中国・アリババの通販プラットフォーム「タオバオ(淘宝)」は、技術力やアイデア性のある商品をオフライン会場に集めた「メーカー・フェスティバル」を開催している。
2020年は杭州市などで開催されるが、コロナ禍もあり、海外からもバーチャル空間で参加可能に。中国最大のプラットフォームでは、何が注目を集めているのか。日本からスマホで参加した率直な感想をリポートする。
■タオバオって?
「タオバオ」は中国IT企業アリババが運営する通販プラットフォーム。アパレルや食品、それに電化製品など、幅広いジャンルで自分のショップを開設できる。
「メーカー・フェスティバル(造物節)」は、こうした出店者のうち、技術力やアイデアに優れたものなどをオフラインの会場に集めるイベントで、2016年から毎年開催されている。
これまではオフラインの“見本市”的な存在だったが、今年は新型コロナウイルスの影響で海外との往来が制限されていることもあり、初めてバーチャル空間を通して参加できるようになった。
■どうぶつの森っぽさ
参加するには、タオバオのスマホアプリから、アバターとなって生活するゲームを起動する必要があるという。
案内に従ってゲームを開いたが、全体的に任天堂のゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」になんとなく似ているのは気のせいだろうか(“あつもり”は中国大陸で販売されていないが人気はある)。
“あつもり”っぽい空間に、メーカーフェスへの入り口となるブースが設置されている。スマホ画面をタップして、自分の分身となるキャラを誘導し入場する。
すると、フェスに出店した事業者の商品が動画付きで次々と紹介される。気になる商品をチェックすると、たとえ購入しなくても、商品を模したアイテムが手に入り、ゲーム内空間に自由に設置できる。
試しに「虫型ドローン」の商品紹介ページを開き、アイテムをゲットしてみた。ゲーム空間の庭に設置してみたが、いよいよ“あつもり”らしさが増してしまった。
アイテムを求めるユーザーに多くの店を訪れるよう促す工夫とみられるが、どこまで効果があるのかは不明だ。
■「人機融合」、そしてペット産業
何かモノを売りたいと思った時に、タオバオなどのオンライン・プラットフォームを活用するのは中国のトレンドの一つだ。もともと通販文化が浸透していることに加え、新型コロナの影響で外出制限が長く続いたことから、これまで通販を利用していなかった層にも広がりを見せたことが背景にある。
出店者の間で今年、潮流となっているテーマの一つは「人機融合」。機械の力で人間の動きをサポートすることなどを指す。
セグウェイを買収した北京の「ナインボット」は、椅子に座ったまま移動できるモビリティを出品。“あなたのファーストクラス”と銘打っている。
また、低空を飛行できる機械も発売されている。映画「アイアンマン」をイメージしたといい、プロモーション動画では、腕に装着されたガジェットから出る空気の力で、男性が約1メートルほど浮き上がり移動している。値段はセール価格で約310万円だ。
別の分野では、ペット用品も盛り上がっている。中国iiMedia Researchによると、ペット関連産業の市場規模は2020年には2953億元(約4兆5000億円)にのぼるとされるなど右肩上がり。特に20代から30代にかけて、ペットを飼う人が増えているという。
ここに目をつけた出店者も多い。差別化のためかアイデア性に富んでいて、猫用の漢服や琵琶の形をした爪とぎ、それにミントのエキスを用いて“猫用の酒”と銘打つものも。
また、アヒルの首からかけるアクセサリーも売られるなど、ニッチな分野をせめる出店者もいた。
バーチャル空間から参加できるのは20日ある期間のうちわずか4日と短く、スマホ越しではお祭り気分を味わいにくいなど課題も多い。一方で、中国でどの分野が注目され、どのようなアイデアが生み出されているかをチェックするにはいいかもしれない。