ゴールデンウィークは、セクシュアル・マイノリティへの理解促進をテーマとする週間、プライド・ウィークでもある。
そのまっただ中の5月3日、東京・新宿御苑で、子育てをするLGBTQカップルと、これから子どもを授かりたいと希望するLGBTQ当事者が集まるイベント、「LGBTQファミリーピクニック」が開かれた。
■ 高まりつつある子育てへの関心
LGBTQファミリーピクニックは、東京レインボープライドが主催するプライド・ウィークの参加イベントだ。企画したのは、子どもを授かりたいLGBTQを支援する団体「こどまっぷ」。
こどまっぷではLGBTQが子どもを持つための方法や法律知識のセミナー、またすでに子育てをしているLGBTQカップルと、希望しているLGBTQとの交流会などのイベントを精力的に開催している。
今回のピクニックもそんな交流会の1つ。新宿御苑でお弁当を広げる家族、そして芝生の上を走り回る子どもたちの姿はまったく自然でとくに目立つものではない。言われなければそれがLGBTQを中心とした集まりだとは気づかないだろう。
このイベントについて、こどまっぷのメンバー、さとこさんはこう話す。
「初めは、個人的にSNSなどで呼びかけて開いていました。こどまっぷの正式なイベントとして開催しはじめたのは4年前です。当初は20人ほどでしたが、今は100人ほどの参加者がいます」
参加者のうち、子育てしているカップルは10組ほど。あとは子育てを考えているLGBTQでレズビアンが多い。しかし、ゲイの参加者も20名ほどいる。ここ数年、子育てについての関心の高まりを感じると、さとこさんは言う。
「若いレズビアンの中には、『ウェディングをしたから、次は子どもだね』と、子育てを当たり前と捉えている人たちもいます。それはいいことだと思いますが、法的な制度をはじめ問題もありますから、逆に注意喚起する必要も感じています」
「ゲイの人たちの参加も増えています。昔より安定志向の人が増えたのでしょうか。相手と長い付き合いを望んでいて、その先には子育ても想定しているというカップルが少なくないですね」
しかし、子育てを希望しているのはカップルだけではない。同じくこどまっぷのケイさんはシングルマザーとして子どもを育てたいと考えているという。
「カップルはどうしても別れる可能性があります。また、どちらかが依存しているような関係になりがちなので、それも避けたくてシングルでの子育てを考えています」
■ それぞれの家族、それぞれのスタイル
ピクニックの参加者たちに、それぞれの家族の話を聞いた。
女性同士のカップルAさんは、パートナーと2人の子どもと参加。子どもたちは男の子と女の子、どちらも1歳8カ月だという。双子ですかと聞くとこんな答えが帰ってきた。
「パートナーと同時期に妊活を始めたら、ふたりとも、同じタイミングで子どもを授かりました。ですから年齢は同じですが、双子ではありません。子どもには、『うちにはお母さんがふたり』ではなく、『それぞれのお母さん』と説明しています」
4歳と3歳の子どもを連れて参加のさちこさんとまいさんの女性カップルも、子どもには事情を話していないそうだ。
「ごく親しい人以外にはカミングアウトしていません。パートナーがうちの親と養子縁組しているので、法的には姉妹ということになります。周囲には姉妹で一緒に住んでいると説明しています」とさちこさんは話す。
■ カミングアウトしたのは"子どもを混乱させないため"
地方からわざわざ飛行機で来たという、くみさんとのっくさんも、女性同士のカップルだ。のっくさんは、アジア系カナダ人。そのため、将来は海外移住を考えていると、くみさんは言う。
「小学生までは日本のほうが環境がいいと思って、今は日本にいます。自分が育った田舎の豊かな環境を子どもにも経験してほしいという気持ちもありますし。中学校からはカナダの方が教育環境がいいので、移住する予定です」
2人はカミングアウトしているというが、地方でレズビアンカップルとして子育てすることに、困難はないのだろうか?
「いろいろな心配はありましたが、家では自信を持って生きろと言いながら、外では黙っていろというのでは、子どもたちが自分自身や家族にプライドを持つことができないと思っています」
「そういう矛盾した状況は子どもを混乱させると考えてカミングアウトすることにしました。学校の先生方にも事前にお話しして、子どものために色々配慮して頂いています」
ゲイの参加者にも話を聞いた。じょーさんとますみさんは交際をはじめて10年ほど。子育てに関心を持ったきっかけについて、じょーさんはこう語る。
「自分はバイセクシュアルで女性と結婚すべきか迷いもありました。でもパートナーと一生一緒にいることを決心したときに、それなら子育てもしたいと思ったんです」
一方ますみさんは、子育てへの思いをこう話す。
「こうして、子育てしている同性カップルと話をしたり、子どもたちと触れ合うことで、同性カップルの子育てにリアリティを感じることが出来ます。自分たちが子どもを持つのは、夢ではないと思えるんです」
ひとことでLGBTQの子育てと言っても、それぞれの事情によってさまざまなスタイルがある。多様な家族が存在し生活をしていることが、LGBTQピクニックから伝わってきた。
(取材・文 宇田川しい@siiudagawa)
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