ファッション通販大手「ZOZO TOWN」を運営するZOZOは、創業者の前澤友作さんが9月12日、代表取締役社長を退任したと発表した。前澤さんはZOZOとの契約関係はなくなったが、「ファウンダー」としてZOZOのイベントには参加するという。
「ZOZO TOWN」を日本を代表する通販サイトに育てあげる一方で、民間月旅行への参加、バスキアの絵のコレクターなど、さまざまな顔を持つ前澤さんの横顔を追った。
■パンクバンドと経営者の二足のわらじ
ドリームゲートのインタビュー記事によると、前澤さんは1975年、千葉県生まれ。早稲田実業高校に在学中の1993年、ハードコア・パンクバンド「Switch Style」を結成。前澤さんはYOU×SUCKの名前でドラマーとして活躍していた。
高校卒業後は大学に進学せず、アメリカに半年間滞在。帰国後の1995年に現在の会社の前身となる有限会社スタート・トゥデイを創業した。この会社で輸入レコード・CDのカタログ通販ビジネスをしながら、バンド活動を続けていたという。
「Switch Style」は1998年のアルバム「METRONOME」でメジャーデビューしたが、2001年にバンド活動を停止。前澤さんは会社経営に専念することになった。2004年に通販サイト「ZOZOTOWN」をスタート。
2018年には着用してスマホで撮影するだけで、全身を採寸できるボディスーツ「ZOZOSUIT」を無償配布したことも話題を集めた。
アメリカの経済誌「フォーブス」が2019年4月に発表した「日本長者番付」によると、前澤さんの資産額は約2220億円と推定されている。日本の富豪の中で22番目だった。
■バスキアの絵を123億円で落札
前澤さんは、日本を代表するアートコレクターとしても知られている。アメリカの競売会社サザビーズがニューヨークで2017年5月に開催したオークションで、前澤さんは画家のジャンミシェル・バスキアの作品を1億1050万ドル(約123億円)で落札した。
ロイター通信によると、バスキア作品として過去最高の落札額だっただけでなく、アメリカ人アーティストとしても最高額となった。美術品オークション史上でも6番目の高額となった。
毎日新聞によると、コレクション歴は約10年。ポップアートの代表的画家、リキテンシュタインの絵画を最初に購入し、自宅等で鑑賞するうち「アートと暮らす感覚」にハマったといい、ピカソと山口長男の絵画を手に入れた。現代美術のほか、安土桃山期の茶道具やモダニズム家具も集めている。
■「ZOZOマリンスタジアム」と名称変更
プロ野球との関わりも深い。スタートトゥデイは千葉市・幕張地区に本社を構えるが、2010年には「地元幕張の活性化をサポートしたい」と、ロッテの本拠地の千葉マリンスタジアムの命名権取得に応募したが、このときは取得できなかった。
2011年には前沢さんが個人として施設改修などを目的とした「千葉マリンスタジアム基金」に1億円を寄付している。
その後、スタートトゥデイは2016年12月から10年間の命名権を31億円で取得し、千葉マリンスタジアムの名称を「ZOZOマリンスタジアム」と変更した。
前澤さんは2018年7月には「プロ野球球団を持ちたいです」と言及していた。
■剛力彩芽さんと交際
前澤さんはプライベートでは、2018年から俳優の剛力彩芽さんと交際していることで知られている。
2018年4月、剛力さんは初めてInstagramで交際を明かした。17歳年上の前澤さんを「まるで子供みたいにピュアな方」と語り、「仕事や会社や仲間を愛し、真っ直ぐで情熱的な姿は、どこか私の父親にも似ているなと感じる」と心境を告白。交際を「温かく見守って」と呼びかけていた。
■2023年に月周回飛行へ
2018年9月には、アメリカの宇宙ベンチャー「スペースX」が2023年に予定している月周回飛行に参加すると発表。民間人としては初の月旅行者となるという。
前澤さんはスペースXのイーロン・マスクCEOとともにロサンゼルスで記者会見をした。
英語で「子どもの頃から月が大好きだった。月を見るだけで想像力が満たされた。この機会を逃すことはできないと考えた」とスピーチ。6〜8人のアーティストを月周回旅行に同行させるプロジェクトも発表した。
プロジェクト名は「#dearMoon」で、2023年に実現を目指す。招待されたアーティストたちには、月と地球を周回飛行して得たインスピレーションをもとに、作品を創作してもらうという。