日本でLGBTが話題になるようになって早数年。
今では毎日のように、テレビや新聞など多くのメディアでLGBTに関する出来事が報道されています。
その中には、地方で小さいながらに活動する団体に関するものもあるものの、その多くは東京から発信された大きなニュースばかりのように感じています。
では、地方では何もしていないのか?
決してそんなことはありません。
しかし、これまで地方で活動する団体同士の結びつきが弱く、各地方で各団体が孤独に活動している現状があります。
私も2016年から愛知県・名古屋市を中心に『名古屋あおぞら部』(Twitter @nagoya_aozora )という若いLGBT当事者を中心とした団体を運営していますが、他地域の団体との連携はほとんど行えていません。
名古屋あおぞら部の活動の様子
(高校生・大学生を中心に、LGBT当事者に限らずALLYやLGBTを知りたい人も大歓迎。月に1度のペースで名古屋市内を中心に活動中。)
そこで私たちは、ゴールデンウィークに開催される東京レインボープライドに合わせて、佐賀県・群馬県、そして私が活動している愛知県、各地域の団体の運営者が集まってイベントを開催することにしました。
イベント名:地方×LGBT×若者
開催日時:5月4日(金・祝)14:00-16:00
今回の記事では、今回のイベントに参加する団体の運営者と、イベントを開催するために私たちを繋いでくださった方のインタビューをお届けします。
佐賀県:茜さん
AO*AQUA〜アオ・アクア〜(Twitter @aoaqua_niji )の主要メンバー。
AO*AQUAは佐賀の団体で、LGBTはもちろん、「誰もが自分色で生きる未来に繋げたい」という想いで様々なイベントやプロジェクトを行っている。2017年・2018年はNPO法人 ReBitと協力し「佐賀LGBT成人式」を開催。佐賀県内の小中学校などで講演・研修会も行う。2015年2月12日設立。
クエスチョニング当事者の立場から、なぜセクシュアリティがクエスチョニングにたどり着いたのかや、セクシュアリティに対して疑問をもったタイミングなどについて考えるブログ「セクシャリティがクエスチョニング」を書いている。
ーいま、団体の活動の様子はいかがでしょうか?
茜「佐賀でLGBTの人が集まる居場所が作りたい!と思って活動しています。
しかし、最近では行政から依頼を受けた講演会や研修事業が多くなって忙しくなり、交流をメインとしたイベントは十分に開催できていません。」
ーなるほど。本来の目的と現状にズレが出て来ている、と。
茜「そうですね。講演会や研修事業も大切なものだとはわかっています。
しかし、元々は自分を含めたLGBT当事者の居場所作りが目的だったので、目的以外の活動ばかりで自分が団体のスタッフをやり続けることへの壁にぶち当たりました。何のために私はLGBTの講演会をしているんだろう、って。」
ー講演会のプロでもないのに講演会などの活動が多くあるなんて、大変ではないですか?
茜「正直、講演会などの活動に少し疲れてしまっています。私たちの団体が佐賀県で唯一のLGBT団体なので、講演会などは私たちがやるしか地元で開催する手段がないんですよね。
でも本当は私自身は、LGBT当事者同士の交流がしたいんです。ただ、その当事者同士の交流をどうやって運営して良いのかわからないので、今回のイベントで他の団体の方の経験を聞いて、たくさん佐賀に持ち帰りたいと思っています。」
群馬県:パパ田さん
セクシュアルマイノリティ支援団体ハレルワ(Twitter @hareruwa_info )代表。
群馬を拠点に、LGBT当事者やアライの20代を中心としたメンバーで活動中。
毎月1回開催する交流会「ハレの輪」はセクシュアリティ・年齢問わず参加でき、一番下は中学生、上は60代と幅広い年代が参加する。県内で講演・研修会、地域イベントでの啓発活動を行う他、YouTubeで毎月1回「ハレラジ」も公開している。
2018年8月11日に「LGBT成人式inぐんま(仮)」開催予定。
2015年6月14日設立。
デザイン、写真、DIY、料理、猫、特撮など多趣味なトランスジェンダーFtM。
埋没にこだわらず、必要あればさらっとカミングアウトするくらいのスタンスをモットーとして生活している。
ー佐賀県と比べて、群馬県は今どんな状況でしょうか?
パパ田「私たちの団体も佐賀県と同じように県内で唯一のLGBT団体なので、行政から依頼される講演会などが増えてきています。講演会の活動が忙しくなることで、本来の目的である当事者の居場所作りが疎かになってしまわないかな?という危惧は大きいです。」
ー依頼が多く来るほど行政から信頼されているのですね!
パパ田「正直、行政からの期待感が大きいというか、行政も勉強中の段階なので、制度の整備としては追いつかず、周知としての講演などにとどまっている事に歯がゆさを感じます。
地元の新聞に取り上げられることも増え、信頼していただけていることはありがたいですが、より当事者の居場所作りという本来の目的が疎かにならないように、と思います。」
ー団体を運営していて、パパ田さん自身がいま抱えている不安はありますか?
パパ田「団体の運営について悩んでいます。自分が仕事を抱えがちなので、他のメンバーの適正を考えつつ、もっと任せてもいいのかな?と。
それと、講演会などで話せるメンバーが少数なので講演の準備などで負担が大きく、新しいメンバーの育成も重要だと感じています。
群馬県は車がないと移動しづらく、免許を持っていないかつ、カミングアウトしていない若者が私たちの団体の活動に参加することはとても難しいです。そのため、中高生からは参加したくても参加できないとの連絡があったこともあります。」
ー若者が参加しづらい、というの切実な課題ですよね。何か今後については考えていらっしゃいますか?
パパ田「中高生がもっと参加しやすいように、駅近くにスペースを借りて固定のコミュニティスペースをいつか作れたらいいな、と思っています。悩んでいる中高生にロールモデルを見せてあげたいんです。
自分自身も学生時代、身近にLGBT当事者の大人がいなくてロールモデルが見つからずにとても不安を抱えていたので、いまの若い子たちにはそんな不安を抱えて欲しくないな、と思っています。」
最後に、今回のイベントを企画した首都圏在住のレロさん(Twitter @rero70 )にお話を伺いました。
ーこのイベントを開催しようと思い立ったきっかけは何だったのでしょうか?
レロ「私は、昨年1年間の間に何故か地方のLGBTコミュニティに行く機会が多くありました。
私が主催したイベントに参加した『りぃな(このブログの筆者)』から、名古屋で若者のLGBT向け団体を運営していると聞いて、名古屋の友達に会うついでに会に顔を出してみました。また、元々共通の趣味を通じて知り合いだった佐賀県の茜さんが、佐賀の団体に入ってLGBTに関する活動を始めたと聞いて興味を持っていました。群馬県のハレルワについては、共通の趣味を通じて知り合った友人が群馬に住んでいて、新聞記事で知って教えてくれたので、群馬まで行ってみました。
このように様々な団体が開催する集まりに参加してみて、各団体でコミュニティの様子がかなり違うことに気づき、私はとても驚きました。そして、この人たちが一堂に会したら面白いのでは、と思い始めました。」
ーこのイベントをこの時期に、TOKYO RAINBOW PRIDE(東京レインボープライド、TRP)に合わせて開催する理由は何でしょうか?
レロ「TRPは、これまで地方をなかなかメインテーマに取り上げてこなかった、と気づいたことが大きいです。そして、TRPの時期には地方の人もたくさん東京に来ますし、日本のみならず世界各地からたくさんの人が集まります。
この機会に、イベントを開催することで地方の若者や若者支援をしている人ならではの悩みを聞き、今後の各地での活動がより良くなるようなきっかけを作れたらいいなと思います。」
イベント名:地方×LGBT×若者
開催日時:5月4日(金・祝)14:00-16:00