima water』と表現した記事についてどんな対応を検討するのか」と質問すると、内堀知事は次のように回答した。
「一部の報道機関から福島に対する風評や差別を助長する恐れのある表現がなされたことは誠に遺憾。国・関係機関と緊密に連携を図り、様々な観点からどういった手法が適切か対応を検討していく」
ハフポストが記事で繰り返し指摘
12月初旬に北海道函館市で起きたイワシ大量死でも、「原因はFukushima waterだ」とする投稿がSNSなどで相次いだほか、英大衆紙デイリー・メールも大量死と処理水を関連づけるような記事を発信し、問題視されていた。
福島県議会12月定例会では、自民党の渡辺康平議員がこの問題を取り上げて県の姿勢を問うたが、県側は「国や東電に対応を求めていく」と煮え切らない回答を繰り返し、議場がざわつく場面もあった。
その翌日に開かれた県議会企画環境委員会で、風評・風化戦略担当理事(原子力損害対策担当理事も兼務)の岸孝志氏が、「(一部メディアの「Fukushima water」という表記は)県民が一丸となって風評払拭へ頑張ってきた努力を踏みにじる行為だ」と言及。
県側がこの問題について具体的な言及をしたのは初めてで、内堀知事がどのような見解を示すのか注目されていた。