今、働き方は選ぶ時代になりつつあります。また、子どもの出産などをきっかけに、都会のコンクリートジャングルや早くから始まる受験戦争を避けて、地方のゆったりした自然の中でのびのびと子育てしたいと考えたことのある人も多いのではないでしょうか?
「移住」という言葉の重みや、これまで積み重ねたキャリアや人間関係をリセットして新たな土地で生活を始めるという決断の大きさに、なかなか一歩を踏み出しにくいのも事実です。
2017年8月2日、フリーランス協会が主催するイベント「local next..,(ちょうどいい移住を探そう~定住しない地方との関わり方)」がDIAGONAL RUN TOKYOで開催されました。
フリーランス協会では、場所にとらわれないフリーランスやパラレルワーカーの利点を活かし、自分にとって「ちょうどいい移住」から始めてみることを提案されています。
今回のイベントでは、週末だけプロボノ的に地方と関わりともつ人から、地方に軸足を置いて事業を軌道に載せている人まで、4段階の「地方移住」の形が提示され、各段階のライフスタイルを体現するパネリストから"定住しない"地方との関わり方が提案されました。
この日、招かれた地方移住や2拠点ワーカーとして働く4人のパネリストたちのワークスタイルを、ぜひ参考にして下さい。
【パネリスト】
- 吉田基晴さん(株式会社あわえ 代表取締役社長)
- 津田賀央さん(Route Design合同会社 代表)
- 新井一平さん(株式会社瞬 代表取締役CEO/株式会社BOLBOP/「一平ちゃんカレー」)
- 鈴木彩華さん(「栃木ゆかりのみ」発起人)
「プロボノ的に地方と関わる」鈴木彩華さん 〝低いハードルから最初の一歩〟 地元と自分をゆるやかに結びつける働き方
鈴木彩華さん
私はフルタイムで広告会社で働く一方で、栃木に関わりたいけどきっかけがない、という人たちに気楽に集まってもらえる場をつくろうと「栃木ゆかりのみ」というイベントを主催しています。イベントを通じて、栃木県に関わりたい人たちが、実際に関わるきっかけづくりができたらと思ったのです。
それがNHKでも紹介されたりして、コラボイベントのお話しや、移住促進事業のPR、コミュニティマネージャーの仕事などもいただけるようになりました。
平日はフルタイムで勤務し、それ以外の時間は「栃木」の事を考えています。今後は仕事がないから栃木に帰れないといった問題を解決できるような仕組み作りをやっていきたいと考えています。栃木ゆかりのみは、いわば準備運動という感じでしたが、実は近く仕事を辞めて、栃木県に関する活動に専念する予定です。
最初はただの飲み会をやっていただけでしたが、それがどんどん人とつながり、活動が広がっていきました。最初のきっかけは小さくても、踏み出していくのが大切だと思います。
「暮らしも仕事も自由に構築する」新井一平さん
〝どこへでも! フットワークは軽く〟 フリースタイルの仕事
(左から)鈴木さん、新井さん、津田さん、吉田さん
僕にとって一番困る質問が、「何をしている人ですか」とか「どこに住んでいますか」という問いかけなんですよ。仕事の3割くらいは、東京でWEBコンサルティングをしていて、残りは他の仕事をしたり、趣味のカレー作りをしているんです。だいたい年間約25~30都道府県くらいを回り、愛知では古民家をゲストハウスにする準備をし、静岡では家業の手伝い...... その他、山梨へ気仙沼へ、カレーのイベントで福岡・佐賀へ...... とにかく色々と行っています。
それぞれ、縁があった場所に「住める状況」になっているので、だから「どこに住んでいるか」と聞かれると困るんですよ。
働き方も、毎月、毎週違います。僕の働き方がどれだけ参考になるかはわかりませんが、「好き」という直感だけで動いていて、その自由な働き方もありではないかな、と。移住とか定住とかに全くハードルを感じていません。そうですね、住んでいるところは? と聞かれたら、僕は「日本」と答えますね!
「リンダ・グラットン〝ワークシフト〟の影響を受けて」津田賀央さん
地方に軸足をおきながら、新しい働き方を求めて活動する力
津田賀央さん
僕は横浜出身なんですが、移住を考えた最初のきっかけは単純に山が好きだから、なんです。リンダ・グラットン〝ワークシフト〟を読んで、10年後を考えた時、今の働き方でいいのか? と。よし働き方を変えようと思ったんです。そして長野の富士見町に移住しました。
今、富士見町ではコワーキングスペース「富士見 森のオフィス」の運営をしています。たまたま富士見町がテレワークを推進していたので、これぜひ自分にやらせて欲しいと自らプレゼンしました。そこからグッと話が現実的になり、あっという間に移住という形になりました。森のオフィスは単純に場所を提供するだけでなく、移住支援だったり、仕事作りだったり、地元の人たちとの相談にも乗りながら、実際にそれを仕事にするという事をやっています。
働き方ですが、現在は森のオフィスを拠点に企画の仕事をしつつ、元々働いている東京のメーカー企業へ週3日だけ通っています。セカンドライフとしての移住だけではなく、僕の場合なら富士見町ですが地方の拠点でも仕事をするという「2拠点ワーカー」という働き方で、自然の中で暮らしながら仕事もプライベートも充実させるスタイルを目指しています。
「地方の強みを知り尽くす」吉田基晴さん 戦略的な事業展開とローカルを愛する心が生み続けるアイデアの世界
吉田基晴さん
徳島にある人口7,000人ほどの美波町と東京を行ったり来たりしています。
私の働き方は、マルチワーカーですね。東京では、IT、セキュリティ関係の仕事をやっています。「あわえ」という会社では、地域課題解決を事業としてやっています。自治体などが取引先ですね。
「あわえ」では、古民家のリノベーションや自治体の広報、デュアルスクールといって、ひとりの子どもが複数の学校に通えるという新しいスクール制度を広げていこうというビジネスにも取り組んでいます。また地方で活躍できる人材育成、大学生の地方インターンの企画プロデュースもしています。
タイムマシンビジネスという言葉はご存知でしょうか。先進地で流行った事業がその後日本で流行る、という意味の言葉なのでしょうが、僕はこれを現在の地方と東京に置き換えて考えています。今、地方の過疎地で起こっている事はやがて都会でも起きる。都市集中の過疎化は海外の新興国でも必ず起きるので、今、過疎地の課題を解決すれば、やがてそれは大きなビジネスになりうると考えています。田舎というのは、まったりしに行く所ではなく、私にとっては「ビジネスの宝庫」ですね。皆さんにも、田舎がビジネスチャンスであるということを知ってもらえたらなと思います。
地方移住・仕事を始めたきっかけは?
人工芝に座るスタイルで開催されたアットホームなイベントに80人以上が参加
吉田:東京でベンチャー企業を作りましたが、エンジニアの採用がうまくいきませんでした。企業がひしめく東京で、小さなできたての企業に人材は集まりません。そこで東京の真逆なら「過疎地だろう」と思ったのです。徳島県って光ファイバーがラストワンマイルまで張り巡らされているんですよ。その環境なら仕事が出来ます。オフィスを作り、サーフィンや釣りもたっぷり楽しめるよ、そうしたらウデのあるエンジニアがたくさん来てくれました。地方を元気にしようと思っていったわけではなく、もとは自分の仕事をうまくやるために田舎を選んだのです。そこから事業がどんどん展開していきました。
東京から地方へ、仲間の集め方
鈴木:ひたすら自分から情報を発信しました。まずは自分が楽しみながら、「こんなことをやってるよ」と、活動の報告をしたり、「こんなことができるよ」と自分ができることを紹介したり。また、自分でも栃木に関するイベントには積極的に参加しました。SNSで情報発信をしながらも、実際に人に会って自分がやりたいことを話していったら、自然と仲間が増えていった感じです。
津田:富士見町の森のオフィスは、役場と掛け合い、地域おこし協力隊の制度を使って、スタッフを集めました。ビジョンを共有して、思いが一緒なら、色々な事が出来ます。スタッフというなら3人ですが、森のオフィスの利用者全員が仲間です。地元の人もそうです。
地方で働く不安 出来上がっているコミュニティにどう加わればいいのか
吉田:コミュニティの入り方は遊びが一番かなと思います。例えばサーフィンやっているっていうだけで、年齢も出身も関係なく、すぐに仲間になれますから。
それから田舎の人って、相手をとても観察しています。都会との違いはそこで、「行けたら行く」ではなく「行くといったら行く」。そういう意味で適性と言うのなら「約束を守れる人」「汗をかける人」「動ける人」は田舎に向いていると思います。きちんとやっていれば、ちゃんとコミュニティに入っていけるんです。
家族の反対・説得に効きそうなエピソードは?
吉田:パートナーの説得は、詰まるところは向き合って、きちんと話し合えるかだと思います。田舎にこそ、面白い人がいるんです、だからぜひ、旅行とか、事前に田舎に行くことで「出会い」を体験してもらうといいのではないでしょうか。
地方での仕事の作り方のコツ、起業のネタを知りたい
鈴木:自分が何が出来るのかをどんどんアピールした方がいいと思います。私はFacebookをポートフォリオのようなイメージで使っていて、栃木でのことや本業のことなどバランスを考えて発信しています。そうすることで、自分がどんな人間なのかを知ってもらえて、仕事の種になるような話が舞い込むようになります。
新井:僕は目的ありきで地方に行っているわけではないので、何かのついでにそのまま商店街とかでゆるーく繋がっていく感じです。カレーのイベントも僕がひとりでやるのではなく「一緒に作る」ことで様々な人と出会い、相談にのっているうちにそれが仕事になったりもします。
津田:もともとプランナーなので、企画をやらせて下さい、と入り込んでいきました。企画って言っているだけではダメで、ちゃんと実行する。それを積み重ねていくと実績が出来、ビジネスへと繋がるのではないでしょうか。違う場所と違う場所の情報をミックスして、アイデアにしていく。その力を信じてチャンスを拾っていけば、おのずと仕事になると思います。
吉田:今、地方自治体というのは本当に大変で、高品質な社会サービスを維持しなくてはならないのに、担い手である人員は減少している、だからその「受け皿」となるような仕事はたくさんあります。公募事業に手を挙げてみれば良い。その時はダメでも、次に声がかかるという繋がりも出来ます。アピールしに行くより、コミュニケーションをとるというのを第一にするのが大事だと思います。
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今やテレワーク環境は全国隅々まで行き渡りつつあります。だからこそ、大都市だけに縛られない働き方は、今後もっと増えていくことでしょう。
女性としての生き方・働き方も、地方と大都市、二拠点でのパラレルワークやマルチワークを視野に入れたら、格段に広がっていくかもしれません。
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