イギリスで新型コロナウイルスの変異株が広がっていることを受けて、フランス政府は12月20日夜に、イギリスとの国境を封鎖した。
そのためドーバー海峡のイギリス側では、 多くのトラックの運転手たちが、トイレやシャワーが自由に使えない状態で足止めをされている。
ガーディアンによると、22日夜には1500台以上のトラック運転手が車中で動けない状態になった。
南東部の街ケントにあるマンストン空港では滑走路にトラックを駐車する措置が取られ、その数は22日の午前6時には約900台だったが、同日夜までに2200台に増えた。
さらに近くを走る高速道路上では、632台が動けなくなった。
悪化する運転手たちを取り巻く環境
足止めされた運転手の中にはホテルを予約できた人もいるが、何百人もがホテルに泊まれず、車の中で2晩過ごした人もいる。
ドイツ・ハンブルグから来たロナルド・シュローダー氏は、20日夜にドーバーを出て戻る予定だったが、帰れなくなった。
シュローダー氏は、自分はホテルの部屋を確保できたものの、泊まれない人たちもたくさんいるとAP通信に話す。
「私は今はホテルに宿泊できていますが、ホテルの前には部屋がとれなかった多くの人たちが集まっています。彼らは海峡を超えるのを待っています」
「なんだか、島に取り残されたロビンソン・クルーソーのような気分です」
トイレがなく洗濯ができない状態で、運転手たちを取り巻く環境が悪化しているとシュローダー氏は訴える。
「ホテルに泊まれない運転手はとても大変です。3台のバスの運転手がトイレとシャワーと使うために1部屋を借りています。1時間ごとに状況は悪化している」
「今すぐに公共のトイレを作り、運転手に紅茶やコーヒーを配るべきです。足止めされた運転手たちに、救い手を差しのべて欲しい」
イギリスの食卓も直撃
イギリス食品飲料連盟(FDF)最高責任者のイアン・ライト氏によると、国境封鎖で少なくとも4000台のトラックが影響を受けた。
また、ケント州では海岸方面行きが高速道路が封鎖されており、州議会によると足止めされた何千台ものトラックの問題を解消するための作戦が実施されているという。
イギリスでは冬の間、レタスやカリフラワー、ブロッコリー、柑橘類などの生鮮食品を、ヨーロッパ大陸の国からの輸入に頼っている。
そのため、国境封鎖は、イギリスで暮らす人たちの生活にも大きな影響を与える可能性がある。
イギリス小売協会の食料品・持続化担当ディレクター、アンドリュー・オーピー氏は22日、「明日から国境間の行き来を自由にしない限り、野菜や果物のような生鮮食品の到着が間に合わなくなるだろう」とBBCのラジオ番組で危機感を訴えた。
「今問題なのは、荷物を下ろして空になったトラックです。ケントで足止めされているトラックは、スペインなど来た場所に戻りラズベリーやイチゴなどを積んでまた戻ってきます。一刻も早く物流を再開しない限り、崩壊してしまいます」
「問題が今日解消されれば、消費者への影響は最小限ですみます。クリスマスはお店が閉まりますから、1日は時間が稼げます。しかし(正常な状態にするには)ケントに止まっているトラックが数日のうちに戻ってこなければなりません」
BBCによると、イギリス政府とフランス政府は、23日の朝からの国境再開に合意した。
しかし国境を渡るには、72時間以内に新型コロナウイルス検査で陰性と診断される必要がある。
一刻も早く状況を改善するため、イギリス政府は足止めされている運転手たちに、新型コロナウイルス変異株感染の有無を確認できる検査を実施する予定だという。
ハフポストUK版の記事を翻訳・加筆しました。