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カナダ・ブリティッシュコロンビア州ケロウナに住むカリ・スターさんは6月8日、9歳の娘が参加する、学校の陸上競技大会を観戦していた。
その時に、年配の男性が4年生の女の子たちに向かって「男の子はフィールドから追い出せ」と叫んだのを耳にした。
スターさんの娘は、砲丸投げの決勝に参加するためにフィールドに並んでいた。しかしスターさんは、男性が自分の娘のことを言っているとは思わなかった。
しかし驚いたことに、叫んだ男性は娘を指さしていたという。
スターさんによると、娘は髪を短く切ったばかりで「ゆったりとした男の子用のショートパンツ」を着用していた。
スターさんは「この男性は、娘が女性として生まれたとする『証明書』を見せろとを要求しました」とハフポストUS版に語った。
娘のもう一人の母親であるハイディ・スターさんは「『娘の下着の下の性別の証明書を求めるなんて、あなたに許されることではない』と伝えました」と述べた。
ハイディさんによると、男性は娘と同じように短い髪をしている別の児童を指さして「明らかにトランスだ」と言い放った。
また、男性の妻は周りにいた人たちに向かって「あっちへ行け」と叫び、ハイディさんとカリさんを「子どもを操ろうとする、性器切除者」と呼んだという。
カリさんは「本当にひどかった」と振り返る。
「娘はしっかりと自分を持った人間です」「2人の同性愛者の母がいて、私たちが別れる前は堂々と手をつないでいました。誰かの質問に答えるようなことはなかったし、娘が恐怖を感じることもありませんでした…...しかし、今回の出来事は彼女を激しく動揺させました」
学校によると、この男性は近隣の小学校の生徒の祖父で、孫が大会に参加していた。
今回の出来事は、地元メディア「カスタネット」によって最初に報じられ、SNSで拡散した。
カリさんによると、男性が叫んでいる間に、近くにいた娘は震えて泣き出し、周囲にいた他の保護者らが娘を安心させようとした。
「私は男性に『自分がどんな行動をとっているか、考えてみてください。これは4年生と5年生の小学校の陸上競技大会です。結果を不正操作しようとしている人などいません』と言いました」
また、ハイディさんによると、保護者たちが砲丸投げ用のサークルを別の場所に移動させて、児童を男性から遠ざけた。ただし、男性と妻は去ろうとしなかったという。
カリさんとハイディさんの娘はシスジェンダーで、プライバシー保護のために名前は公表していない。
一方、この男性はカスタネットの取材に「女の子に叫んだり、トランスジェンダーかどうかを尋ねたりはしていない」「ただ男女混合の試合かと聞いただけだ」と主張した。
男性は「自分の質問を謝罪するつもりはありません。私には質問する権利があるし、これからもずっとそうするつもりです」とも述べている。
一方、学区責任者は、今後学校イベントへの男性の参加を禁じるための手続きを始めている、とカスタネットにコメントした。さらに地元警察も13日、事件を捜査していると発表した。
現在、右派によるLGBTQ+当事者への偏見と憎悪が大きな問題になっており、今回の出来事が報じられた後、SNSには男性の行動に対する憤りと懸念が投稿された。
カリさんとハイディさんは、多様性を重視し、すべてのジェンダーやセクシュアリティの子どもたちを歓迎する学区で娘を育ててきたので、今回の出来事は衝撃で悲しかった、と振り返った。
また、ハイディさんは、今回の出来事からヘイトが現実にどんな影響を与えているかを多くの人に知ってほしいと訴える。
「反トランスのメッセージが急激に増えています」「ですが、憎悪に満ちた投稿を見た時には少し考えて……何かコメントしてほしいとお願いしています。私たちはバックラッシュを恐れるあまり、立ち上がるのをやめてしまいました。今回の出来事が、声をあげるきっかけになってほしいと願っています」
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。