「国会、早よせんね!」
法律上の性別が同じふたりが結婚できないのは憲法違反だとして、九州在住の3組の同性カップルが国を提訴していた裁判で、福岡地裁(上田洋幸裁判長)は6月8日、「違憲状態にある」とする判決を言い渡した。
この裁判は、全国5つの地域で30人を超える性的マイノリティが国を提訴しているものの一つ。
これまでに札幌、大阪、東京、名古屋の4つの地裁で言い渡された判決のうち3つが「違憲」と判断。今回の判決で、合計4つの違憲判決が示されたことになる。
何が違憲と判断されたのか
福岡地裁が違憲としたのは「結婚や家族に関する法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に基づいて作らなければならない」と定める憲法24条2項だ。
「もはや個人の尊厳に立脚すべきものとする憲法24条2項に違反する状態にあると言わざるを得ない」とした。
ただし、判決は同時に「不利益を解消するための方法として、婚姻制度以外も考えられる」「不利益を解消するのための検討や調整は国会に委ねざるをえない」「同性カップルの結婚に肯定的な意見が多くなったのは最近」などの理由から、現在の法律が「国会の裁量権の範囲を逸脱したものとして憲法24条2項に反するとまでは認めることができない」とも述べた。
「憲法24条2項に違反する状態にあると言わざるを得ない」と断じながらも、「国会の裁量権の範囲を逸脱したものとして憲法24条2項に反するとまでは認めることができない」とした今回の判決。
原告側の石井謙一弁護士は「わかりづらいものの、法的な家族になるための手段が全くないということが、24条2項に違反するということを明確に認定しているという点で、違憲判決である」と判決後の記者会見で語った。
さらに石井氏は、婚姻制度がもたらす利益を同性カップルが一切得られていないことが「憲法24条2項に反する状態にあり、立法者としてはこの状態を解消する措置に着手すべき」と書かれている点に注目。
「単に違憲状態になると言っただけではなく、立法措置によって解消すべき喫緊の課題だ、というメッセージを伝えているものだ」と述べた。
その一方で、判決では原告が主張していた「個人の尊重と幸福追求権を定めた憲法13条」や「結婚の自由を保障する憲法24条1項」、そして「法の下の平等を定めた憲法14条」の違反は、いずれも認められなかった。
ただし弁護団は、全国5つの裁判のうち4つで違憲判決が出たことには、大きな意味があると強調する。
森あい弁護士は「5つのうち4つが違憲や違憲状態と言っているのはかなり珍しいと思います」「それ自体が立法府への多大なメッセージだと思っており、重く受け止めてほしい」と述べた。
原告らは、この判決をどう受け止めたのか。
原告らは、判決そのものは評価しつつも、さらに踏み込んだ司法判断と、立法府である国会が動くことを強く求めた。
会見に出席した原告のまさひろさんは「憲法24条2項に違反する状態にあると言わざるを得ない、という判決を出して頂けたことには、すごくホッとして安心している」と語った。
全国5カ所での裁判中、4件は違憲ないしは違憲状態という判決となったことを受け、「国会の場で、一刻も早く議論を進めていただきたいというふうに、強く思います」と、司法の判断を受けて国会が積極的に動くことを求めた。
「国会では、いつまでに結論を出すと言うことを決めて、議論していただきたい。私たちの命の問題なので、必ず法制化、私たちが結婚できるようにしてほしい。話を始めてほしいと思います」
まさひろさんパートナーのこうすけさんも、司法による救済と、国会での議論を求めた。
「一刻も早く議論が必要なのかなと思います。その一方で、60代以上の方は同性婚についての意見が拮抗しているという判断もありました。その年代の方々が国会にいらっしゃることもあり、議論が始まらないから、こうやって裁判を起こしました。その裁判所が議論を国会に投げてしまったら、私たちはどこに思いをぶつければいいんでしょうか。今回の違憲判決、大変力強く味方になってくれているなという一方で、もっともっと強くメッセージを送って、国会が議論をしなければいけないとわかるようにしてほしかったなと思っています」
こうぞうさんは「司法に訴えかけなければ変わらないということで司法の判断を仰いでいるんですけれど、まだ時期を照らせば立方裁量を逸脱するものではないということを、言われたのは正直残念だなと思っています。両手をあげて喜べる状態ではないと思いますが、婚姻の平等が実現するまで、諦めるつもりも沈黙するつもりもありませんので、今後も応援していただければと思います」と話した。
こうぞうさんのパートナーのゆうたさんは「一刻も早く法制化して、法律上も家族になれる日が来るように、一人でも多くの人が幸せになる社会を目指して、動いていきたいと思います」と語った。