今回の記事は、首都大学東京大学院、博士後期課程に所属する高田百合奈さんによる「ユーザの特性にあわせた地図で道案内」を実現するアプリ「診断地図β」の報告です。お楽しみください!(渡邉英徳)
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こんにちは。首都大学東京大学院 博士課程3年の高田百合奈です。
私は「なぜ人は道に迷うのか」をテーマに、学部4年時より研究を行っております。今回は、長年の研究成果として、ナビゲーションアプリ「診断地図β」をリリースしましたので、紹介したいと思います。
みなさんはよく道に迷いますか?
地図を使っても迷ってしまう。
いつも地図をぐるぐる回して分からなくなる。
北が上じゃないとイライラする。
もしこのように地図への不満がある方は、あなたが本当に使うべき地図が間違っているのかもしれません。
道に迷う原因や解決策は、心理学や都市環境学、情報通信学など多くの分野で研究されています。このような研究成果より、頭の中に描く地図の形が人それぞれで異なり、道に迷いやすい人と迷いにくい人では、空間把握の仕方が違うことが分かりました。
しかし、現在世に出回っているカーナビゲーションシステムや、スマートフォン用地図アプリなどは、ユーザの空間把握能力のことなど関係なく、全員に共通の地図が提示されています。
進行方向が上になるようにしたり、北が上になるようにしたりなど、自分で設定を変えることができるものもありますが、道に迷いやすい人にとっては、どうすれば道に迷いにくい地図になるのかが分からない場合もあるのではないでしょうか。
そこで私は、人が頭の中に描く地図である、認知地図に応じた地図をユーザに提示するナビゲーションシステムの研究を行ってきました。そして今回、これまでの研究成果として、Androidアプリである「診断地図β」をリリースしました。
以降、アプリ「診断地図β」の詳細について少し説明したいと思います。
まず「診断地図β」をインストール後に起動すると、自分自身の方向感覚について尋ねる20問の質問が出てきます。この質問は、1992年に竹内謙彰氏によって作成された方向感覚質問紙簡易版(SDQーS)を利用したものになっています。すべて「5: はい」から「1: いいえ」の5段階で回答できる質問内容になっているので、一番当てはまると思った番号にチェックを入れていきます。最後に一番下のボタンを押すと、自分の現在の空間把握能力の点数と、空間把握の仕方のタイプが結果表示されます。
これらの質問は、東西南北を認知出来ているかに関する質問や、空間を空から俯瞰的に見た形に認識出来ているかに関する質問などに分類することができる内容になっており、私は質問を分類分けし、それぞれの合計得点によって空間把握仕方のタイプを診断する、カテゴライズ手法の開発を行いました。カテゴライズ手法の詳細については、日本バーチャルリアリティ学会論文誌に掲載された論文をご覧ください。
タイプは1〜8まであり、8タイプの中から、自分に適した地図のタイプにカテゴライズされる仕組みになっています。自分の空間把握能力はどれくらいか、どういうタイプなのかが気になる方は、是非チェックだけでも試してみて下さい!
診断が終わったら、早速地図を使うことが出来ます。画面は2画面構成で、広域と詳細な地図が同時に見られる状態になっています。
それではまず試しにルート検索してみます。目的地のセットは、地図の長押しで目的地にピンを立てて、右下の矢印ボタンから設定する方法と、矢印ボタンを直接押して住所の入力で設定する方法があります。
以下に掲載されているのは、首都大学東京の日野キャンパスから最寄り駅である豊田駅までを検索した結果4パターンのスクリーンショットです。タイプによって地図の形が異なっています。つまり「診断地図β」は、ユーザの特性にあわせた地図でナビゲーションしてくれるのです。
タイプによっては移動中にも変化したり、間違った方向に進んでいると教えてくれる機能も付いている場合があるので、是非利用しながら確認してみて下さい!
また今後の発展を見据えて、「診断地図β」にはユーザが迷いに関する情報を投稿できる機能を付けています。
地図には★マークが表示されている場合があるのですが、これはユーザ投稿による「迷った情報」です。(場所やアプリ内の設定によっては非表示になります。)この★マークを利用すると、迷いやすい場所を事前にリサーチし、注意を払うことが出来ます。また迷った情報の投稿は、左下の「?」のフッターボタンから可能です。
どうして道に迷ってしまったかなど、簡単な単文を入力するだけで投稿出来ます。みんなから集まった情報によって、より迷いにくい地図へと成長していくので、もし道に迷った時は、是非道に迷った情報を投稿お願いします!(ユーザに関する情報は一切投稿されませんのでご安心してお使い下さい。)
最後に今後についてですが、集まった迷った情報を元に迷った原因を分析し、地図上での情報の見せ方について探っていきたいと思っています。人ごみで道が分からなくなった、暗くて目印が見つけられなかった、似たような風景ばかりで迷ってしまったなど、考えられる原因は様々です。これらの原因をうまく地図上で見せることが出来れば、より迷い防止に役立つ地図に発展できると考えています。
それでは、たくさんの方々の「診断地図β」アプリの利用と、情報投稿をお待ちしております!アプリのダウンロードは以下のリンクから。(高田百合奈)