イギリスのスコットランド自治政府は11月8日、性的少数者(LGBTI)問題の授業を地域内の全ての公立学校に義務付ける方針を明らかにした。
LGBTI とは、性的マイノリティの総称として用いられる表現で、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・インターセクシュアル(半陰陽)の頭文字を取った略称。同政府によると、LGBTI問題を公立学校全てで義務付ける国・地域は、世界で初めてで、授業では用語やLGBTIの歴史、同性愛嫌悪(ホモフォビア)への対策などを教えるという。
■どんなことを教えるの?
発表によると、スコットランドのすべての公立学校で、年齢に応じたカリキュラムが組まれる。
扱うテーマは、LGBTIのアイデンティティや、用語、歴史、同性愛や両性愛・性同一障害・トランスジェンダーなどへの嫌悪へ対応する方法、LGBTIのコミュニティーへの偏見など多岐にわたる。
教師へのトレーニングや、いじめに関する調査方法の改善なども行われる。
■スコットランドにおけるLGBTI教育の背景
スコットランドでは2001年、同性愛を教育現場などで積極的に扱うことなどを禁止する地方自治体法28条(通称:セクション28)が廃止された。
その後、スコットランド政府は、若者の学校経験を改善する目的で設立されたワーキンググループを設立。LGBT教育の推進に向けても、調査・研究を進めて来た。
しかし、2016年にこのワーキンググループが発表した調査結果によると、スコットランドではLGBTIの子どものうち、90%が学校で否定的な反応を経験し、27%がいじめにより自殺を試みたとされる。
この結果を受けて、政府は2017年にはLGBTI問題に関する専門のワークグループを設立。LGBTI教育の必修化について、取り組んできた。
政府は今回、このワーキンググループの提言を、全面的に取り入れる決定を下した。提言はすぐにも実施されるという。
スコットランド政府のジョン・スウィーニー副主席大臣は、「私たちの教育システムでは、全ての人がその可能性を十分に発揮できるよう、支援する必要があります。そのため、カリキュラムは若者に応じて多様であることが不可欠です」とコメント。「受け入れた勧告は、LGBTIの若者の学習経験を向上させるだけでなく、違いをたたえ、理解を促進し、受容を促すためにすべての学習者をサポートすることになります」などと述べた。