過去50年で、地球上の動物が3分の2以上減った――野生生物がかつてない速さで地球上から失われていることを、世界自然保護基金(WWF)とロンドン動物学会が最新レポートで報告しました。
このレポートは、WWFが1998年から2年ごとに発表している「生きている地球レポート」の2020年版で、「生きている地球指数(Living Planet Index:LPI)」と呼ばれる数値を元に、地球上の生物多様性を調べました。
「生きている地球指数(Living Planet Index:LPI)」とは
さまざまな脊椎動物の個体群データを集め、経年の個体数の平均変動率を算出す ることで、生物多様性を計測した数値。地球の生態学的な状態を表す重要な指標となっている。2020年は4,392種の脊椎動物、20,811の個体群を調査した。
その結果、1970〜2016年の間に哺乳類、鳥類、魚類、両生類、は虫類が平均68%減っていることがわかりました。
最も大きく減っていたのはアメリカ大陸の熱帯地域(ラテンアメリカ、カリブ海地域)で94%の減少。アジア大西洋地域も45%減っていました。
動物が急激に減っている理由
生き物たちが著しく減った最も大きな原因の一つとして挙げられているのは、食糧生産のための土地利用の変化です。
その他にも、世界規模の貿易や消費の拡大、人口増加、急激な都市化、そして魚の乱獲や、汚染、沿岸部の開発、気候変動が陸や海に悪影響を及ぼしているということです。
また、人類の現在の生活は、地球上で生産できる量の1.56倍を必要としている、言い換えればこのまま生活を続けるのに地球1.56個分の資源が必要だとも指摘しています。
「産業革命以来、人間は森林や草原、湿地帯、その他の重要な生態系を破壊し続けてきました。そして人間の福祉を脅かしてきました。地球上の凍らない土地の表面の75%が大きく手を加えられ、ほとんどの海は汚染されてきました。そして湿地帯の85%が消失しました」と、レポートは地球が大きく変わった現状を伝えています。
地球のSOSに答えなければいけない
レポートでは、生物多様性が失われることで、食料の安全性が脅かされるなどの問題も生じるとされています。
人間にとっても必要な生物多様性を守るために何ができるのでしょうか?
レポートは、世界中の政府や企業、個人が一刻も早く自然や野生生物の保護に取り組むとともに、私たちの食料生産方法や消費方法を変えることが大切だと訴えています。
WWFイギリス・チーフエグゼクティブのターニャ・スティーラ氏は、「私たち森林を焼き払い、海を汚染し、魚を乱獲して、野生生物が生きる場所を破壊し、自分たちの家である地球を壊しています。そのことが、私たちの健康と生存を危険にさらしています。今、自然は私たちに必死にSOSを送っています。私たちはそれを無視することはできません」と述べます。
WWFインターナショナルのマルコ・ランベルティーニ事務局長も、スティーラ氏同様、SOSを無視してはいけないと語っています。
「新型コロナウイルス感染症ははっきりと、私たちと自然との関係に問題があることを示しています。また、自然と人間の健康・福祉には深いつながりがあるとともに、かつてないほどの生物多様性が失われていることが、どれほど人間と地球にとって脅威であるかを強調しています」
「私たちは今、自然のSOSに応えなければなりません。トラやサイ、クジラ、ミツバチ、木やそのほかの私たちが愛する素晴らしい生物を守るのは、共生のための道徳的な義務であるだけではありません。SOSを無視することは、80億もの人類の健康や福祉、幸福、そして将来を危険にさらします」