企業や自治体などにLGBTコンサルティングを行うNPO法人「虹色ダイバーシティ」と国際基督教大学ジェンダー研究センターは12月16日、2018年度の「LGBTと職場環境に関するアンケート調査」の結果を発表した。
日本の職場で働いた経験のある性的マイノリティ当事者と非当事者の2348人(有効回答数2262人)を対象とした調査によると、LGBT施策の多い職場は当事者も働きやすいと感じていることが分かった。
「継続しないと意味がない」
2014年に開始後、4回目となる本調査では、今回新たにLGBTの職場における「心理的安全性」に関する質問を設けた。
アンケートでは、職場でLGBT施策を「実施していない」と答えた回答者の29.6%が、心理的安全性が「低い」と答えたのに対し、LGBT施策が「1つのみ」の職場では、32%が「低い」と回答。LGBT施策を実施していない職場よりも、1つのみ実施している職場の方が心理的安全性が低いと答える回答者が増加した。
なお、LGBT施策が「2つから4つ」の職場で、心理的安全性が「低い」と回答したのは18.4%、「5つから11つ」の職場では8.2%となった。
実施していない職場よりも、1つのみ実施している職場の方が心理的安全性が低いと答える人が多かった現状について、虹色ダイバーシティ代表理事の村木真紀さんは、「(1回のみの実施は)不安定になる当事者の方がいる」とコメントした。
「自分がそうなんだと疑われるんじゃないかとか、会社がなんかやり始めたけど本当にやってるのか疑わしいとか。実は否定的なコメントが当事者から上がってくることがあります。でも施策を積み重ねることでだんだん心理的安全性が高くなっていく。これは私がコンサルタントとしては働いている実感と合致するものと思っています」
企業にLGBT施策のアドバイスをするNPO法人「LGBTとアライのための法律家ネットワーク」代表理事の藤田直介さんは「第一回の研修に踏み出す企業は多い。『まずは管理職がやってみよう』と。しかし継続しないと意味がない」と話した。
「一つも実施されていない」が7割以上
回答者の約72%が、職場でLGBT施策が「1つも実施されていない」と答えている。施策がないことで、当事者はどんな困難に直面しているのか。
アンケートの感想欄には「トランスジェンダーのため、通称名の使用許可を尋ねたところ頑なに拒否された」「アウティングをされたことがある」「独身の人間に対して『あいつはオカマ(オナベ)なんじゃないか』と気軽に、笑い話として消費されていることにも苛立ちを覚えます」などの声が寄せられた。
LGBT施策が実施されている職場は、都市部と大企業に集中している。1つも実施されていない職場は地方や中小企業が多い。日本では現在、企業にLGBT施策を実施を義務付ける法的な強制力はない。
職場でどのようなLGBT施策が望まれるのか。LGB(同性愛者、両性愛者)の67.6%は「福利厚生の同性パートナーの配偶者扱い」、トランスジェンダーの55.8%は「トランスジェンダーの従業員のサポート」と答えた。
調査に関わったワシントン大学大学院の平森大規さんは、LGBT施策の数と当事者の働きやすさの因果関係については、引き続き調査していくという。
「LGBT施策の数が増えたことによって当事者の働きやすさが増す。逆に、当事者の人たちが働きやすいと思える環境だからこそLGBT施策が増えるのか。どちらの因果関係もありえるので注意が必要。今後さらに調査を行っていきたい」
虹色ダイバーシティは、研修内容を短くまとめてYouTubeチャンネル「虹ステーション」で公開している。