かさばる部品を宇宙に打ち上げるのではなく、その場で3Dプリントしてしまうことを目指すプロジェクトが、その技術を実証するために、NASAから7370万ドル(79億円強)の契約を獲得した。これまで数年に渡って開発が続けられてきたMade In Space(メイドインスペース)社のArchinaut(建築宇宙飛行士的な意味の造語)は、早ければ2022年には打ち上げが予定されている。
私たちの現在の問題は次のようなものだ。もし60フィート(18m強)の太陽電池アレイを装備した宇宙船が欲しいとするならば、そのアレイを装着するための60フィート長の構造物を用意しなければならない。そのような構造物はリボンのようにくるくる巻き付けておくわけにはいかない。しかし、60フィートの支柱、あるいは2本の30フィートの支柱、なんなら10本に分割した支柱群でも良いが、打ち上げる宇宙船に僅かな格納スペースしかないときに、それらをどのようにしまっておけば良いのだろう?たとえ1方向だけでも大きなものを宇宙に持っていこうとするとすると、問題は急速に複雑なものとなる。
Archinautの解決策はシンプルだ。ただその長い部品のための材料を宇宙に持っていって、その場で3Dプリントしてしまえば良いのではないだろうか?材料をコンパクトに保つ手段として、レンガ状に固めておくやり方以上に効率的なものはない。
当然のことながらこれは、単純な棒や柱のプリントだけにとどまるものではない。ソーラー帆などに使える大きな素材シート、他の部品を装着できる入り組んだ構造物。ひとかたまりのものとして一度に宇宙に打ち上げるには大きすぎるものはたくさん存在している。だがそうしたものはもし必要ならば小さなものから作り上げることができる。以下の写真に示された黒い支柱は、中央の部品から離れた位置に機器を装着するために作られた部品だ:
Made in SpaceはすでにNASAと契約を終え、国際宇宙ステーション(International Space Station)に搭載されている部品の3Dプリントを実証してみせた。同社はまた、宇宙環境とほぼ同等の人工の真空中で部品をプリントできることも示した。
実証の使命を担うArchinaut Oneは、早くとも2022年の初頭以降にRocket Lab Electronの打ち上げロケットに搭載されて宇宙に向かう予定だ。安定軌道に到達したあと、最終的には32フィート(約10m)の長さになる1対の支柱を押し出して成形する。これらの支柱に取り付けられるのは、同時に展開される柔軟な太陽電池アレイの予定で、支柱の堅固な構造にそって取り付けられる。その作業が完成したら、ロボットアームはそれらを所定の位置に固定し、他の管理作業へと移行する。
そうした作業イメージを以下の動画で見ることができる(残念ながら特にエキサイティングではないが)。
完成すると、この長さ32フィートの太陽電池アレイのペアは、理論的には、そのサイズの宇宙船が通常取り込むことのできる電力の、5倍の電力を生成することができる。宇宙船はほとんど例外なく電力不足に悩むシステムなので、より多くの電力を使えたり、軌道上で十分に受光できない場合に備えて電力を保存できることは、もちろん大歓迎されるだろう。
別のプリントでは、ロボットアームが部品を並べ替え、コネクターに差し込んで、まるでコンセプトアートのような複雑な構造を作るようなタスクをこなすこともできる。とはいえ、こうしたすべてのことが実際に行われるのはまだ先の話だ、現在の実証機が焦点を当てているミッションは、最初の支柱と太陽電池アレイに関するものである。もちろんチームはこの作業の中で他のミッションを達成するために必要なさまざまな学びも重ねることだろう。
当然のことながら宇宙空間での製造は、月面およびその周辺でしっかりとした存在感を確立することを計画している国にとっては大きな関心事だ。25万マイル(約40万km)の距離を配送するよりも、必要な場所で製造を行う方が遥かに簡単だからだ。Archinautや宇宙プリンティングに関わるMade In Spaceの他のプロジェクトに関しての情報は、同社のブログで追いかけることができる。
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(翻訳:sako)
(2019年7月14日 Engadge日本版「軌道上で巨大3Dプリント宇宙船部品を製作するArchinautがNASAから79億円強の資金調達」より転載)
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