「法律上同性のカップルが結婚を認められていないのは憲法に違反する」として、LGBTQ当事者らが国を訴えている「結婚の自由をすべての人に」訴訟。
2019年2月に始まった一連の裁判は、これまで全国5つの地裁で判決が言い渡されました。
このうち、札幌、東京、名古屋、福岡の4地裁で、同性カップルが結婚できない現在の状況は「違憲」という判断が示されています。
一連の裁判で争点になっているのは、すべての国民は法の下に平等であると定めている憲法14条1項と、婚姻の自由や夫婦間や家族内での個人の尊厳を謳っている憲法24条1項、2項です。
各地裁はそれぞれ、どんな点で、法律上同性のカップルが結婚できないことを「違憲」もしくは「合憲」と判断したのでしょうか。
◼️札幌地裁(2021年3月17日)
・違憲:憲法14条1項に違反
最初の判決となった札幌地裁は、同性カップルの結婚が認められないのは「法の下の平等を定めた憲法14条1項に反する」という判決を言い渡し、大きな注目を集めました。
この違憲判決のポイントの一つになったのが「結婚がもたらす法的効果」です。
武部知子裁判長は「婚姻制度は多くの法的効果をもたらすが、現在の民法では異性カップルのみが婚姻制度を利用でき、同性カップルは一切使えない。それは、差別を禁じた憲法14条1項に違反する」と判断しました。
◼️大阪地裁(2022年6月20日)
・合憲
2件目となった2022年6月の大阪地裁判決で、土井文美裁判長は憲法14条、24条のいずれの違反も認めず「合憲」としました。
ただし、その中で原告にとって歓迎できる判断もありました。
大阪地裁は、結婚には「社会の中でカップルとして公に認知され、共同生活を営める」という利益があり「それは同性カップルに対しても認められる必要がある」と認定。
「このまま同性カップルに何も保障がない状態が続けば、将来的には憲法24条2項違反になる可能性がある」と示唆しました。
◼️東京地裁(2022年11月30日)
・違憲:憲法24条2項に違反
3件目の東京1次訴訟判決では、札幌に続く違憲判決が言い渡されました。
ただし、札幌地裁と違い、東京では憲法24条2項違反だとしました。
池原桃子裁判長は判決で「同性愛者がパートナーと家族になるための法制度が存在しないことは『重大な脅威、障害』で、個人の尊厳を傷つけるものである」と指摘。
その状態が、憲法24条2項に違反するとしました。
その一方で、判決では「現在の法律が必ずしも憲法24条2項に違反すると断ずることはできない」とも述べています。
東京地裁は「異性カップルの結婚だけを定めている法律が憲法に違反するわけではないけれども、同性やLGBTQのカップルが家族になるための法律が何もない現状は違憲状態である」と判断したことになります。
◼️名古屋地裁(2023年5月30日)
・違憲:憲法14条1項、憲法24条2項に違反
4つ目となった名古屋地裁判決で、西村修裁判長はこれまでよりさらに踏みこんだ、憲法24条2項と憲法14条1項に違反するという判決を言い渡しました。
名古屋地裁は憲法24条2項について「結婚制度は、国がカップルの関係を公に証明して保護するなど、重大な人格的利益を得られるものなのに、同性カップルは一切排除されている」という点などを問題視。
その状況が放置されていることが、「婚姻や家族に関する法律は個人の尊厳に基づいて作らなければいけない」と定めた憲法24条2項と、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反しているという判断を示しました。
◼️福岡地裁(2023年6月8日)
・違憲:憲法24条2項違反
名古屋地裁から約1週間後、福岡地裁は、憲法24条2項に違反するという判決を言い渡しました。
福岡地裁の上田洋幸裁判長が違憲としたのは、現在の法律が、同性カップルに「結婚制度がもたらすさまざまな利益を一切認めていないこと」と「自分の選んだ相手と法的に家族になる手段も与えていないこと」です。
こういった現状が「結婚制度は個人の尊厳に立脚して作られなければいけない」と定めている憲法24条2項に違反するとしました。
大きな意味がある「違憲判決」
「同性婚」とも呼ばれる結婚の平等は、2001年にオランダで初めて認められ、これまでに37の国や地域に広がっています。さらに、これまでの判決では「多数派が認めないという理由で、少数派の人権が認められないということは許されない(札幌地裁)」「同性カップルが結婚制度を使えるようになっても、社会に具体的な不利益が生じるとは想定し難い(名古屋地裁)」といった重要な判断も示されました。
2024年3月14日には、トランスジェンダーやパンセクシュアルの当事者が原告になっている東京2次訴訟、高裁初の判断となる札幌訴訟での高裁判決が言い渡される予定です。
※この記事は新たな判決が出るたびに更新しています