SF作家の草分け的な存在として知られる眉村卓さんが11月3日、85歳で亡くなった。時事通信社などが報じた。「ねらわれた学園」「まぼろしのペンフレンド」などの代表作は、映画やTVドラマ化されるなど広く人気を博した。
「新宿鮫」シリーズで知られるハードボイルド作家・大沢在昌さんは駆け出しの頃、眉村さんから、作家が集まるバーでアドバイスを受けた。そのエピソードが「眉村先生の素晴らしいお人柄が偲ばれます」として、ネット上で話題だ。
■「ちょっとだけ先輩のぼくがあなたにアドバイスをさせてください」
このエピソードは、「本とも」2009年4月号(徳間書店)に掲載された対談が初出。現在は大沢さんの公式サイトに転載されている。
大沢さんが眉村さんに初対面したのは、東京・銀座にある作家が集う文壇バー「数寄屋橋」だった。
眉村さんは「これからあなたが売れるようになると、いろんなところがあなたに原稿を頼みに来る。そうすると、原稿を書く優先順位というものがそのとき問題になってくる。ちょっとだけ先輩のぼくがあなたにアドバイスをさせてください」と言った。
そして、お店の紙ナプキンに万年筆で「一、勉強。二、名前。三、義理。四、お金」と書いたという。大沢さんは以下のように振り返っている。
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この順番に仕事を受けなさいと。一番はお金でもない、名前でもない、勉強になる仕事をやりなさい。二番は名前の売れる仕事、三番は義理のある仕事、お金は最後だって言う。すごく印象に残って、大事に持って帰った。 それから十何年後に直木賞をもらって、偶然「数寄屋橋」で会ったときに、「眉村さんにあのときに書いていただいたことを、いまだに覚えてます」って言ったら、そしたら、「じゃ、次からは、一番は義理だね。今までいろいろ自分を支えてくれた人たちに恩返しをするんだよ」って言ってもらって……。