同性婚の実現を求めて複数の同性カップルが国を訴えている裁判で、東京訴訟の第2回口頭弁論が7月8日に東京地裁(田中寛明裁判長)で開かれた。
この裁判で原告側は、同性同士の婚姻を認めていない現在の民法は、憲法24条1項が保障する「婚姻の自由」 を不当に侵害し、「法の下の平等」を定めた憲法14条に反している、と主張している。
この日の口頭弁論で、国側は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」と規定されている憲法24条1項の「『両性』という文言が男女を表すことは明らかだ」と反論。
「憲法は、当事者が同性である場合の婚姻を想定していない」として、同性婚を認めていない現在の民法は、憲法に反しないと主張した。
また「法の下の平等」を定めた憲法14条についても、憲法24条1項の「両性」が男女を表している以上、同性婚の成立は想定されていないから、「同性婚を認める法律がないことは平等原則を定めた憲法14条にも反していない」として請求の棄却を求めた。
■「想定されていない」の一点張り
「想定していない」という主張に対し、原告側の弁護団は「憲法24条1項は同性婚を禁止しているのか、それとも禁止していないのか」国側の立場を説明するよう求めたが、国側は「想定されていないというのは、想定されていないということ」「想定されていないので問題にならない」と、想定していないという回答に終始した。
さらに弁護団は、法務省が2018年に「性的指向は本人の努力で変更することが困難なもの」として、同性愛への迫害を理由に難民認定を行ったことを引き合いに出し、「国は性的指向を変えるのは難しいことを理解する立場にいるのではないか」と尋ねた。
しかし国側は「担当部署が異なるため、この場で私から申し上げることではない」と回答を避けた。
■ 弁護団:この国には個人として尊重される人と、されない人がいる。それでいいのか
弁護団は口頭弁論の後、LGBTQの権利が世界的に認められてきているにも関わらず、国が「想定しない」の一点張りだったことを残念がった。
三浦徹也弁護士は、次のように語った。
「憲法を作った当時は、同性同士の結婚が想定されていなかったかもしれません。しかし今では、それが自然なことだという認識が広がっています。それにもかかわらず、LGBTの人たちのことを憲法は想定していないというのはいかがなものでしょうか」
「憲法13条に幸福追求権というものがあります。人にとって何が幸福なのかというのは、時代によって認識が変わっていくものです」
「同性カップルの方も、異性カップルとなんら変わりがないと明らかになっているのに、憲法24条の認識を改めないような主張は違和感がありました。もっと説明をして欲しかった」
中川重徳弁護士も、2020年にオリンピックを開催する国がLGBTQの人たちを家族として認めない姿勢に、疑問を呈した。
「オリンピック憲章には、性的指向による差別は許されないと書かれていますが、そのオリンピックを来年開催するこの国の政府が、性的少数者の基本的人権は想定外だと言ったのです」
「憲法13条には、すべての国民が個人として尊重されると書かれています。それなのに、この国には個人として尊重される人と、されない人がいる。想定内の人と想定外の人がいるというのです。これでいいのでしょうか」
■ 原告:存在を否定されたかのように聞こえた
東京訴訟の原告5組10人のうち、口頭弁論後の会見には5人が参加した。
「想定していない」という言葉が繰り返されたことに、自分たちの存在を否定されたかのように聞こえたと原告の一人、佐藤郁夫さんは話す。
「あれだけ何度も『想定していない』と言われて、LGBTとかマイノリティの人たちを想定していないという言葉に聞こえてきました」
西川麻実さんも、国から「あなたは家族は作れない」と言われたようでがっかりしたと語った。
「結婚の自由というのは、家族を作ることができる自由だと思うんです。そのことについて、私に家族を作る自由があるのかないのか、それを国に答えて欲しかった。想定されていないということは、家族を作る自由はないのということなのでしょうか」
中川弁護士は、発言が原告やそれ以外の性的マイノリティの人たちをどういう気持ちにさせるか、言葉の重みを知ってほしいと話す。
「国は『想定していません』と言葉遊びのように繰り返しましたが、その言葉で人生を、存在を、尊厳を否定される人がいることをわかってほしい」
同性同士の結婚を求める裁判は、札幌・東京・名古屋・大阪の全国4地裁で進行中だ。
東京訴訟の次回の期日は10月16日。原告らは、社会で排除されていることで性的マイノリティの人たちがどれだけ困っているのか、そして憲法24条1項はどのような解釈が正しいのか、さらに訴えていく予定だ。