半世紀以上前に家族から引き離され、水族館の水槽で生きてきたシャチが、故郷の海に戻ることになった。
アメリカ・フロリダ州の「マイアミ・シークアリウム」は3月30日、シャチのロリータが、50年以上ぶりに故郷の太平洋に戻ると発表した。
4歳で捕獲され、水族館に連れてこられた
ロリータは1970年にワシントン州シアトルのピュージェット湾で捕獲され、マイアミ・シークアリウムに連れてこられた。
捕獲された当時は4歳と見られており、故郷では先住民のラミ族の人々に「トキ」「トキタイ」という名前で呼ばれていた。
故郷を離れてから半世紀。現在57歳になると考えられているロリータは、飼育されているシャチで世界最高齢だ。
2022年まで、マイアミ・シークアリウムで何十年もショーをしてきたが、AP通信によるとロリータが暮らす水槽は、長さ24メートル、幅11メートル、水深6メートルと、シャチが暮らす水槽としては北アメリカで最も小さい。
今回のロリータの故郷への帰還は、マイアミ・シークアリウムとNPO「トキの友人たち」が契約を結び、慈善家でNFL「インディアナポリス・コルツ」のオーナーであるジム・アーセイ氏が、資金援助をすることで実現した。
マイアミ・シークアリウムを経営する「ドルフィン・カンパニー」のエドゥアルド・アルボアCEOは「動物の福祉を最優先することが、私たちの責任です」とコメントし、帰還に向けた大きな一歩を歓迎した。
ロリータの移動には18~24カ月かかり、費用は2000万ドル(約26億5400万円)にもなると考えられている。
アーセイ氏は、膨大な費用や多くの人員を要するこのプロジェクトについて「ロリータの自由への旅の一員に慣れてワクワクしている」と記者会見で述べた。
90歳を超える母の元へ
ただし、飛行機での輸送に伴う危険や新しい環境が与えるストレス、さらには水族館で感染した病原体を仲間に移してしまう可能性などの懸念も残る。
チームはロリータが新しい環境に順応するまで、24時間見守るという。
シャチは家族で群れを作って暮らす生き物だが、ロリータは仲間とともに捉えられた時に、母親と引き離された。