働きすぎが原因の心臓病や脳卒中で、年間74万5000人以上が死亡していることが、WHO(世界保健機関)とILO(国際労働機関)の調査で明らかになった。
調査は、1970〜2018年に実施された154カ国の2300の調査データなどを元にまとめられた。
それによると、2016年では、週55時間以上の長時間労働環境にさらされていたのは4億8800万人だった。
そのうち、長時間労働が原因の脳卒中や心臓病でなくなったのは74万5194人。2000年に比べて29%増加した。
また、1週間に55時間以上働く人は35〜40時間働いている人に比べて、脳卒中で亡くなるリスクは35%、心臓病で亡くなるリスクは17%高かった。
世界保健機関・環境気候変動保健局長のマリア・ネイラ氏は「1週間に55時間以上働くのは、深刻な健康上の危険になる」と警告している。
長時間労働が原因の死者は男性が多く、全体の72%を占めた。そのほとんどが60〜79歳で、45〜74歳の間に1週間55時間以上働いた人たちだった。
地域別にみると、西大西洋や東南アジア地域が多かった。
新型コロナによる長時間労働にも警告
長時間労働は増えており、現在世界人口の9%を占めるという。
今回の研究は、新型コロナウイルスが拡大した2020年以降は含まれていない。しかしテレワークやギグエコノミー増加など、新型コロナウイルスによる働き方の変化で、仕事時間が増えているとWHOは指摘する。
WHOのテドロス事務局長は声明で「多くの産業でテレワークが一般的になりました。家と職場の境界線が曖昧になってしまうことも珍しくありません。加えて、多くの職が縮小や閉鎖を余儀無くされて経費削減をしなければいけないために、仕事に従事している人は長時間労働をせざるをえなくなっています」と述べる。
長時間労働を避けるためにできることの一つが、労働者を守るための環境整備だ。
WHOは、法律による強制残業の禁止や労働時間の制限、雇用主と労働組合が最長労働時間に同意した上でのフレキシブルな働き方の導入、労働者が労働時間を報告して55時間を越えないようにすることなどを提案している。
テドロス氏は、「脳卒中や心臓病になるだけの価値のある仕事はない」と、長時間労働を防ぐ対策を呼びかけている。