日本企業はシニアの「働きたい気持ち」とすれ違っている?最新調査で見えてきたもの

LIFULLは65歳以上(シニア)の働き手300人と、企業の採用担当者300人を対象に「シニアの就業に関する意識調査」を実施。企業がシニア採用をする理由・しない理由とは?

健康寿命が伸び、65歳をすぎても「働きたい」と考える人が増えている現代。

スキルや経験を有する人が多いなか、高齢により体力を懸念する声も聞こえてくる。

社会課題に取り組むLIFULL(ライフル)は「しなきゃ、なんてない。」をメッセージに掲げ、あらゆる人が年齢・性別・国籍などの属性に関係なく活躍するための取り組みの一環として「老卒採用」を開始した。

老卒採用
老卒採用
LIFULL

この取り組みに伴い、同社は65歳以上(シニア)の働き手300人と、企業の採用担当者300人を対象に「シニアの就業に関する意識調査」を実施。調査結果から「シニア採用」の足元をひもといていく。

<調査概要>
実施期間:2024年3月25日〜3月27日
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国の65歳以上の働き手300人と、企業の採用担当者300人

希望通りの職に就いているシニアの割合は?

65歳以上の働き手300人に現在の働き方について聞いたところ、全体の8割(79.3%)が現在希望通りの仕事に就いていると回答した。しかし、質問の対象を「5年以内に仕事探しをした人」に絞ってみると、約3人に1人(29.5%)は希望通りの仕事に就けていないことがわかった。

「あなたは現在、希望通りの仕事に就いていると思いますか?」に対する回答
「あなたは現在、希望通りの仕事に就いていると思いますか?」に対する回答
LIFULL

希望通りの仕事に就けていない理由については、「自身の年齢が高いため(80.6%)、「応募できる企業が少ないから(30.6%)」が主な理由として挙げられた。再雇用ではなく再就職となると、希望通りの職につくことのハードルが高いことが伺える。

また「これまでの経験やスキルを活かすことのできる職種で働きたいと思うか」という質問に対しては、8割以上(83.0%)が「はい」と回答。具体的な自身の活かせる・活かしたいと思う経験・スキルについては「自分の意見を持っている(38.3%)」が最も多く、次いで「若手や後進の教育・指導ができる(31.0%)」、「円熟した顧客対応ができる(29.0%)」の順に票が集った。

シニアが活かせる・活かしたいと思う経験・スキル
シニアが活かせる・活かしたいと思う経験・スキル
LIFULL

シニア採用をする理由・しない理由

続いて、企業の採用担当者300人に採用状況について聞いたところ、8割以上(83.0%)が人手不足であると回答した一方で、現在65歳以上の人材採用を積極的に行っているのは2割(21.0%)にとどまった。

65歳以上の働き手を募集している企業の割合
65歳以上の働き手を募集している企業の割合
ハフポスト日本版

シニア採用を行う理由(複数回答可)としては「人手が不足しているから(56.6%)」が最も多く、働き手不足の補填の意味合いが強いことが伺える。

また、「シニア層の経験・知識が豊富だから」という回答は、シニア採用を積極的に行なっている企業の採用担当者でも2割(20.2%)にとどまった。

65歳以上の人材を採用している理由
65歳以上の人材を採用している理由
LIFULL

一方、65歳以上の人材を採用しない・できない理由についても聞いたところ(複数回答可)、回答は「体力・健康面に不安(42.2%)」が最も多く、次いで「任せられる仕事がない、わからない(34.3%)」「即戦力として活躍が期待できないから(24.5%)」が上位に上がった。

65歳以上の人材を採用しない(できない)理由
65歳以上の人材を採用しない(できない)理由
L IFULL

しかし、シニア人材の採用を行っている企業の採用担当者に「採用した65歳以上の人材が即戦力であったことがあるか」と質問したところ、約7割(67.7%)が「即戦力であったことがある」と回答。

現在シニア人材を採用しない(できない)採用担当者の「即戦力として活躍が期待できない」という声とは裏腹に、シニア採用を行っている企業の採用担当者の多くがシニアの経験やスキルを評価しているようだ。このことから、ある種の「高齢への固定観念」が問題となっていることが伺える。

シニアが職を得られない場合の経済損失は「1兆390億8200万円以上」!?

今回の調査で、シニアに対して「あなたは何歳まで働きたいですか」という質問をしたところ、シニアの回答の中央値が「75歳」という結果になった。

そこで、同社総務省統計局「令和4年 就業構造基本調査」が公表している65歳~74歳の就業希望人口129万4000人と、厚生労働省「令和4年 国民生活基礎調査」で公表している65歳以上の1世帯当たり平均稼働所得80.3万円を照らし合わせて試算したところ、就業を希望するシニアが職を得られない場合の経済損失は「1兆390億8200万円」にのぼったという。

シニア研究者の三嶋浩子さんは、今回の調査結果について「シニアの就労意欲を残念ながら企業は活かし切れていないことが浮き彫りになりました」とコメント。さらに「世界屈指の長寿国となった日本で、働く意欲が旺盛なシニア129万人は社会的資源です。少子高齢化により、生産年齢人口が減り続けるなか、高齢であることを不採用の理由に考慮するスタンスを今後も維持できるでしょうか。働く意欲を持ち、経験やスキルを持つシニアを活かしていくような取り組みが広がっていくことに期待したいです」と見解を述べて締め括った。

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