NTT西日本とマクニカが「自動運転の未来」に向けて協業。自動運転モビリティの開発、デリバリー、運用まで全てサポート

「NTT西日本グループの自動運転バス事業」メディア向け説明会では、自動運転モビリティに関するこれまでの取り組み、現在地とめざす未来について語られた。

自動車の多様化が進む現代。

中でも大きな注目を集めている領域の1つが自動運転だ。自動運転車両や自動運転システムの開発は急速に進んでおり、国土交通省では2025年度に50か所程度、2027年度に100か所以上での自動運転移動サービスの実現を目標に設定している

そういった社会動向を背景に、NTT西日本と、エレクトロニクス・情報通信分野で、半導体やネットワーク関連機器などを企画開発・販売する専門商社「マクニカ」は2023年8月、次世代の地域交通システムの協業に関する提携を締結。2024年8月には、新たに自動運転モビリティを手掛ける「ナヴィアモビリティ」への共同出資に関する契約を締結した。

8月29日、両社は大阪市都島区のNTT西日本のオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE」にて、自動運転の普及をめざすイベント「次世代モビリティDAY 2024」を開催。イベント内の「NTT西日本グループの自動運転バス事業」メディア向け説明会では、自動運転モビリティに関するこれまでの取り組み、現在地とめざす未来について語られた。

システム開発から運用まで、自動運転モビリティを徹底的にサポート

NTT西日本とマクニカが共同出資するナヴィアモビリティが開発した自動運転EVバス
NTT西日本とマクニカが共同出資するナヴィアモビリティが開発した自動運転EVバス
NTT西日本・マクニカ

説明会では、NTT西日本ソリューションズの宮崎一さんが登壇した。

2023年に締結した契約により、マクニカの全面サポートのもと、自動運転EVバスの実証を進めてきたNTT西日本。宮崎さんはこの締結について、自動運転の普及に伴う補助事業の急拡大があると説明。

現在では自動運転に関する取り組みを実施する自治体も増えており、その多くが地域の理解向上や走行中リスクの対処、事業性の確保をはじめとした調査や実証実験などの「ステップ1」ステージにあるという。実証実験では、バスや路面電車のように自動運転車両が街中で稼働しており、運賃は無料。補佐員が乗車している。

今後、NTT西日本とマクニカでは定期運行(ステップ2)、そして最後に無人運行(ステップ3)をめざす。

NTT西日本・マクニカ

2024年8月、新たに発表した共同出資(資本提携)では自動運転モビリティを手掛けるフランスの企業「ナヴィアモビリティ」への出資を決定。マクニカが70.85%、NTT西日本が29.15%の株主となることで同社を支える形となった。

自動運転モビリティを開発する企業が多い中で同社を選んだ背景には、これまでに26カ国で220台の販売実績があること、10年以上の実装経験があることなどが挙げられるという。

今後、同社における自動運転システム開発、デリバリー、運用まで、幅広いバリューチェーンの提携能力を強化する。これにより安定的かつ効率的なサービスの提供をめざす。

自動運転の仕組みと、EVバスでめざす「最適な運用」

そもそも、自動運転モビリティの走行は、どのような仕組みで実現しているのだろうか?

宮崎さんは「3D環境地図を事前に作成し、それをもとに運行計画を設計、走行ルートの安全性をシミュレーションしている」と説明。高度な静的情報の事前インプットが欠かせないと語った。さらにLiDAR(赤外線センサー)とGNSS(衛生による位置情報)により自己位置を推定し、そうした動的情報が重なることで自動走行が実現するという。

NTT西日本・マクニカ

そのような技術を用いて、NTT西日本は「自動運転EVバス導入の統括会社として、府県や市町村、交通事業者や国交省などの多様なステークホルダーをリードし、次世代モビリティ普及の推進に努めている。今年度は西日本エリア11の自治体と自動運転の事業を実施する予定だ。

一口に自動運転EVバスを普及させると言っても、「通学の足がない」「観光の観点から2次アクセスを充実させたい」など、地域や自治体によって課題やニーズは異なるため、ローカライズされた最適な運用をめざすために議論を進めていく必要がある。

また、宮崎さんは文化施設へのアクセスの改善や、より多くの人が医療にアクセスできる環境づくり、移動販売や夜間物流などの小売物流の充実など、潜在課題の解決(新たな価値を創造)にも将来的に自動運転EVバスを活用してほしいと語った。

管理システムも充実。自動運転EVバスに乗ってみた

続いて、マクニカ・イノベーション戦略事業本部スマートモビリティ事業部長の可知剛さんが登壇。今後の自動運転モビリティの運用について「オンロード向け・オフロード向け、人を運ぶモビリティ、ものを運ぶモビリティを広げていきたい」とコメントした。

さらに「本当に地域によって特徴があるので大変なのですが、5年以上の実証実験を重ねてようやく実装されている現場も増えています」と語り、スクリーンには各地で公道を走る車の様子が映し出された(定常運行は6地域)。

こうしたモビリティの運用に欠かせないのが、マクニカが開発・提供している複数の自動運転モビリティを管理したり、エマージェンシーを遠隔で施行するための遠隔モビリティ管理システム「everfleet」だ。本システムでは、モビリティの社内外の情報、交通インフラなどのデータを一元的に可視化することができるいう。

宮崎さんと加地さんの説明を経て、説明会の最後には、実際にナヴィアモビリティの自動運転EVバスに試乗した。

社内に乗り込むとバスガイドのAIが乗客に挨拶と自己紹介をする。その後、行き先が遠隔で操作されるといよいよ走行開始。EVならではの静音運転もすぐに感じられる。AIに車両や走行に関する質問をすることも可能だ。

試乗を終えて、NTT西日本社長の北村亮太さんは「持続可能な地域社会づくりに貢献するために、マクニカ様と共に自動運転における新たな価値想像にチャレンジしていきたいと思います。ぜひご期待ください」とコメント。マクニカ社長の原一将さんは「NTT西日本様と共にやらせていただくことで、地域モビリティの領域が拡張すると、とても期待しています。皆様にも楽しみにしていただければと思います」とコメントし、説明会を締め括った。

NTT西日本社長の北村亮太さん(左)とマクニカ社長の原一将さん(右)
NTT西日本社長の北村亮太さん(左)とマクニカ社長の原一将さん(右)
NTT西日本・マクニカ

今後、さらに身近な存在になっていくことが見込まれる自動運転モビリティ。無人のバスに乗り込んで通勤・通学や買い物に出かける。そんな快適な未来が、すぐそこに迫っているようだ。

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